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▼2013 盛夏号

キャリアの羅針盤 学生と進路選択

大野 翔太郎(おおの・しょうたろう)独立行政法人国際協力機構 人事部人事企画課調査役 略歴はこちらから

自分の足で情報を稼ぎ、
納得できる進路選びを

大野 翔太郎/独立行政法人国際協力機構 人事部人事企画課調査役

採用担当者に就職活動の最新事情や、普段どのような意識で採用活動に携わっているかをお聞きする「キャリアの羅針盤」。今回は国際協力機構(JICA)の大野さんに、JICAが求める人材、学生時代の過ごし方へのアドバイスをお聞きしました。

国際協力の仕事の選択肢の一つとして

 国際協力の仕事の選択肢はさまざまです。昨今では、CSRやBOPビジネス※など、民間企業からも関わることができます。海外の現場を軸足にしたいのであれば、NGOや開発コンサルタントが良いと思いますし、外交の側面で活躍したいなら大使館勤務や外務省という職場があります。また法律などの専門家として国際協力に関わっていくという方法もあります。最近では、開発途上国と日本の研究者が共に研究を行い、環境・感染症問題など、一国だけでは解決が難しい課題に取り組んでいく地球規模課題対応国際科学技術協力というプログラム(SATREPS)があり、研究者として国際協力に携わる道もあります。

 そうした多くの選択肢の中で、JICAは世界150以上の国と地域で事業を展開する世界最大規模の開発援助機関です。JICAの職員は、全ての人々にとって豊かで平和な未来を築くため、現場での実務のみならず、アカデミックな視点の双方を持ち合わせて開発途上国の課題に向き合い、最適なソリューションを提供することで、開発途上国の国創りを支えていく仕事をしています。

開発途上国の課題解決への熱い思い

  JICAの職場を一言で言うと、動物園です。というのは、開発途上国が抱える貧困、飢餓、感染症の蔓延、紛争、環境破壊など、さまざまな課題に対して高い専門性を持ったバラエティ豊かな人材が、それぞれ個性を発揮しているからです。共通項は、開発途上国が抱える課題を解決するということ。そのために全員が自己研鑽を重ね、学術的な議論もできるよう知識をブラッシュアップしています。若手でもJICAの看板を背負って一国の代表と話をしなければならないので、常に勉強しなければならないというプレッシャーがありますが、職員には能力を開発するさまざまな機会が用意されています。語学研修はもちろん、業務に必要な知識を学ぶ研修が数多く用意され、海外の大学院への進学支援や、国際機関(世界銀行、アジア開発銀行など)への出向制度などもあります。ちなみに、国際機関に学部卒で就職することは難しいですが、JICAの新卒採用は半数が学部卒で、入職後に修士の学位を取得するチャンスがあることも魅力の一つだと思います。

職員に求められる現場力・構想力・発信力

  国際協力のプロフェッショナルとして、現場力・構想力・発信力がJICAの職員には求められます。現場のニーズを多くの関係者と信頼関係を築きながら的確に把握する。前例に囚われず、開発効果が最大化されるような解決策を構想する。そして、JICAの現場の知見を発信し、国際社会における日本のプレゼンスを高めていくことが必要です。採用面接では、これらの素地があり、JICAで活躍できそうかを見ています。また、JICAに限らず国際協力という仕事では、一筋縄では解決できない問題に対して、最後まであきらめず世界を変えていきたいという気概が必要不可欠です。

失敗してもいい。何かに打ち込んだ経験を

 採用担当として学生さんとお会いして感じるのは、一つのことに打ち込んだ経験のある人が少なくなっているということです。例えば、1年間の留学、NGOでの活動という経験はあっても、それが将来の目的のためにどう位置づけられていたのかが伝わってきません。自由な時間のある4年間を無駄にしないためにも、なるべく早い段階から進路を考え、将来につながるアクションを起こしていくことが必要ではないでしょうか。失敗して後悔したとしても、それも大切な経験の一つ。行動してみないと分からないことはたくさんあると思います。

 私の場合は、マス・メディアなどでは表象されない民族問題をどのように世の人に知ってもらうか、そうした人たちのために何ができるかという問題意識を持ち、国際協力機関を調べているうちに、後にJICAと統合する国際協力銀行(JBIC)の存在を知りました。業務だけでなく、実際に働く人を知りたいと思い、OB訪問はもちろん、シンポジウムに参加した後に職員に話しかけたりして情報を集めました。知識として知ることと、体験して知ることはまったく別のものです。ネットなどの二次情報で満足せず、自分の足で情報を取りに行き、納得のいく就職活動をしてほしいと思います。

 ※ BOPビジネス:途上国の低所得層(BOP:base of theeconomic pyramid)を対象とした持続可能なビジネス。

大野 翔太郎(おおの・しょうたろう)/独立行政法人国際協力機構 人事部人事企画課調査役

京都大学総合人間学部卒業。2006年国際協力銀行(JBIC)に入行。資金協力の分野でスリランカ、バングラデシュ、中国の担当を経て、2008年JBICの海外経済協力業務がJICAに移管されるのにともないJICAへ。2009年よりイラクに駐在。2012年より現職。

独立行政法人国際協力機構
1950年代の技術協力開始に始まり、組織変遷を経て2003年に独立行政法人国際協力機構として設立。2008年より日本のODAを一元的に担う世界有数の包括的な開発援助機関となり、世界150以上の国と地域で、技術協力、有償資金協力、無償資金協力、国際緊急援助、市民参加協力など、さまざまな支援メニューを展開。

キャリアセンターより
自ら決めたことに、力の限り打ち込む

 本学には、国際協力の仕事にあこがれる学生がたくさんいます。大野氏のいう現場力・構想力・発信力、そして最後まであきらめず世界を変えていきたいという気概は、学生自身が自ら決めた何かに、主体的に力の限り打ち込むことによって、身につけることができるものです。短期的には就職に結びつかない活動に見えることでも、ぜひ果敢に挑戦していってほしいと思います。