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国際戦略研究所、外務省委託プロジェクトで政策提言
研究成果「東日本大震災後の日本外交の方向性」を発表
早稲田大学国際戦略研究所(所長:片岡貞治教授)は、平成23年度に外務省総合政策企画室より委託された調査プロジェクト「東日本大震災後の日本外交の方向性」の研究成果をまとめましたので、お知らせいたします。
本調査では東日本大震災が政治・経済・外交分野において日本にいかなる影響を与えたのか、また、国際社会に与える実質的な影響はどのようなものであるかを様々な角度から分析し、震災の対外関係へのマイナス影響を最小限に抑えるために、また、中期的に日本が国際社会において影響力・競争力を維持・強化するためにいかなる外交政策を展開するべきかについて検討しました。その上で、震災後の日本外交の方向性、日本の国際戦略、グランド・デザインを導き出し、政策提言を行いました。提言した政策は以下の通りです。
政策提言
緊急事態への対応
災害対策基本法第 105 条に基づく「災害緊急事態の布告」をすべきであった。
今後は非常事態に関する規定を法的整備することも視野に入れるべきである。
日米同盟の強化
「トモダチ」作戦は大成功。史上最大の日米共同作戦。その成功を、日米同盟を強化するチャンスとして捉えなければならない。
日米同盟を国益増進の為に日本が利用するという考え方も必要。
厳しい財政事情ではあるが、防衛費と ODA の増額を検討すべし。
ミャンマーやオーストラリアを含めたアジア太平洋地域で安全保障対話やネットワークを強化。
中国は日米同盟の強化に重大な懸念を抱いているからこそ、強化すべき。
パブリック・ディプロマシー
「ediplomacy」「デジタル外交」を積極的に活用すべき。
風評被害の解消には時間がかかる。ハイレベルでの情報発信が引き続き必要。
復興経済
日本企業も、環境技術や自然エネルギー(地熱発電技術等)等、比較優位のある分野を中心に新たな市場を開拓するべく、意欲的に海外進出を図っていくことが求められる。
エネルギー
ヒステリックな対応は禁物。
感情論に流されることなく、現在の原子力エネルギーをやめた場合、あるいはやめなかった場合、徐々に減らしていく、または太陽光を中心とするところにシフトしていった場合の費用と便益、費用対効果を冷静に計算していく必要。
津波・地震関連
今回の地震と津波は不意打ちではなかったということ。
津波のシミュレーションと高潮のシミュレーションは日本が一番進んでいる。
津波のメカニズムの解明、防災機能を備えた社会基盤施設の再建。
地震の研究者と津波の研究者と防災担当者がそれぞれ別のものを見ていたのが問題。
津波対策の技術を外交の力で世界に広めるべし。
防災関連
防災マニュアルが未整備。自然災害に対して官民が協力できる体制づくりを。日米同盟においても、様々な事態を想定した共同のシミュレーションを行う必要性。
防災協力の推進の必要性。津波対策における日本のノウハウを海外に示す。
日本は高い技術を持った高品質の国家。科学者がそれをきちんと説明しなければならない。
調査・分析体制
本調査・分析の実施にあたっては、以下の体制にて行いました。
総括:片岡貞治 早稲田大学国際学術院教授(国際戦略研究所所長)
大門毅 早稲田大学国際学術院教授(国際戦略研究所)
柴山知也 早稲田大学理工学術院教授
塚本俊也 青山学院大学教授
顧林生 氏(兵庫震災記念21世紀研究機構)
オブザーバー:
中村 亮 外務省政策企画室長
丸山史恵 政策企画室課長補佐
志水創一 政策企画室事務官
斎藤智之 広報文化交流部総合計画課事務官