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 早稲田大学では11月末より、本学教員を中心とする執筆陣による『早稲田大学ブックレット〈「震災後」に考える〉』を(株)早稲田大学出版部の尽力を得て刊行致します。

4月の出版物

中川武+中川研究室 編著
文化遺産の保全と復興の哲学 自然との創造的関係の再生

早稲田大学ブックレット 《震災後》に考える No.11
早稲田大学出版部: 文化遺産の保全と復興の哲学 自然との創造的関係の再生

 長い歴史のなか、津波をはじめとする自然災害に幾度となくさらされてきた東北の人々。そんな厳しい自然環境のなか、東北の先人たちは自然と調和しながら生きてきました。そんな彼らが遺した有形・無形の文化遺産を通じ、安全なまちづくりのヒントを探ろうというのが本書のテーマです。
 編著者である中川武・理工学術院教授は、カンボジア・アンコール遺跡救済チーム(JSA)の団長を務めるなど、「文化遺産と復興」に長年取り組んできました。東日本大震災の復興にあたっても、文化遺産保全の意義を訴えてワークショップを被災地で開催するなど、精力的な活動を行っています。
 山岳部の集落に伝わる舞、神輿を載せた湖上の舟など、美しい写真が豊富に掲載された本書。歴史や民俗学、伝統芸能に関心がある方はもちろん、そうでない方にも是非お読みいただきたい1冊です。主な内容は次の通り。

第1章 研究の背景と視点
第2章 東北の有形文化財
第3章 東北の無形民俗文化財
第4章 被災古民家の調査と復興の考え方
第5章 祭礼・民俗芸能の再生とまちづくり

本田恵子 編著 (共同執筆・上原美穂)
被災地の子どもの心に寄り添う 臨床心理学からのアドバイス

早稲田大学ブックレット 《震災後》に考える No.12
早稲田大学出版部: 被災地の子どもの心に寄り添う 臨床心理学からのアドバイス

 死の恐怖と肉親や友を失った悲しみ、激しい環境変化と日常の喪失。この上なく深い傷を負わされた子どもたちの心に、おとなはどう向き合えばよいのか。どのように支えてあげればよいのか。経験豊かな臨床心理士が、長くつづくさまざまな問いに心を込めて答えるカウンセリングブックです。
 被災地で著者たちが出会った具体的な事例を紹介しながら、年齢も状況も異なる一人一人の子どもたちの心にそっと寄り添い、ときには力強く、その立ちなおりを見つめ、支援するための、専門知に裏付けられた実践知識を提供します。
 被災地をはじめ、子どもたちのためにさまざまに活動する人々の思いへの共感がすべてのページにあふれます。

主な目次
第Ⅰ部 子どもの心を理解し支援するための実践知識——おとなと教師とボランティアのために
第1章 災害とこどものSOS
第2章 危機を越える力を育てる
第3章 よくある質問と回答——11のQ&A
第Ⅱ部 被災地の事例に学ぶ——幼児、小学生、中学・高校生 それぞれの心に寄り添う
第4章 幼児の心に寄り添う
第5章 小学生の心に寄り添う
第6章 中学生・高校生の心に寄り添う

高木秀雄 著
三陸にジオパークを 未来のいのちを守るために

早稲田大学ブックレット 《震災後》に考える No.13
早稲田大学出版部: 三陸にジオパークを 未来のいのちを守るために

 行動派地質構造学者が「大震災の記憶を刻む大地の公園を創ろう」との思いをわかりやすく伝える1冊。地球との共生を学び自然災害に備える知恵を、日本列島に生きる次世代につなぐために、地質学・地形学からの提言が満載されています。
日本は世界的な地震国・火山国であるにもかかわらず、中学校や高等学校での地学教育の環境が十分でなく、国民の地学に関する知識・教養は決して高くありません。三陸の南北に長く伸びる風光の地に、地震と津波の被害のモニュメントなど、様々なジオサイトをつくり、全国から人々が訪れ、学びつつ観光する新しいツーリズムが普及・定着すれば、東北の経済復興と国民の防災教育の両面に寄与することができます。主な内容は以下の通りです。

第1章 日本列島のジオの特徴——①日本のジオの多様性 ②プレートテクトニクス ③付加体—海から生まれた日本列島 ④火成活動
第2章 地震と震災——①地震の原因 ②地震の分布と発生場 ③地震の規模 ④震災
第3章 ジオパーク——①ジオパークとは ②世界と日本のジオパーク ③ジオパークに認定される仕組み
第4章 三陸地域のジオパーク構想——①三陸地域のジオの特徴 ②いわて三陸ジオパーク構想 ③三陸地域の大津波災害 ④震災の教訓を活かす
第5章 震災復興のために——①復興に向けた津波被災遺構保存の動き ②環境省の復興国立公園構想 ③ジオパークを活用したツアーのアイデア

河野勝・小西秀樹・荒木一法・清水和巳・友利厚夫 著
《当事者》としていかに危機に向き合うか 震災復興の政治経済学を求めて②

早稲田大学ブックレット 《震災後》に考える No.15
縦組み 88ページ
早稲田大学出版部: 《当事者》としていかに危機に向き合うか 震災復興の政治経済学を求めて②

 みずからの問題として大震災を考え行動するために、研究者など専門家は、政策提言に際してどのような責任を負っているのか。この問いに応えようと、5人の研究者が社会科学とりわけ政治経済学の知見を傾けて自らに問う力作。被災地の復旧・復興に、原発事故への対処・管理に際して、次世代・未来世代に影響が及ぶ重要な意思決定をいかに行うか、それはいかなる基準を満たさなくてはならないのか。誠実な思考が繰り広げられる。

目  次
第1章 賠償・防災・減災
   ●契約理論で原発管理のあり方を考える (友利厚夫・荒木一法・小西秀樹)
第2章 疎開させるか/疎開させないか
   ●選択当事者としての視点 (清水和巳)
第3章 政策提言の方法論
   ●有識者の責任と 「外部化」 される政治について(河野勝)

著者のプロフィール
5氏はいずれも、政治学と経済学の融合を進めて新しい政治経済学を確立して「期待実現社会」が備えるべき条件を探る研究プログラム(文部科学省グローバルCOE研究拠点)に集う早稲田大学政治経済学術院等の研究者である。既刊、鈴村興太郎・須賀晃一・河野勝・金慧著『復興政策をめぐる<正>と<善>』につづき、本書を世に問うた。引き続き第3弾も準備が進んでいる。乞うご期待。

中村民雄 編著
早く的確な救援のために 初動体制ガイドラインの提案

早稲田大学ブックレット 《震災後》に考える No.17
縦組み 88ページ
早稲田大学出版部: 早く的確な救援のために 初動体制ガイドラインの提案

 東日本大震災の直後においては、大津波による自治体の消失や、道路・港湾などのインフラ破壊によって、被災者支援は困難を極めました。そんな過酷な状況のなか、いち早く現地に乗り込み、迅速かつ的確な救援を行ったのが個人や団体によるボランティアたちでした。本書は、災害復旧時におけるボランティア活用を内容とする「初動体制ガイドライン」を提案するものです。
編著者である中村民雄・法学学術院教授は、避難所での炊き出し、現地NPO団体や社会福祉協議会への取材、ワークショップの開催など、これまで震災復興活動を精力的に行ってきました。本書もそうした活動の一環として、中村教授の意志に賛同する学生たちとともに作りあげられたものです。
現地のNPO団体や社会福祉協議会などへの取材をもとに書かれた本書は、具体的できめ細やかな内容となっています。近い将来の災害がうわさされるなか、特に、自治体、社会福祉協議会の職員の方にお読みいただきたい1冊です。主な内容は次の通り。

序章 課題——ボランティアと自治体の効果的な初動連携
第1章 事例研究その1——石巻と神戸
第2章 事例研究その2——遠野
第3章 事例研究その3——社会福祉協議会
終章 解決に向けて——初動体制ガイドライン