早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

読売新聞オンライン

ホーム > キャンパスナウ > 新年号 教室の窓から

キャンパスナウ

▼新年号

教室の窓から

「教育の早稲田」と呼ぶにふさわしい質の高い教育を実践している取り組みをご紹介します。

早稲田大学では、ファカルティ・ディベロップメント(以下FD)を推進するため、2008年にFD推進センターを設立し、教育の質の向上に努めています。今回は、法学部の副専攻でシェイクスピアを題材に英語でのディスカッションを授業に取り入れている本山先生に、授業での工夫についてお伺いしました。

※ファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development)……教員が授業内容・方法を改善し向上するための組織的な取り組みの総称

本山 哲人/早稲田大学法学学術院准教授 略歴はこちらから

語学教育と文学的教養のバランスを考えた授業づくり

本山 哲人/早稲田大学法学学術院准教授

基礎・教養として必要な語学と文学

 私の授業では語学教育と文学的教養を身に付けることを目的に、古典文学、特にシェイクスピアの作品を取り上げています。原文でシェイクスピアの作品を読み、作品に描かれているさまざまなテーマについて学生は英語でディスカッションを行うのです。私の授業の受講生は、文学や演劇に興味がある学生、英語のディスカッションを目的とした学生と大きく二つのタイプに分けられます。作品が書かれたのは400年も前ですが、現在の学生たちを取り巻く身近な問題や、法律的な議論にもつながるものがあります。アメリカの最高裁判所には多くのシェイクスピア愛好家がおり、シェイクスピアを読むサークルまで組織されているほどです。

質の高い授業を行う上で大切なこと

外でも使われている授業のテキスト。本文の横に解説がついています。

 授業を進める上で大切にしていることは大きく二つあります。一つは、10名足らずの少人数で行う授業の良さを生かすこと。大教室で行う授業で、学生が自分の考えを伝えてフィードバックを得ることは容易ではありません。しかし、少人数であればコミュニケーションを密に取ることができます。授業では、作品中のある場面に対して一人の学生が要旨をまとめ、その内容をもとに他の学生一人ひとりに質問し、お互いに意見を交わすように促していきます。そのためにいわゆる「ソクラテス・メソッド」という方式も取り入れています。法科大学院でもこの方式を取り入れている授業があるので、その練習を兼ねることも狙いの一つです。学生が主体となって英語でディスカッションを行い作品を理解できるように一人ひとりに問いかけて、それに対するほかの学生の考えを聞きながら、議論が詰まらないようにディスカッションの方向付けをしています。

 もう一つ私が授業で意識していることは、作品中に出てくるテーマを、現在の学生が置かれている身近な問題に結び付けていくということです。例えば前学期に読んだ『じゃじゃ馬ならし』という喜劇作品では、恋愛や結婚などジェンダーに関するテーマを取り上げると、現在の学生にも馴染みがあるため、ディスカッションも活発になります。

バランスの取れた授業を目指す

 質の高い教育を行うために、私が最も大事にしていることはバランスです。語学と文学のどちらかに偏ることなく、バランス良く両方を学べる授業づくり。それが現在、私が取り組んでいる課題です。

シェイクスピア関連の本が並ぶ棚には学生からのプレゼントも飾られています。

 そこで、先に述べた授業を進める上での工夫だけではなく、文学に親しんでもらえるような工夫もしています。その一つとして、学期ごとに学生を劇場に連れて行き、舞台で演じられているシェイクスピアの作品に触れる機会を作っています。授業を通して思い描く作品のイメージと舞台との違いを知ることで、戯曲作品に興味を持ってもらいたいからです。実際、舞台を見たことで文学や演劇に興味を持ったという学生もいます。

 社会に出るとシェイクスピアなどの文学作品を読むきっかけはなかなかないと思います。ただ、学生のうちにきっかけを作っておけば、社会に出て何か問題に直面した時に「シェイクスピアに何か答えがあるかもしれない」と思い出して読み返してもらえるかもしれません。そのための教養を身に付けることができる授業を心掛けています。

本山 哲人(もとやま・てつひと)/早稲田大学法学学術院准教授

国際基督教大学比較文化研究科修士課程修了、University of Birmingham Shakespeare Studies修士課程修了、国際基督教大学比較文化研究科博士課程修了。主な専門分野はエリザベス朝演劇。2004年より早稲田大学法学部専任講師、2007年より早稲田大学法学部准教授。