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WEB併載企画 受けたい医療2022 認知症治療特集
アルツクリニック東京院長・順天堂大学医学部名誉教授・日本老年精神医学会前理事長 新井 平伊

取材協力
アルツクリニック東京院長
順天堂大学医学部名誉教授
日本老年精神医学会前理事長

新井 平伊


あらい・へいい/1984年順天堂大学大学院修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学大学院精神・行動科学教授などを経て、2018年にアルツクリニック東京を開院。近著に「脳寿命を延ばす」(文藝春秋)がある。


日本でも承認が期待される画期的な新薬

 認知症は脳の働きが低下して、記憶や思考などの認知機能が衰え、不安や興奮、徘徊などの行動・心理症状を引き起こす病気です。その原因は脳梗塞などの脳血管障害が2割程度で、7割近くはアルツハイマー病が原因の「アルツハイマー型認知症」です。
 アルツハイマー型認知症の薬はこれまでもありましたが、すべて対症療法的で病気の進行を遅らせるものでしかなかった。そんな中でアメリカの製薬大手バイオジェンと日本のエーザイが共同開発。「アデュカヌマブ」という新薬を完成させ、2021年6月にアメリカ食品医薬局(FDA)の承認を受けてニュースになりました。
 アルツハイマー型認知症は、アミロイドベータというタンパク質が脳内に少しずつ蓄積して、やがて脳神経を死滅させ、脳を萎縮させていきます。「アデュカヌマブ」は、このアミロイドベータを除去する画期的な薬であり、根治を目指しています。実際にアメリカでは患者のアミロイドベータが23%減少したという統計データがあります。
 ただ、問題は費用が非常に高額であること。この薬は定期的に投与するため年間で約600万円もかかります。自由診療が基本のアメリカはさておき、日本は国民皆保険ですから、対象患者を絞り込まなければならないでしょう。例えば、若年性アルツハイマー病の場合は、40代~50代という働き盛りが多いですから、こうした方に「アデュカヌマブ」を使い、就労が継続できるようにすることが考えられます。いずれにしても年内に承認される見込みですので、対象者や保険適用の有無など、その内容に注目したいと思います。

生活習慣病や飲酒・喫煙が発症リスクを高める

 アルツハイマー型認知症を完全に予防することは難しいですが、早期発見は可能であり、未病の段階で対処すれば、発症を遅らせることができます。まず、原因であるアミロイドベータは発症する20年以上前から蓄積し始めることがわかっていますから、30代、40代のうちにその蓄積量を調べておく。検査方法には脳脊髄液採取もありますが、より詳細にわかるのは「アミロイドPET」という断層画像検査です。
 また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、その治療をすることで認知症の発症を遅らせることができます。お酒やタバコも認知症の発症リスクを高めるので控えてほしい。健康な脳を維持するには、コミュニケーションしながらアタマを使って行う将棋や麻雀などの対人ゲームが有効といえます。




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