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▼早春号

教室の窓から

「教育の早稲田」と呼ぶにふさわしい質の高い教育を実践している取り組みをご紹介します。

早稲田大学では、ファカルティ・ディベロップメント(以下FD)を推進するため、2008年にFD推進センターを設立し、教育の質を高めています。今回は2004年に設立された国際教養学部のFDの取り組みとピニングトン先生ご自身の授業のこだわりについて伺いました。

※ ファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development)……教員が授業内容・方法を改善し向上するための組織的な取り組みの総称

エイドリアン・J・ピニングトン 国際学術院 教授 略歴はこちらから

教員・学生の多様性が世界基準の授業をつくる

エイドリアン・J・ピニングトン/国際学術院 教授

学生の期待値の高さが教員にプレッシャーを与える

 国際教養学部(School of International Liberal Studies以下SILS)は2004年の設立以来、FDに力を入れてきました。SILSでは、授業のほとんどが英語で行われ、教員の構成も3分の1が外国籍、3分の1が女性と多様性に富んでいます。多くの教員が、FDが進んでいる欧米で授業をした経験があることから、積極的にFDに取り組んでいます。

 SILSの学生は、3分の1が留学生で、日本人学生も留学経験があり、海外の大学の授業を経験しています。そのため、授業に対し高い期待を寄せていますし、1年プログラムの留学生は派遣元の大学に早稲田の評価を報告するため、授業の質が直接、翌年の留学生獲得にも影響してきます。また、SILSは必修科目が少なく、選択科目が多くなっているため、授業の人気度合いが受講者数に反映されます。そうした学生の評価が、教員に良い意味でのプレッシャーを与え、学部全体の授業が改善されています。

 また、SILSでは独自の授業評価制度を実施しています。学期の終わりにアンケートを行い、その結果は担当教員と教務主任、学部長で共有しています。90%の授業で実施されていますが、平均評価は高く、全体的に満足度は高いと言えるでしょう。しかし仮に、ある授業の平均点が低かったとしても、一概にその授業が良くないという結論にはなりません。学生の知的好奇心を満足させる授業がある一方で、授業について行くには学生にかなりの努力が求められる科目もあります。後者の授業では学生の評価が高くなるとは限らないため、平均点の高い授業だけが良いとは言えないのです。

教員同士が切磋琢磨する環境

授業では、各国の学生から活発な意見が飛び交います

 教員の質を維持するため、学部設立当初から、若手を対象にテニュアトラック制度を導入し、3年間の試用期間を設けています。評価は、論文数などの研究成果だけでなく、教育に熱心でFDに貢献しているかどうかも考慮しています。また、教員間の取り組みとして、査読の制度を他学部に先駆けて始めました。査読とは研究者同士が互いに論文を評価、検証することです。紀要に掲載するかどうかも二人が査読した上で決めています。このことが研究活動に自信を与え、海外の雑誌に積極的に投稿したり、国際学会に参加したりすることにつながっており、結果としてFDにも貢献していると考えています。その他、「ファカルティ・セミナー」を毎週実施し、教員による研究発表を行っています。同僚だからこそ、発表の善し悪しについてお互いに意見を言いやすく、切磋琢磨する雰囲気が醸成され、講義の改善につながっています。

 昨年秋から新たな取り組みとして、「ソウルナショナルユニバーシティ・パイロットプログラム」が始まりました。ソウル、北京、香港、早稲田をつないだビデオカンファレンスによる授業です。単位は取得できませんが、他大学の優秀な教員の授業を受けることができるため、学生からも好評です。ゆくゆくは早稲田からも授業を発信したいと考えています。

知らないことは恥ずかしいという感覚を大切に

 私の授業では、あえて難しい言葉を使って、学生が知らないと言うと、「なぜ知らないの?」と挑発しています。知らないことは恥ずかしいという感覚が大切だと思うからです。ただこれは少人数のゼミなど、信頼関係が構築されていないと効果がありません。大人数の講義では、私の冗談に対して笑いが起こるかなど、学生の反応を見ながら授業を進めています。

 学生たちに伝えたいことは、日本人の学生に対しては二つ。一つは、自国の文化や文学を知って誇りを持ってほしいということ。もう一つは、外国を知ることで、日本の変えるべきところを真剣に学んでほしいということです。また、外国人の学生に対しては、日本の良いところを学んで、自国を良くすることを考えてほしいということです。SILSはそれらを学ぶことができる場だと自負しています。今後も学生を大切にしながら、さらに盛り上げていきたいと考えています。

エイドリアン・J・ピニングトン/国際学術院 教授

ロンドン出身。サセックス大学大学院英文学博士号取得。本学国際教養学部立ち上げに関わり、2004年より現職。国際俳句交流協会顧問。専門は、英米文学、日本文学、比較文学。2002年にToshiba International Prizeを受賞。著書「R. H. ブライス、1886-1964」を含め、英文学・日本文学に関する随筆や論文を数多く執筆。