緊急対談

小池百合子 東京都知事

経営者の決断で、工夫をこらしたテレワークが実現されています。

島耕作  TECO テコット 相談役

感染拡大防止と事業活動の両立には、テレワークが切り札ですね。

© 弘兼憲史/講談社

テレワークで危機突破

 新型コロナウイルス感染症拡大の第3波に見舞われる中、東京都は独自に緊急事態宣言の発令期間を「テレワーク緊急強化月間」と定め、感染拡大防止と事業活動との両立に向けて、さらなるテレワークの定着・浸透に取り組む強い決意を示した。導入が難しいといわれる中小企業や製造業などの業種において、創意工夫により、テレワーク導入を可能にした成功例や、導入にあたってのヒントやアイデアについて、テレワーク推進の旗振り役である小池百合子・東京都知事と家電メーカーのトップとして辣腕(らつわん)を振るった島耕作・テコット相談役が語り合った。

島耕作・相談役(以下、島) 私が相談役を務めるテコットでは、昨年4月に出された1回目の緊急事態宣言の際に、社員の8割のテレワークを実現させました。同様に多くの企業がテレワークを導入し、東京都の調べでは、昨年4月時点の都内企業の導入率が、前月の24.0%から62.7%にまで一気に高まりました。しかし12月には51.4%にまで下がってしまったと聞いています。

小池百合子・東京都知事(以下、小池) テレワークは、感染症の拡大防止に有効なだけでなく、働き方改革を促進する起爆剤です。先日、再び緊急事態宣言が出され、直近の調査における導入率は57.1%まで上昇しましたが、東京都では、テレワークのさらなる定着・浸透を目指し、政府による緊急事態宣言の発令期間を「テレワーク緊急強化月間」と設定しました。今求められているのは、感染の拡大防止と事業活動との両立です。事業者の皆様には、出勤者数の7割削減に向けて、「週3日、社員の6割以上」のテレワークの実施をお願いしています。

 テレワークを核とした働き方改革を後戻りさせないことが大事ですね。

小池  はい。今後、進展するDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応にもテレワークは不可欠です。また、経営者の決断で、様々な工夫をこらしたテレワークも数多く実現されています。

設計デザイン部門で

 私もいろいろな導入例をうかがっています。経営基盤の弱い中小企業や、製造業などの業種では、一般的にテレワークの導入は難しいと言われており、実際の導入率も低いようですが、聞くと、創意工夫による成功例は少なくありません。

小池  たとえば、公園遊具などの設計・製作などを手掛ける日都産業(杉並区)では、デザイン課の社員の出産・育児休業を機にテレワークを導入しました。在宅のテレワークと出社勤務をローテーション化し、より仕事の効率を高めています。まさに、ハイブリッド勤務です。さらに、設計部門や総務部門でもテレワークを導入し、製造現場以外の部門でテレワークの活用を進めています。

 各企業の実情に応じて、テレワークと出社勤務のベストミックスで生産性を向上させる、理想的な取り組みですね。

小池  企業のトップを長く務めてこられた島さんなら、よくご存じだと思いますが、企業が何か新しいことにチャレンジするには、トップの決断が大事ですよね。

直行直帰で営業活動

 社内制度や情報通信技術(ICT)環境の整備を伴うことなので、トップの決断は重要です。

小池  従業員20人ほどで真空成形用金型を製造している城南村田(大田区)では、製造現場は難しいものの、「まずはできるところから」ということで、経営者の強いリーダーシップのもと、就業規則を整備し、営業部門でテレワークを推進しています。社員に会社の契約関連データにアクセスできるノートパソコンを貸与し、出張先で業務をこなせるようにしたことで、会社に寄らずに直行直帰できるようになったそうです。

オンライン商談導入

小池  多くの大企業でもテレワークがますます進展しています。業界大手の損害保険ジャパン(新宿区)では、保険商品は現物の紙が基本という業界の特性から、当初、テレワークの導入は難しいと考えられていました。しかし、テレビ会議用の端末も活用したオンライン商談や電子署名の導入に取り組み、営業部門では約7割の社員がテレワークを実施しているそうです。また、全国の社員が在宅のまま、完全オンラインで受講できる企業内大学でスキルアップを図っています。

 そうした工夫・努力の末の営業継続のメリットは大きいですね。

小池  「テレワーク緊急強化月間」では、「テレワーク東京ルール」の「実践企業宣言」を行う企業に対して融資制度を拡充しているほか、宿泊施設を活用し、サテライトオフィスとして提供する取り組みも行っています。半日・時間単位の「テレハーフ」による出勤調整など、テレワーク推進に向けた企業の取り組みを後押しし、この危機を突破していきます。

 感染拡大防止と事業活動の両立、その切り札のひとつがテレワークだということがよくわかりました。ありがとうございました。

企業のテレワーク導入例

日都産業株式会社
公園遊具の設計・製作・販売、従業員77人

育児中のデザイナーの在宅勤務を皮切りにテレワークを推進。テレワークと出社勤務をローテーション化。営業部門でもモバイル勤務を実施。

株式会社城南村田
真空成形用金型製造、従業員20人

営業職にパソコンを貸与し、出張先で業務を行うモバイル勤務の導入のほか、設計部門でも試行。経営者がテレワークを先導し、できるところから実践している。導入に際し、東京都の支援制度を活用。

損害保険ジャパン株式会社
金融・保険業、従業員2万4689人

訪問・対面が基本の現場でも、オンライン商談などを活用し、テレワークを定着化。取引企業へもテレワーク導入を積極的に働きかけている。グループ10社でいち早く「テレワーク東京ルール」の実践企業を宣言。

テレワークには、社内制度やICT環境の整備を伴うので、トップの決断は重要です。

 実践企業は宣言書を掲示することができる

「東京ルール」宣言企業 都がサポート

「テレワーク東京ルール」実践企業宣言は、テレワークの定着・浸透に向け、東京都が公労使で普及推進に取り組んでいる「テレワーク東京ルール」の5つの戦略(働き方改革、危機管理、ビジネス革新、人材活用、地域振興)を踏まえ、企業が「我が社のテレワークルール」を設定・宣言する制度。宣言企業は、融資利率の優遇や信用保証料を補助する制度融資の特例メニューが利用できる。先進的・モデル的な取り組みは「TOKYOテレワークアワード」として表彰される。申請はウェブサイトから。

テレワークの導入・実践に必要な情報を入手できるほか、セミナー等の申し込みやサテライトオフィス等の検索など、テレワークの推進を支援する東京都公式アプリです。ダウンロードはこちらから

こいけ・ゆりこ

1952年、兵庫県生まれ。76年、カイロ大卒。92年、参議院議員。93年に衆議院議員。2003年、環境大臣に就任以来、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣などを経て、16年7月、東京都知事に当選。現在、2期目。

しま・こうさく

1947年、山口県生まれ。70年に早大卒、初芝電器産業入社。総合宣伝部長などを経て、2002年に取締役。08年に初芝五洋ホールディングス社長。13年テコット代表取締役会長に就任し、現在、相談役。

広告 企画・制作 読売新聞社広告局