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キャンパスナウ

▼2015 新緑号

進化する大学

大学の新しい組織・制度など、進化する大学のしくみについて解説します。
第5回は、障がい学生支援室です。

略歴はこちらから

障がい学生支援室

すべての学生が同じ環境で学ぶ共生社会の実現へ

齊藤 泰治/早稲田大学 学生部長 政治経済学術院教授

障がいは多様性の一つ

 障がいは多様性の一つです。障がいをはじめ国籍、性別などの異なるさまざまな人々が集まることで教育、研究、就労に関わる人材の多様化が進み、“WasedaVision 150”の示す真のグローバル化が実現します。

 早稲田大学では1990年代後半から障がい学生への支援が始まりました。しかし当時は各学部・研究科による個別対応が中心でした。2006年になり全学的な組織として障がい学生支援室が設立され、それにより専門スタッフをそろえ、障がい学生からの相談や依頼、支援サービスの提供などを一元化する体制が整いました。聴覚障がい・視覚障がい・肢体不自由などそれぞれに適した支援のノウハウの蓄積が可能となり、より専門的かつ効率的に支援できるようになったのです。また、2014年6月から発達障がい学生への支援をスタートし、2015年度からは専門スタッフを増員して対応しています。

学内外と連携し、適切な支援を提供

 多様な人々が共生し学べる環境を整えることは大学の責務です。支援室では「すべての学生が同じ環境で学ぶために」というミッションのもと、学内外の関係機関と連携した支援サポートを行っています。修学支援の相談、支援内容の立案・アセスメント、支援者の育成、支援状況のモニタリング、学内箇所への依頼・調整、障がいの理解を促進するための啓発活動、教員ガイドの作成、施設などのハード面の改善に向けた活動など業務は多岐に渡ります。障がい学生に対しては、入学前から定期的に面談し、本人の修学状況や支援に対する希望を確認しながら対応しています。また、グローバル化が進むことで障がいのある外国人留学生も増えると想定され、そうした学生への支援体制も検討する必要があるでしょう。

支援ボランティアを通じて多様性を学び視野を広げる

 現在、支援室を利用している障がい学生は約60名(うち身体障がいは約30名、発達障がいは約30名)、支援ボランティアに登録している学生は約270名。しかしキャンパスの立地や専門性、学年、空き時間などを考慮してボランティアをコーディネイトするためにはまだまだ人数が足りない状態です。支援学生は随時募集していますので、関心のある方はぜひ積極的に支援室までご連絡ください。移動支援、代筆などすぐにできる支援方法もありますし、ノートテイクやパソコン通訳は支援者養成講座を1回受講してからスタートとなります。

 支援ボランティアは大学の教育・研究の発展に資する活動として、有償のボランティアとなっています。有償とすることで障がい学生は必要なサービスを気兼ねなく利用することができ、一方で支援学生はボランティアかつ学びの場として責任感をもって臨むことができるのです。

 また、障がいを身近な問題としてとらえ、理解を深めることを目的に設置されたグローバルエデュケーションセンター科目「障がいの理解と支援」の運営に、当支援室も協力しています。障がいのある当事者がゲストスピーカーとして参加し、生の声を伝えることで、障がいへの理解を深めると同時に、受講した学生自身の視野が広がることを期待しています。

すべての学生が輝ける場を形成するために…

 2016年4月から施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」では、大学が障がい学生に対して合理的配慮を提供することが定められ、私立大学には努力義務が課せられます。こうした社会的背景もあり、本学では、障がい学生支援に関するガイドライン策定を現在進めています。障がいの有無にかかわらず、すべての学生たちが輝ける場をどのように形成していくのかという大きなテーマに向かって、障がい学生支援室ではこれからも努力してまいります。

齊藤 泰治(さいとう・たいじ)/早稲田大学 学生部長 政治経済学術院教授

早稲田大学政治経済学部卒業。同大学院文学研究科博士課程前期修了。1996年より早稲田大学政治経済学部教授。1996~2002年政治経済学部学生担当教務副主任、2010~2014年同主任。2014年11月より現職。

障がい学生支援室のスタッフ

身体障がい学生支援部門
早稲田キャンパス3号館110

左から大久保裕子課長、志磨村早紀さん、和田亜弓さん、香川龍仁さん

発達障がい学生支援部門
早稲田キャンパス25号館(大隈ガーデンハウス)1階

左から岡本俊郎さん、樫木啓二さん、石川悦子さん、温泉美雪さん

障がい学生支援室Webサイト
http://www.waseda.jp/student/shienshitsu/

遠隔によるパソコン通訳支援。式典や授業などを友人と共に自然に受けることができると障がい学生に好評

教員の声
障がいへの理解が学生生活を豊かに

畠山卓朗
人間科学学術院教授(グローバルエデュケーションセンター設置科目「障がいの理解と支援」コーディネーター)

 皆さんは障がいを他人事と考えていないでしょうか。実は私も若い頃、そのように考えていました。しかし、現在の私はメガネをかけないと細かい文字が読めません。加齢によるものです。これも実は障がいの一つと言えます。近眼でメガネやコンタクトレンズを使用している若い人も同様です。

 私たちは街で障がいがある人を見かけると、「常に困っている人」「かわいそうな人」と捉えてしまいがちです。でもそれは正しくありません。確かに不便なことはありますが、適切な支援を受ければ、皆さんと同じように学生生活を楽しみ、将来に向かって夢をひろげることができます。

 障がいを正しく理解し共感することで、新たな価値観が生まれ、皆さん自身の学生生活に変化を与え豊かなものになることを確信しています。

支援学生の声
自分にできることで人の役に立てる

大澤芙美さん(法学部4年)

 友人が支援ボランティアを始めたことがきっかけで、専門的なスキルがなくてもできることを知り1年の秋から支援ボランティアを始めました。授業の空き時間を利用し、主に聴覚障がいのある学生に対してノートテイクやPC通訳によるサポートをしています。自分の専門以外の授業を受けることもあり新しい知識や気づきが得られるなど、ボランティアというよりは大学の学びに近い感覚です。周りの障がい学生や支援学生の頑張る姿が私にとって良い刺激になっています。

 障がいはハンディではなく多様性の一つであること、自分にできる範囲で人の役に立てることを理解できました。将来は人に寄り添い、社会のためになる仕事をしたいです。