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パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム
キックオフシンポジウム「エネルギー大変革時代を切り拓く博士人材」
早稲田大学(東京都新宿区)でこの4月に開講された「パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム」のキックオフシンポジウム「エネルギー大変革時代を切り拓く博士人材」が3月18日、同大大隈記念講堂(小講堂)で開かれ、産官学のプログラム関係者や学生ら約240人が参加、基調講演やパネルディスカッションを通じて、PEPの未来図を思い描いた。
同プログラムは、文部科学省が優れた博士人材を育成するために設けた「卓越大学院プログラム」に採択されており、電力工学系、マテリアル系、人文社会系の三つの分野から13の大学が連携し、5年間の博士課程一貫プログラムで、専門力、融合力、俯瞰力を兼ね備えた博士人材の育成を目指す。
シンポジウムでは、田中愛治・同大総長の開会あいさつ、伯井美徳・文部科学省高等教育局長の来賓あいさつに続いて、PEPコーディネーターの林泰弘・同大大学院先進理工学研究科教授が、プログラムの内容について説明。三つの基調講演の後、パネルディスカッション「エネルギー大変革時代を切り拓く博士人材」が行われた。その様子を紹介する。
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横浜国立大学大学院 工学研究院長・理工学府長、理工学部長、教授
渡邉正義
モデレーター ここからは、博士の人材育成をテーマにお話をうかがいたいと思っております。博士の人材育成のこれまでとこれから、これまでどういう育成がされてきたか、そしてこれからPEPという新しいプログラムで博士を育成していくわけですが、どのような形での育成が望まれているのか。それぞれの立場からコメントいただきたいと思います。まずはマテリアル分野のお立場から、渡邉先生、お願いします。
渡邉 いまつくづく感じているのは、基調講演でのお話にもありましたように、エネルギーの分野がここ数10年の間に、大変革を遂げるだろうということです。また、これからの博士に必要な能力として、専門性だけでなく、ものごとを俯瞰して見る力とか、融合力が必要だという指摘にも同感です。
たとえば、蓄電池を家庭に導入して、より豊かで、より便利な生活を実現しようとすると、科学の知識だけではなく、システムや、あるいは社会科学の知識も必要になります。PEPにおいては、そういった資質を備えた人材が育つことを期待しています。
モデレーター 同じく、マテリアル分野のお立場から、宮武先生、お願いします。
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山梨大学クリーンエネルギー研究センター教授
宮武健治
宮武 私が所属する山梨大学では、同じように博士人材育成を目的とした文部科学省の博士課程教育リーディングプログラムを実践した実績があり、その経験を踏まえてお話いたします。
同プログラムでは、独創的な研究者でありながら、周辺分野も俯瞰できる、グローバルリーダーの養成を目指していましたが、現場にいた人間の感覚としては、5年とか7年でそうした人材を育成することはとてもむずかしく、10年とか20年といった長い期間でないと結果は出てこないと思うのです。
プログラムの修了生が就職した企業にアンケートをとってみると、プログラムの実施前と後では、「企業が必要とする能力」について、いずれも実施後の方が上回るという結果が出ています。ところが、最後に「グローバルリーダーが出てきましたか?」と問うと、「いや、そこまでは」というのが当時の評価でした。
今回、本学がPEPに参加し、期待しているのは、まさにその部分なのです。それぞれ違った専門性を持った13の大学が、互いに補完し合うことで、より早く優れたグローバルリーダーを養成できるプログラムになっていると感じて参加しました。
モデレーター 続きまして、電力側からコメントをいただきたいと思います。舟木先生、よろしくお願いいたします。
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大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻教授
舟木剛
舟木 大阪から来たので、何かおもしろい話をしないといけないな、ということで(笑)、このPEPでどういう人材を育ててほしいかというと、儲けることのできる人材を育ててほしいと思っています。
いま日本のメーカーでエンジニア出身のトップはそう多くありません。これまでの教育で、経営に関わる部分の教育があまりなされていなかったこともあり、文系の方が経営を担うという状況がありました。
私自身は、電力系統の制御から研究を始め、そこから徐々に領域を広めていったのですが、文理融合の部分ではどうしても及ばないという思いがあります。PEPのプログラムには、化学系の研究室や、自分たちで足りていない部分を補うものがあるのに加え、横の広がりをもっと広げてくれるものが、たくさんあるだろうと楽しみにしています。
モデレーター 続きまして、末廣先生、お願いします。
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九州大学大学院システム情報科学研究院電気システム工学部門教授
末廣純也
末廣 私の専門は、電子工学系のハードウェアで、大規模集中型電力システムの研究を行ってきました。この分野では、20世紀の後半、高電圧の送電線で、いかに効率よく安定的に電気を送るかという研究が中心でした。ところが、21世紀になり、電力需要が頭打ちになり、そこまでやる必要がなくなりました。一方で、ただ電圧を高くするだけではなく、新しい技術を取り込んで、高機能化することが求められるようになってきました。たとえば、超電導技術の合体とか、ナノテクノロジーの導入とか。
PEPには、分散型電源、マテリアル、化学の各分野からの参加があるということで、電力ハードウェアの分野の学生にとって、新しい刺激が得られる貴重な機会になると期待しています。
モデレーター それでは、人文社会科学系から、川上先生、お願いします。
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早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
川上智子
川上 私は、大学では文学部で源氏物語を研究し。卒業後、精密機械メーカーの基礎研究所に就職しました。そこで、理工系の博士、修士の皆さんと知財の調査とか、事業の創造、企画などの業務を6年ぐらいやり、その後、MBA、博士を修得しました。人文、社会、自然科学と渡り歩いてきたことになります。
理工系の人がイノベーションを起こすのに、どうしても経営人材が足らないとよく言われます。これは私の博士論文のテーマでもあるのですが、イノベーションを起こすには、技術と経営の知識の融合が不可欠なのです。
理工系の知識にプラスして、ビジネスおよび社会科学系の知識を持つことがこれからの時代、求められています。1人で持つのでなく、チームで持つという方法もありますが、1人で持つ方が効率的で、速く対処できるというのが、私の研究の結果です。
モデレーター ここからは博士人材を受け入れる産業界の立場からコメントをいただきたいと思います。五十嵐常務執行役員、お願いします。
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JXTGエネルギー株式会社 取締役常務執行役員
五十嵐仁一
五十嵐 私はマスターで大学を出て、会社に入ってから、論文を書いて博士号を取りました。断片的な知識で社会に出ても、あまり通用しないということが、会社自体もわかっていながら、なぜ博士まで待って採用しないかということを、ずっと疑問に感じていました。
私自身の経験からいえば、世界を舞台に働こうとすると、学位がないと働ける幅が狭くなります。海外では、ドクターと紹介されると、その後の仕事がスムーズに進みます。それだけその資格が、高く評価されているのです。私はマスターで海外に留学し、ある研究所に所属したのですが、肩身の狭い思いをしました。
いま私が思うのは、一つの専門に集中するのではなく、若いうちに基礎研究を幅広く学んでおくことが、非常に重要だということです。その上で、博士ですよ、ということになればよいと思います。アメリカのPh.Dもそうですし、そういった人材が今後活躍するようになると思います。
モデレーター それでは、岡本副社長、お願いします。
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東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長
岡本浩
岡本 私は博士号を修得してから研究者として会社に入ったつもりで、サラリーマンとして入ったつもりがなかったので、事業部門に異動になった時には、「そんなつもりではなかったのになぁ」と思いました。ただ、いざ仕事を始めてみると、自分のものの考え方とか、問題解決の能力が使えるということがわかり、仕事がとてもおもしろく感じられるようになりました。
どういう博士人材が役に立つかというと、端的に言うと人物本位になります。専門性に立脚しすぎて、「私はこれしかできません」と言うようなことがあれば、それは企業では、大変苦しいことになります。いま企業では、多能化といって、複数の領域を見ることができる人材育成を進めており、現場で起きていることをワンストップで、1人の人間で対処するよう変わってきています。
一つの専門分野だけでなく、そこから得た課題発見力や問題解決力、構想力をほかの分野にも適用できるようになっていただきたいですし、そのためには、ぜひPEPで自分自身を鍛えていただきたいと思います。
同時にリベラルアーツも必要だと思います。論理的思考や人間に対する理解を若いうちに身に付けて、応用が効くようになって世の中に出ていく、そういう人材がPEPで育つのなら、企業としては大歓迎です。
モデレーター 最後に、中村執行役員副所長、お願いします。
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株式会社KDDI総合研究所 取締役執行役員副所長
中村元
中村 私も会社に入ってから20年間、研究所に所属し、研究が大好きだったので、本社に異動と言われて、本当に戸惑った経験があります。ちょうどいまの4GのLTEをリリースする時に、端末の開発の通信部分を任されたのですが、とてもおもしろかったのですね。そのあと企画や経営などの分野を経験し、3年前に研究所に戻りました。
私たちの時代は、業務をしながら、論文を書いて博士号を取ることが可能でしたが、いまでは時代も変わり、現場のスピード感がとても速まりました。また研究員でも研究所の外に出て行く機会も増えています。以前に比べて働きながら博士号を取ることがむずかしくなっています。
博士課程でベースを作り、学位を取ることで能力を証明し、そこから事業に必要な能力を発揮していくために、早くから準備をしていくことは大事だと思いますし、PEPのプログラムで許容力のある、俯瞰力のある人材を育てていくことは、とても意味のあることだと思っています。
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モデレーター
PEPコーディネーター、早稲田大学大学院先進理工学研究科教授
林泰弘
モデレーター いろいろなお話をうかがって私が感じたことは、知恵のたすきが大事だな、ということです。これまでは、エネルギーマテリアル系、電力工学系、社会科学、そして国際標準化、産業界とそれぞれの方々の知識がばらばらで、このままでは次世代に渡せない状態でした。これらを一つに束ね、次世代に手渡していくのがPEPの目指すべき役割だと思っています。そうした役割を担えるよう、みんなで力を合わせていきましょう。本日は、ありがとうございました。
PEP卓越大学院プログラム事務局
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