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長崎大学卓越大学院プログラム オンラインで結ぶ日英公開シンポジウム

長崎大学

新型コロナとグローバルヘルス
新興感染症のパンデミックにどう立ち向かったか。

課題と教訓

日時

2021年3月7日(日)

会場

アクロス福岡・国際会議場(福岡市中央区天神1-1-1)

 長崎大学は3月7日、福岡市のアクロス福岡を主会場にロンドン、東京などと結び「新型コロナとグローバルヘルス〜新興感染症のパンデミックにどう立ち向かったか。課題と教訓〜」をテーマに公開シンポジウムを開催しました。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)と闘う日本と英国の研究者らが公衆衛生の役割を考えようと、日本医学ジャーナリスト協会西日本支部が共催し、会場・オンラインで1,100人以上が参加しました。
 新型コロナ流行が勃発して以来、世界で1億2000万人が感染し、250万人以上が亡くなりました。公衆衛生が成熟した英国の新型コロナ関連死亡者数も12万人を超え、日本をはるかに超える打撃を受けました。一方、病院での高度先進医療を誇る日本は感染者数・死者数は少なかったものの、病床数はひっぱく しワクチン対応は後れをとっています。異なる医療文化をもつ日本と英国がどのように新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)に立ち向かってきたのか、両国政府の新型コロナ対策に深くかかわってきた専門家たちの生の声を聴きながら、両国の課題と教訓を議論しました。
 長崎大学によるレポートで、シンポジウムを詳報します。  

主催:長崎大学

 共催:日本医学ジャーナリスト協会西日本支部

第一部

基調講演「コロナとグローバルヘルス(疫学・公衆衛生)」

【座長】
ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長
 ピーター・ピオット氏
東京大学名誉教授、元日本感染症学会理事長 岩本愛吉氏



西浦 博

京都大学大学院
医学研究科環境衛生学分野教授

西浦 博 氏
【理論疫学】

ジョン・エドモンズ

ロンドン大学衛生・
熱帯医学大学院教授

ジョン・エドモンズ 氏
【感染症数理モデル】

大曲 貴夫

国立国際医療研究センター
国際感染症センター長

大曲 貴夫 氏
【臨床感染症疫学】

「日本の医療システム、有事に適さず」:大曲貴夫氏

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 日本政府や東京都の新型コロナ対策のアドバイサーも務めてきた国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲貴夫氏が、最初の基調講演で新型コロナ患者を入院させることができる感染症病床数が圧倒的に少なく、病床の確保に苦労した経験を語りました。他の用途で使用されている病床を、感染症病床へ変更する手段を取らざるを得なかったが、病床の用途をコントロールする権限がないことが根本的な課題としてあるとしました。このように現行の日本の医療システムは、新興感染症流行のような有事の備えに適していないとも指摘しました。
 これを受けて、基調講演の座長を務めたロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(LSHTM)学長のピーター・ピオット氏は、「この悩みは日本だけではない」とコメントしました。英国では、病床は国営の医療サービス(NHS)がコントロールしているので、病床の確保は比較的スムーズに進んだ(2日目のロビン・ベイリー教授の基調講演=参照)と言いますが、病床が確保されたとしても、英国では2020年に10万人以上が命を失っています。ワクチン接種普及についても、世界の中で最も進展している国の一つではありながら、「どこが良くて、どこに改善の余地があったのか、全体を見て、総合的に判断しなければならない」と述べました。

英国の失敗と成功:ジョン・エドモンズ氏

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 英国非常時対策科学諮問委員会(SAGE)メンバーの一人で、100名を超えるスタッフを有し、感染症数理モデルの世界の第一人者である、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院教授のジョン・エドモンズ氏は、「2020年の英国は、いきなり大きな第一波で襲われ、さらにロックダウンの発動が遅れた結果、被害が他のヨーロッパ諸国と比べても甚大となった」と語り始めました。その後、英国は当初の全面的なロックダウンから変更し、学校閉鎖、大規模集会の禁止、6人ルールなどの社会生活の制限範囲と、対象地域を限定した対策に切り替えて対応しようとしましたが、9月から始まった第二波は、感染力の高い変異株の出現と重なってしまい、ピーク時の今年の1月には、1日に4千人以上の入院を要する患者が発生し、英国にあるすべての病床がコロナ患者で埋まる事態となりました。結局全部で3回ものロックダウンを発動しなければならなかったことや、一年間で10万人以上の命を失ったことを、自省の念を込めて複数回言及し、英国の新型コロナ流行を「まるでローラーコースターに乗っているかのようなひどい年だった」と振り返りました。
 一方、そのような惨事に見舞われながら、英国の新型コロナ対応の成功例として、世界で最も早くワクチン(ファイザー製)を承認し、また、アストラゼネカワクチンを開発・承認し、いち早く一回接種による効果を証明して、最も速い速度でワクチン接種普及を進めていること、それに加えて、新型コロナ研究に関する様々なインパクトのある科学的な発見を挙げていました(シンポジウム2日目と3日目に、オックスフォード大学教授のピーター・ホービイ氏とグラスゴー大学・ロンドン大学教授のエマ・トムソン氏の講演で詳細が語られています)。

感染症理論疫学を国内政策に初めて活用:西浦博氏

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 一方で、日本では数少ない理論疫学者の京都大学教授・西浦博氏が2020年、同様に数少ない日本の感染症疫学者の東北大学教授・押谷仁氏や国立感染症研究所感染症疫学センター長の鈴木基氏らとともに、どのように新型コロナ流行に立ち向かったのかを語り始めました。始まりは、2020年2月に大規模なクラスター(感染者集団)が発生したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号であり、この船が横浜港へ寄港した際に政府がとった船内隔離の是非について、国内から批判されたときであったこと、そのとき、数理モデル的手法の一つである逆計算法(Backcalculation)を使って、船内隔離が間違いでなかったことを科学的に示したことで、「かつて国内では一度も感染症対策に本格的に活用されたことがなかった感染症理論疫学が、国内の政策立案者にも注目されるようになった」と語りました。その後、厚労省の一室にクラスター対策班が急きょ結成され、大学の研究者と厚労省が一体となって、リアルタイムで感染症の疫学的解析を行い、政府へ直接助言するという最初の経験であったとも述べました。しかし、組織としては、その機能は限られ、全国47の都道府県のWebサイトにあがってくる感染情報を手作業で拾ってくるといったものであったと、そのときの苦労を語る一方で、そのおかげで、2次感染の数が偏っていること(ほとんどの感染者は2次感染を起こしていないこと)、2次感染を起こしている状況が閉鎖された室内などの限定された空間であることなど、あとで「3密」というメッセージの基礎となる疫学情報が得られたと語りました。
 さらに、緊急事態宣言を発出することで、人々の自主的行動制限を強く求めたときにも、数理モデル的手法を用いて、8割減という定量的な目標を訴えたことから、「8割おじさん」というニックネームが付けられたエピソードについても言及するとともに、3月の第一波は、緊急事態宣言を発出する前から既に感染流行は終息に向かって減り始めていたとも語りました。そして、当初の緊急事態宣言には、法的強制力のない自粛が主体であり、欧州式のロックダウンと比べると、社会生活への影響は極めて少ないことが、日本社会では十分に認識されていないことについても言及し、政治家と国民とのコミュニケーションの方法において、まだ改善の余地があると締めくくりました。

ショートプレゼンテーション

長崎大学教授 クリス・スミス氏
ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏


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 ショートプレゼンテーションでは、ロンドン大学から長崎大学教授へ出向しているクリス・スミス氏が2020年中に、英国、日本、フィリピン、パプアニューギニアなど5か国を、国境を越えて移動したときの様子を紹介しました。特に、初期の段階で誰もマスクを着用せず、平気で暮らしていた英国と、すでに緊張感に包まれていた日本との顕著な違いについて、自身の体験をもとに語りました。また、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の「コロナウイルスおよびCOVID−19対策特別顧問」でもあるピオット氏は、通常10年以上かかるワクチン開発を、1年以内に成し遂げることができた今回のコロナに関する人類の進歩を強調し、今後ワクチンを普及させてゆくうえでの期待と課題について総括しました。

第二部

パネルディスカッションと質疑応答

【座長】
ロンドン大学小児感染症学教授 シュンメイ・ユン氏
東京大学名誉教授、元日本感染症学会理事長 岩本愛吉氏
【パネリスト】
ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏
国立国際医療研究センター国際感染症センター長 大曲貴夫氏
ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院教授 ジョン・エドモンズ氏
京都大学教授 西浦博氏
長崎大学教授 クリス・スミス氏



 シンポジウムの第2部パネルディスカッションでは、東大名誉教授の岩本愛吉氏とともに、西アフリカのエボラ対策でも活躍したロンドン大学小児感染症学教授のシュンメイ・ユン氏が座長を務め、あらかじめ用意された日本医学ジャーナリスト協会からの質問にも答えるかたちで、内容の濃いパネルディスカッションが展開されました。


英国の水際対策、なぜ遅かった?

 2020年流行の初期において、英国の水際対策が緩かった理由について、岩本座長から問われたエドモンズ氏は、「水際対策は、感染症が少しずつ国内へ流入しているときに効果があるもので、残念ながら、対策を施す前にコロナが一気に流入し、3月時点ですでに国内での感染が1万人を超えていた。その段階では効果は期待できなかった」と述べました。「振り返ってみて、もし水際対策に効果があるとしたら、それは昨年の1月か2月のことだったが、(世界で最もグローバル化が進んだ英国で)あのタイミングで非常に厳しい水際対策を実施するだけの強い理由はなかった」とも述べました。
 西浦氏に向けられた、「ダイヤモンド・プリンセスでの対応で、乗客の船内隔離が始まった後も、ベットメイキングやケータリングを行った船員がでんをさらに拡大したのではないか」という質問に対して、西浦氏は「船員から乗客へのでんがあったか否かはわからないが、疫学調査の数理モデルを用いた解析結果から確実に言えることは、クルーズ船のなかで起きた感染の大多数は、船内隔離が始まる前に起きたことであり、おそらくパーティーやレストランで起きたことだろう」と説明しました。


マスクの根拠、いまだ弱いが…全員着用で効果か

  また、エドモンズ氏と西浦氏に向けて、マスクの着用の科学的根拠について質問があり、両氏とも「感染源の制御という観点からはマスクの効果を示したエビデンスはあるものの、感染からの予防という観点からの根拠はいまだに弱い」という見解で一致しました。さらに、国民全員にマスク着用を求める政策(Universal mask wearing policy)の有用性について、「ワクチン効果を調べるのと異なり、マスクの着用状況が人によって異なるので、その効果を証明するのが極めて難しい」とエドモンズ氏が語ったのに対して、「効果が小さくても、集団がみんなで着用すれば、その影響は大きいのではないか。マスク文化のあるアジアと欧米で、流行にかなり大きな違いがあった理由の一つに、マスクがあるのではないか」とピオット氏から問われると、エドモンズ氏は「言えることは、この政策は政府にかかるコストはゼロなので、(総合的に判断すると)良い政策だと思う」と答えました。
 ピオット氏はワクチン普及へ向けた今後の期待と課題について問われ、「中国のワクチン外交については、まだ、科学的根拠が示されていないワクチンを普及しようとしている」として疑問を投げかけつつも、COVAX(新型コロナウイルスワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組み)など新型コロナワクチンを世界中へ向けて公正に分配しようとするなどの多くの動きがあり、自分は楽観的でもあると述べました。一方で、我々が向き合うべき課題として、長期的ビジョンに立った生産拠点の必要性を挙げました。今普及させようとしているコロナワクチンのみならず、これから新型コロナが世界に定着することが十分予想される。今後生産がボトルネックになってはならず、将来の変異株に対しても柔軟に対応できるようアフリカなどにもワクチン生産拠点を持つべきだと訴えました。
 


終息へは「ワクチン、ワクチン、そしてワクチン」


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 コロナ流行を終息させるためのロードマップについて問われたピオット氏は、「ワクチン、ワクチン、ワクチン、そしてワクチン」と答えました。日本医学ジャーナリスト協会の浅井文和会長から、日本が世界に対して貢献できることを具体的に聞かれると、まずは国内で自国民に対して、次にCOVAXへの支援、そして、次に低所得国に対してワクチン生産拠点への支援を求めました。
 これらのピオット氏によるワクチンに対する期待を込めたコメントは、新型コロナワクチンの普及によって、我々は、低所得国の健康向上の手段として、ワクチンの有用性を再認識するに至り、それは将来、コロナのみならず他の様々な感染症に対しても、ワクチンの有用性を生かすべきだという議論に向かうことを示唆しているかのようでした。


国民とコミュニケーションをとる専門官、日本にも

 感染症対策におけるメディアの役割についての議論も展開されました。ピオット氏は、日本のヒトパピローマワクチン接種率が低いことや、欧州ではフランスの医師がワクチン接種を拒否している状況についても言及し、「我々は、どのように正しい情報を国民に伝えるかについて、もっと戦略が必要だ」と訴えました。一方、エドモンズ教授はワクチン普及について成功している英国のメディアの状況に関し、サイエンスメディアセンターについて紹介し、「科学的知見を正しくわかりやすく国民へ伝える役割を持つ同センターによって、英国民全体の議論のレベルアップにつながった」と述べました。また、ファイナンシャルタイムズなど報道機関が自ら独自に情報を集約して公開していたことを評価しました。一方で、西浦氏は、「人と人との接触を8割減らして欲しい」というメッセージが、「人出を8割減らす」メッセージに理解されてしまった例を挙げ、メディアとの関係、正しいメッセージを伝えることが、とても難しかったと日本の状況についてコメントしました。これからワクチンが普及されるにつれて予想される、副反応とワクチン接種との因果関係についても、それらをどのように正確に国民へ伝えるかがこれからの課題だとも語りました。また、日本にも英国のように、科学的な事実に基づいた医療政策について、公式に国民とコミュニケーションをとる専門官がいた方が良いとも述べました。

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 シュンメイ・ユン座長は、感染症対策と経済政策との間で生じた緊張関係について、エドモンズ氏に質問しました。「英国では、非常に強いロックダウン反対運動があった。患者の命を救うことはもちろん大事だが、ロックダウンの負の影響、家庭内暴力、メンタルヘルス、子供への影響など、経済的打撃のみならず、社会的な影響は単純ではない。こういった諸問題をどのように可視化して、特に政策を決定する政治家に向けて、透明性を持った政策決定に結び付ける何か良い方法は見つかったのか。このような諸問題を可視化することは、どれが国民にとって良い対策なのかを、なるべく多くの人に一緒に考えてもらうためにも重要なことだからだ」。この質問に対するエドモンズ氏の反応は「感染症患者数や死亡者数以外の、生活の質を評価する方法を、別の専門家が開発している」との言及にとどまりました。また、「自分がメンバーを務めるSAGE(非常時科学諮問委員会)には経済的影響を評価する役割はない」と回答しました。一方、感染症対策については、「その判断根拠となったエビデンスを完全に公開しているが、政府が経済的判断をおこなったその基準について、私は知らない。2020年の夏に、政策決定者が感染症対策第一から経済対策優先にスイッチしたのは明らかであり、それが第二波を招いた。その結果、2回目と3回目のロックダウンを余儀なくされ、結果的にさらに大きな経済的打撃を受けた。将来的に、経済的影響の解析と、疫学解析は互いに連結させた方が良いし、そのことで、我々が2020年に経験した失敗を繰り返さなくて済む」と語りました。


数々の研究成果、英国の科学的貢献

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 岩本座長は「日本では、ヒトのゲノム解析の研究者は多いが、病原体のゲノム研究が遅れている。その一つの原因には、患者検体が国の機関に集中して、他のアカデミアとの間でやり取りされていない現状がある。私は英国のウイルスゲノム研究はものすごい科学的貢献をしたと思う(3日目にトムソン氏が説明=参照)」と述べました。それが実現した背景について質問を投げかけたところ、エドモンズ氏は「英国が成し遂げた科学的成果は、2020年英国が突出して成功したことであり、その一つのウイルスゲノム研究が成功した背景について、この間に研究で得た情報は可能な限り早く一般公開して、すべての人々が見える状態にすることだった」と強調しました。また、「世界で公開されたコロナウイルスゲノム情報の半分は英国で解析された結果であること(その結果、病院内で生じたクラスターはスタッフ間の伝播であったことや、流行初期に多様なウイルスが国外から英国に流れてきたこと、新しい変異株の異変にいち早く気が付いたことなど)を世界に公開したこと、このことに膨大な予算を費やしたことは素晴らしかったと思う」と英国の世界への科学的貢献について評価しました。

 また、ピオット氏は「英国の科学的貢献は、新型コロナで始まったわけではない。その背景には、例えば、ゲノム解析については、ケンブリッジ大学のサンガー研究所がこれまでに果たしてきた役割は絶大であり、それらの基礎があったからだ。これらは研究に投資をしておくことの重要性を物語っている。最初に開発されたmRNAワクチンについても、開発が始まったのは20年も前のことだ。大事なことは、政府の予算も大事だが、複数のセクターがコラボすることも大事なのだ。これからのシーケンス(遺伝子解析などのラボ研究)で大事なのは、実験だけではない。それらをどのように生かし、どのように情報処理をして公衆衛生に生かすかがキーとなる。日本は、細かいラボ研究は得意だが、(今回のコロナパンデミックのように)大きな集団を対象にしたレベルの仕事はあまり経験がない。もっと、ネットワークを作るべきだと思う」と、日本の研究の在り方についても厳しいコメントを寄せました。最後の総括では、新型コロナが欧州で第一の死因となったことに言及し、「ワクチンが普及したとしても、複数の対策を継続して進めるべきであり、これからコロナの存在下で、人々がどのように暮らしてゆくべきか、経済の短期的・長期的影響も含めて、長期的展望に立った議論を始めるべきだ」と締めくくりました。
 クリス・スミス氏は「自分から見て、英国に比べ、日本ではまだ(コロナ)ワクチンに対して懐疑的な雰囲気を感じた」とコメントし、西浦氏は、英国の高齢者はすでに9割が接種を受けたことに言及し、日本でもそうなって欲しいと述べました。大曲氏も、ワクチン接種に対して国民の間で結束することが大事だと訴えました。エドモンズ教授は「今はワクチンがある。これは大きな違いだが、2021年が約束されたわけではない」と警告しました。その理由として、「流行を終息させるには、子供を含めて全員にワクチン接種しなければならないが、まだ子供に打って良いワクチンは承認されていないこと、それから、南アフリカの変異株、アマゾン地帯で始まったブラジル変異株の問題もある。よって、2021年は多くの国にとって、ワクチンがあったとしてもさらなる試練を迎える可能性がある」と締めくくりました。


新型コロナは短距離走でなく、マラソン

 最後に二人の座長から「新型コロナは、短距離走ではない、これからゴールまで長く続くマラソンだ。2020年は世界中のすべての国が、自国の火事を消すことで手いっぱいだったが、本日、このようにして他の国がどう対処してきたのか、ようやく学び始めることができた。2021年以降もこのような対話を続けることは意義がある」などと発言があり、本シンポジウム全体を総括しました。

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