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キャリアの羅針盤 学生と進路選択

湯浅 尚樹 略歴はこちらから

意欲、適性、人間関係。就職活動ではすべてが試される

湯浅 尚樹/
武田薬品工業株式会社 総務人事センター
採用グループ 課長代理

 学生が卒業後の進路を選ぶために必要なことは何か、を考えるためのコーナーです。今回は武田薬品工業の湯浅さんに、就職活動の最新事情や、普段どのような意識で採用活動に携わっているかをお聞きしました。

企業との接点が早まり、採用決定が4月に集中

 私は採用活動を担当していますが、近年は就職活動が大きく様変わりしたことを実感しています。まず就職活動の長期化が顕著です。最近は2年生から企業のインターンシップに参加する学生も珍しくありません。学生が企業と接点を持つ時期が以前と比べて早くなってきているのです。当社でも数日間のインターンシップや製薬企業の経営が一日で体験できるビジネスゲームコンテストを実施しています。また学生にとっては、自分がその企業や経験した職種に向いているかが分かる良い機会です。それに、例えその会社を受けなくても、本番の就職活動の前に選考や仕事の厳しさも感じることができ、自分の課題もわかりますから、できるだけ参加してみた方がよいと思います。

 最近の就職活動におけるもう一つの大きな変化は、採用者を決定する時期が集中するようになったこと。大手企業の多くは4月1日から5月の連休前に採用者を決めています。各企業の求める学生が重なっているため、早い時点で確保したいという心理が働いているからでしょう。当社では採用の際に「基礎能力の高さ」「リーダーシップ」「現状を変える力」などを重視していますが、これらを持ち合わせた学生は、やはり他の企業からも人気が集まります。

意識すべきは「適材適所」

 仕事を選ぶ際には「適材適所」の考えを持つと良いでしょう。つまり世間一般の評判だけで判断するのではなく、その仕事が本当に自分に合っているのかを考えることが必要です。特に職種については重視すべきだと思います。現状、学生は「この業界」という形で就職活動をすることが多いですが、「海外で働く」「接客がしたい」といった具合に職種で企業を選ぶことも一つの手段です。

 また面接をしていて感じることですが、最近は授業が終わるとすぐに帰宅する学生が増えています。私自身は、大学時代に出会った友人たちが自分のキャリアや将来の夢を語る姿に大きく感化されました。ですからゼミやサークル活動など、視野を広げるせっかくの機会を活用しないのはもったいないと感じます。良い友人に囲まれているかは面接でも自然と伝わってくるもの。大学では積極的に人間関係を築くことをおすすめします。

人生の大きな岐路に、先輩としてのアドバイスを

 最近のご父母は子供の就職に口を出されないように思います。面接で学生に尋ねてみると「好きにして良いと言われている」と答えるケースが多いですから。おそらく「自分たちの時代と勝手が違うから」と考え、口を挟むことを遠慮されているのでしょう。しかし子供にとって就職は人生の大きな岐路。私は、働く人の身近なモデルとして、ぜひご自身の仕事を子供に語ってほしいと考えています。どんな仕事が良いのか、どんな会社を選ぶべきかについて親子でしっかりと話し合う。「好きにしなさい」はその後で言うべき言葉ではないでしょうか。

 「アドバイスをしようにも、良い企業かを判断する基準がわからない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私は、人材に対する企業の姿勢を判断する指標として有効なのは「研修制度の充実度」だと考えます。当社も人材育成には非常に力を入れており、今年4月に新卒入社した社員たちは秋まで大阪の施設で研修を受けています。企業を見極めるには年収や勤務条件など、さまざまな条件がありますが、判断に迷われた際に参考にしていただければ幸いです。

キャリアセンターより
行動しながら考えることが重要

就職活動の早期化で、多くの学生は志望業界や業種の選択に悩みます。一人で考え続けてもなかなか答えは出てきません。自分の強みや弱みを分析することはできても、実際の仕事がイメージできないからです。自己分析は重要ですが、インターンシップの機会を利用したり、積極的にOB・OGに面会するなど、できるだけ多くの社会人に接した学生は自然に志望が固まってくるようです。パソコンの前でネット情報を閲覧するだけでなく、行動しながら考えることが重要です。

湯浅 尚樹(ゆあさ・なおき)/
武田薬品工業株式会社 総務人事センター
採用グループ 課長代理

1995年早稲田大学政治経済学部卒業。新卒で国際通信会社へ入社、営業部門を経て人事部門へ異動。2000年以降、小売業界、電機業界の採用・教育部門を経て現職。

武田薬品工業株式会社
創業は1781年。日本の製薬企業でナンバーワンの売上を誇る。グローバルでは売上高17位。「高い倫理観」と「強い使命感」に基づき、新薬を研究開発するとともに製造、販売までを手がける。