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キャンパスナウ

▼盛夏号

教室の窓から

「教育の早稲田」と呼ぶにふさわしい質の高い教育を実践している取り組みをご紹介します。

早稲田大学では、ファカルティ・ディベロップメント(以下FD)を推進するため、2008年にFD推進センターを設立し、教育の質を高めています。今回は、教育・総合科学学術院で教育方法学・教育工学について研究されている三尾先生に、授業に取り組む姿勢や授業での工夫についてお伺いしました。

※ファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development)……教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組みの総称

三尾 忠男/早稲田大学教育・総合科学学術院教授 略歴はこちらから

教員と学生のコミュニケーションが学びの効果を高める

三尾 忠男/早稲田大学教育・総合科学学術院教授

卒業後10年、20年先にも役立つ大学教育を追求し続ける

 社会や生活環境の変化のスピードが速くなり、学生からは、卒業したらすぐに役立つ知識や体験を得たいという声があります。しかし私は、大学がすぐ役立つ実践的な知識だけを教えることには反対です。それだけでは、10年、20年後にも社会で役に立てるでしょうか。文部科学省が打ち出している「学士力」については賛否の分かれるところですが、私立大学情報教育協会のワーキンググループで議論した際には、学部教育で今、何を学生に学ばせるのかを教員一人ひとりが考える機会として捉えていく流れでした。

 早稲田大学で10年間学生を見てきましたが、学生の質が変化していることを強く感じます。大学の教員は、自分が学生時代に受けた講義を模倣することから始めると言われていますが、学生の変化に合わせて、より効果のある授業作りを目指すことが必要だと考えています。

真摯な態度で学生に向き合う

“大福帳”はいわば学生との交換日記 出張中(車内)にも大福帳に答える

 では、学生の変化をどう察知するか。私は、学生となるべく多くのチャンネルを持つことだと考えています。私の授業では毎回、出席票の代わりに授業の理解度と印象を計るマークシート方式のアンケートを取ります。クラス全体の傾向がすぐに分かるため、次の授業に反映できることが魅力です。学期末の授業評価アンケート結果についても必ずその授業でフィードバックし、教員が学生の意見を受け止めている姿を見せるようにしています。

 また、皇學館大学の織田揮準先生が考案した大福帳と呼ばれるシートを用いて、授業の感想を書き込んでもらっています。ちょっとした交換日記のようなもので、私にとっては学生一人ひとりの考えとその変化を知ることができ、学生にとっては受講の履歴になります。こうしたツールを用いて、学生とコミュニケーションをとり、学びの関係と空間を築くことが、授業の理解度にも影響を与えると信じています。

教員自身の壁の乗り越え方

大教室での授業風景

 教員は授業の経験を重ねていく過程で、学生との間に距離を感じ、壁にぶつかる時があります。壁を乗り越えていくために私が取り組んでいるのは、良い授業を探し、真似してみることです。NHKで放送されているハーバード大学教授の授業を見たり、学内の他の先生の講義を見学したりして、刺激を受けています。また、同じ科目を担当している先生とは、ピアレビューといってお互いの授業を見学して批評し合っています。

 目指すは、学生がよりよく学べる授業です。さらに、教員も学生もその双方が満足できなければ良い授業とは言えません。理解度と満足度は関連しているため、学生がよく学べば、すなわち満足度が高いということだと考えています。

 目標は、大教室で対話型の授業を実現すること。それからやはり……笑いがとれたら最高ですね!

三尾 忠男(みお・ただお)/早稲田大学教育・総合科学学術院教授

京都教育大学特修理学科卒業、鳴門教育大学教育方法講座修士課程修了。専門分野は教育工学。1989年より文部省大学共同利用機関放送教育開発センター助手、1997年メディア教育開発センター助手、1998年同センター助教授。2001年早稲田大学教育学部助教授、2005年より早稲田大学教育・総合科学学術院教授。