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▼早春号

教室の窓から

「教育の早稲田」と呼ぶにふさわしい質の高い教育を実践している取り組みをご紹介します。

早稲田大学では、ファカルティ・ディベロップメント(以下FD)を推進するため、2008年にFD推進センターを設立し、教育の質の向上に努めています。今回は、1月14日付でFD推進センター長に就任された先進理工学部の本間先生に、授業での工夫とFD推進センター長就任の抱負をお伺いしました。

※ファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development)……教員が授業内容・方法を改善し向上するための組織的な取り組みの総称

本間 敬之(ほんま・たかゆき)早稲田大学理工学術院教授 略歴はこちらから

英語で研究発表、ディスカッションを行い
グローバルに活躍するためのコミュニケーション力を身につける

本間 敬之/早稲田大学理工学術院教授

学生たちに必要な国際標準のコミュニケーションスキル

 私の研究室では、電気化学ナノテクノロジーを駆使して、新しい機能を持つ材料を世に送り出すための研究をしています。具体的には、固体と液体が接する面(界面)での原子や分子の反応を調べて制御することにより、LSI(半導体)や超高密度磁気記録、電池などさまざまなデバイス・システムの構築につなげています。

 製品をつくって販売する企業とは違い、大学が世に送り出すものは「考え方」(研究成果とそれに至るアプローチ)や、それを身に付けた「人財」です。そして「考え方」を世に送り出すには、論文発表はもとより、学会発表などの場での「コミュニケーション」の能力が欠かせません。理工系では最近特に国際化が進んでいますので、学生たちは国際学会などさまざまな場面で、英語を駆使した実践的なコミュニケーションスキルが必要不可欠になっているのです。

国際的なコミュニケーションの環境を日常の授業で

ゼミ風景。英語で発表し、質疑応答も英語で行う

 国際的な学会発表の場で重要なスキルは、三つあると考えています。発表するスキル、質問に的確に答えるスキル、そして切れ味のよい質問をするスキルです。特に質疑応答のスキルは、多くの場数を踏んで慣れることが重要です。研究そのものや、発表自体は個人の努力が大きなウェイトを占めますが、多くの参加者の中での質疑応答やコミュニケーションのスキルは、自分一人だけでは身に付きません。

 そこで私の研究室の毎週のゼミでは、発表と質疑応答を英語で実施してもらっています。ただし学部生は、まず研究内容そのものをよく理解することを優先させる意味で、日本語も認めています。一人につき10分で研究内容を発表し、質疑応答が30分。発表は原稿なしで行います。発表者は毎回4名程度ですが、聴く側の学生は全員、必ず自発的に質問するのがルールです。また、司会進行役も大学院生に務めてもらい、活発な質疑討論の雰囲気をつくったり、立ち往生している発表者に助け船を出すなど、ディスカッションをリードするスキルを身に付けられるようにしています。ゼミには米国人の博士研究員も参加し、発音や文法などをその都度指摘してもらっていますが、学生には、活発なやりとりが交わされる中にいかにタイミングよく切り込んで適切な質問や意見を述べられるようになるかを、常に意識するよう指導しています。

成功の秘訣は、学生たちが主体的に運営すること

 国際的な環境でのコミュニケーションスキルの重要性は、特に米国の大学にいたころからずっと痛感しており、教授として独立したゼミを持つようになった2005年度からこのような形を取り入れました。当初は本当にうまくいくかどうか半信半疑でしたが、実際にどのように進めるかを博士課程の学生たちに相談したところ、いろんなアイデアを出してくれました。司会進行や質疑応答のやり方、さらに消化しきれなかった内容のフォローアップの仕方などは、彼らのアイデアです。学生たちが主体的に動いてくれたので、うまく進めることができました。彼らを含めてこれまでに5名の博士を出していますが(1名は今春修了)、大学(UCバークレー、スタンフォード、MIT)や企業(日立製作所および東芝の研究所)に進み、グローバルに活躍してくれています。

走査プローブ顕微鏡。先端を尖らせた探針で物質の表面をなぞるように動かして表面状態を原子レベルまで拡大観察する

 現在さまざまなところで働いている卒業生たちの声を聞くと、このゼミでの経験が本当に役立ったと言います。学生時代に国際的に活躍するためのスキルを身に付けることは、将来にわたり、どのような分野でも役立つと思っています。

 私は2011年1月14日付で、FD推進センター長に就任いたしました。これまでの本学の教育の質向上への取り組みを踏まえつつ、今後はグローバルスタンダードという観点から教育システムのあり方を検討したり、また本学の教育が誇るべき点を積極的に学内外に発信したいと考えています。私も学生たちに負けないよう新しい役割に全力を尽くしますので、よろしくお願いいたします

本間 敬之(ほんま・たかゆき)/早稲田大学理工学術院教授

早稲田大学理工学部応用化学科卒業、同大学院博士後期課程修了(工学博士)。専門は応用物理化学。1991年より助手、専任講師、助教授を経て2005年に、早稲田大学先進理工学部応用化学科教授。1997~1998年、スタンフォード大学客員准教授。1998年より米国国立科学財団シリコンウェハ工学研究センター(NSF-I/UCRC-SiWEDS)兼任研究員。2010年米国電気化学会研究業績賞。2010年より教務部副部長。2011年1月、FD推進センター長に就任。