あなたの会社は、リスクに備えていますか

自然災害や経済環境リスクなど、中小企業を取り巻くリスクは日々、多様化・複雑化しています。一般社団法人日本損害保険協会が実施した「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2023*」でも、中小企業経営者がどのようなリスクを感じているのか、それらのリスクに対しどのような対策をしているのか、実態と課題が見えてきました。

今回は、この調査結果も参考に、中小企業がリスクに備えるための保険とその有用性について、フリーアナウンサーであり、起業家としても第一歩を踏み出した森本智子氏が、日本損害保険協会の会長である新納啓介氏に話を聞きます。

*2023年9月8日~11日にインターネット上で実施。対象は中小企業の経営者および従業員1,031名で、損害保険契約関係者(決定権あり/選定関与)。

中小企業を取り巻くリスクは身近に。
思わぬ大きな被害も

調査では、86.4%の企業が、事業を行っていくうえで、「何らかのリスクを認識している」と回答。特に、「自然災害」(50.7%)や「顧客・取引先の廃業や倒産等による売上の減少」(38.0%)が多く挙がった。

森本

ここ数年でも、自然災害やコロナ禍、インフレ、物流混乱など、中小企業にとって多くのリスクが顕在化した印象があります。

新納

おっしゃる通り、中小企業を取り巻くリスクは非常に多様化していると認識しています。自然災害についても、昨今は頻度が高まり、規模が大きくなっています。経営課題としての関心度についての問いでは、「自然災害」のほかに、「経済環境リスク」や「国際情勢」、「知的財産権侵害リスク」などが多く挙げられました。企業の経営を守るためにはそれらのリスクに備えていただくことが重要です。我々、損害保険業界としても、多様化するリスクに備えるための幅広い商品を用意し、中小企業の皆さまを支えていかなければいけないと考えています。

「勤め先の企業が何らかのリスクにより実際に被害を受けた」との回答は27.9%、「周囲で何らかの被害を受けたという話を見聞きしたことがある」との回答も40.8%に上った。

森本

私の周りでも、「危うく被害に遭うところだった」という話を何度か聞いたことがあり、ひとごとではないと感じています。

新納

調査では、中小企業が想定する損害額としては、「100万円未満」という回答が最も多いですが、実際の被害額は大きな幅があることに注意が必要です。実際に被害を受けたことがあると回答した人(288人)のうち2.8%は、「1億円以上」という非常に大きな被害であったことが分かりました。

森本

自分の会社がまさかそんなに大きな被害を受けると考えている方は、あまりいらっしゃらないでしょうね。

新納

実際に被害を受けた企業からは、「リスクに対する備えが不足していた…」「被害がこんなにも大きくなるとは…」という声が多く挙がっていますので、発生頻度が低くても、やはり万が一の被害に備えることはとても大事だと思います。日本損害保険協会の特設サイト「中小企業に必要な保険」においても、中小企業が実際に直面した危機と保険による備えに関して、具体的な事例を動画で分かりやすく紹介していますので、ぜひ多くの方に見ていただきたいです。 日本損害保険協会「中小企業に必要な保険」特設サイトへ →

多様化するリスクをカバーする損害保険。
サイバー保険にも注目

「何らかのリスクを認識している」と回答した891人のうち52.6%が、「損害保険への加入」によって対策。「貯蓄」(27.8%)や「補助金等の活用」(20.7%)と比べても最多となった。

森本

調査結果では「損害保険への加入」によってリスクへの対策をしているとの回答が最も多かったですが、中小企業にとっての損害保険とは、どのようなものでしょうか。

新納

中小企業が万が一の事故などによる被害に遭われた際に、保険金の支払いなどを通じて事業継続をお手伝いするもの(制度)だと考えています。損害保険というと、火災保険や自動車保険が広く知られていますが、「企業の財産リスク」や「事業中断リスク」、「経営者リスク」など、事業活動にまつわるリスクを幅広くカバーすることができる商品もあります。

森本

私の会社も損害保険への加入を検討していますが、種類が多く分かりづらい印象もあります。例えば、様々なリスクにセットで備えられる保険はあるのでしょうか。

新納

企業向け保険では、企業を取り巻くリスクに包括的に備えることができる商品もあります。損害保険代理店や損害保険会社にご相談をいただければ、ご自身の企業を取り巻くリスクへの対策として、適切な商品をご提案いたします。

リスクが多様化する中、近年、注目度が高まっているサイバーリスク。サイバー保険の認知度は46.9%と2021年調査から10.3pt上昇した。

森本

サイバーリスクといっても、正直、よく理解できていない部分があります。

新納

代表的なサイバー攻撃としては、「ランサムウェア」などが挙げられます。「ランサムウェア」とは、企業のファイルサーバやPC等のファイルを暗号化し、その解除と引き換えに金銭(身代金)を要求する不正プログラムです。感染すると、原因調査やコールセンター設置などの対外的対応や、システム復旧・再発防止のために1億円以上の損害が生じるようなケースもあります。また、近年は、大企業のサプライチェーンの中にいる中小企業がサイバー攻撃を受けた例もあり、サイバーリスクは、もはや大企業だけの話ではなく、多くの企業が脅威にさらされています。 ※日本損害保険協会の特設サイト「中小企業に必要な保険」でも、サイバー攻撃による被害事例を動画で紹介しています。 日本損害保険協会「中小企業に必要な保険」特設サイトへ →

森本

ニュースでも、大企業の取引先である中小企業がサイバー攻撃を受けたという事例を見たことがあります。中小企業もきちんと対策をしないといけませんね。調査結果によると、対策のひとつであるサイバー保険の認知度は上昇していますが、こちらは具体的にどのような商品なのでしょうか。

新納

サイバー保険はサイバーリスクに起因して発生する様々な損害に対応するための保険です。一般的な補償範囲としては、情報漏えいやサイバー攻撃を受けたことによって発生した事故対応費用や損害賠償費用をはじめ、ネットワークを構成するIT機器等が機能停止することによって生じた利益の損失や営業継続のための費用も補償します。保険会社によっては、事前対策として「情報セキュリティ診断サービス」や、事故時の対策として「専門事業者の紹介サービス」などのサービスが付いていることもあります。 ※サイバー保険については、日本損害保険協会の特設サイト「サイバー保険」もご覧ください。 日本損害保険協会「サイバー保険」特設サイトへ →

経営責任としての保険加入の重要性も

損害保険に非加入の理由としては、「リスクが発生する可能性は低いと考えているため」「対策をする費用に余裕がないため」などが上位。一方、被害を受けた企業の46.2%が、取っておくべき対策として「損害保険への加入」を挙げた。

森本

リスクを認識していても、きちんと対策できていない企業も多いようです。

新納

特に、リスクが発生する可能性や被害を受けた場合の影響が不透明なリスクに対しては、費用を投資しづらく、経営の優先順位の中で対策が後回しになっているようなケースがあると思われます。しかし、個人でも企業でも、自身がさらされているリスクを正しく理解し、経営課題として捉えていただくことが大切です。

森本

私の会社では化粧品を扱う予定ですが、保険を扱う知人と話している中で、工場が災害で稼働できなくなったらどうするのか、商品に不具合が出たらどうするのかなどについて考える機会があり、万が一の被害に備えるために、損害保険に加入しておくべきだと感じました。中小企業は、こうした具体的なリスクや被害をイメージしておくことが 必要ではないでしょうか。

新納

そうですね。事故はいつ起こるかわかりませんから、平時から備えることが肝心です。保険会社によっては、被害を受けた後の保険金の支払いだけでなく、事故の発生防止等に関するサービスをセットにした商品もあり、損害保険への加入は、従業員や取引先の安心感を高めることにもつながっています。調査でも、損害保険に対する意識として、「経営責任として、保険加入が必要だと思う」「保険に加入していることで、安心して事業を行うことができる」などの声が多く挙がりました。リスクへの対策という側面だけでなく、経営責任を果たすという意味でも、損害保険は大きな役割を持ちます。

まずは損害保険代理店に相談を。
中小企業向け保険の
特設サイトでの情報収集も

損害保険への加入のきっかけは、「保険代理店から提案があったから」「保険会社から提案があったから」が上位。

森本

中小企業の方は、損害保険に関する情報をどのように入手すればいいでしょうか。

新納

日本損害保険協会では、特設サイト「中小企業に必要な保険」で、企業を取り巻くリスクやそれに備える保険について分かりやすく紹介しています。また、各地で中小企業向けのセミナーなどを開催しているほか、日本損害保険協会公式YouTubeチャンネルや「そんぽ防災Web」において、損害保険や防災に関する基礎知識を紹介していますので、併せてご活用いただきたいです。具体的な補償内容や保険料は保険会社によって異なりますので、損害保険会社や損害保険代理店にご相談いただきたいと思います。 日本損害保険協会【公式チャンネル】 ー YouTubeへ → 日本損害保険協会「そんぽ防災Web」サイトへ →

森本

中小企業にとって損害保険は、多様化するリスクへの備えであるとともに、従業員や取引先に安心感を与えるという意味でも、とても重要な存在だと感じました。本日はありがとうございました。

新納

ありがとうございました。

フリーアナウンサー

森本智子

もりもと・ともこ 2000年テレビ東京にアナウンサーとして入社。「ワールドビジネスサテライト」や「日経プラス10」など経済・報道番組を中心に活躍し、2021年退職。現在はフリーアナウンサーとして活動する一方で、ヘルスケア関連の事業を展開する「Wellness Me」を起業した。

日本損害保険協会会長

新納啓介

にいろ・けいすけ あいおいニッセイ同和損保株式会社代表取締役社長。1988年4月、大東京火災海上保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)入社。取締役常務執行役員などを経て、2022年4月から現職。2020年4月から親会社のMS&ADインシュアランスグループホールディングス執行役員、2023年6月から日本損害保険協会会長も務める。