対談 働き方の多様性を認める社会を目指して対談 働き方の多様性を認める社会を目指して

明治安田生命 人事部長 片山圭子さん/フリーアナウンサー 竹内由恵さん明治安田生命 人事部長 片山圭子さん/フリーアナウンサー 竹内由恵さん
女性の理想の働き方とは? 個人の人生に企業が寄り添う時代へ

働き方の多様化とともに、ライフステージの変化に合わせて働くことを希望する女性が増えています。明治安田生命保険執行役員人事部長の片山圭子さんとタレントの竹内由恵さんが、働き方をテーマに語り合いました。2児の母で夫婦共働きという共通点を持つ片山さんと竹内さん。仕事への思いをはじめ子育てと両立させるための工夫、さらには個人のライフステージに寄り添う企業の動き、社会の意識の在り方について話が広がりました。

仕事と出産・育児を両立しやすい職場とは?仕事と出産・育児を両立しやすい職場とは?

竹内
明治安田生命で2024年3月現在、社内登用された女性役員は片山さん1名です。ご自身のキャリア形成と家庭、育児をどのように両立されてきたのでしょうか。私は3歳と0歳の子どもがいて今まさに、子育てと仕事が両立できる働き方を模索しています。
片山
子どもたちは現在、中学生になりましたが、私が出産した当時、社内で子育て中の総合職全国型の女性はあまりいませんでした。仕事面では社内でのキャリアが固まってきて、これから管理職になるという段階に入っていました。
竹内
いろいろな仕事を任されていくタイミングで出産されるというのは、キャリア形成の面で葛藤はありませんでしたか?
片山
仕事は楽しい時期でしたが、「子どもがほしい」と思っていたのでうれしかったです。「仕事と育児を両立するために何をしなければいけないのか」を考え、育児休業期間の1年間に、保育園や病児保育、ベビーシッター等をはじめ利用できる育児サポートについて調べ、どのように両立していくかイメージトレーニングをしました。私の場合は、高齢の両親に頼るという選択肢はありませんでした。
竹内
職場復帰後、働き方でどんな工夫をされていましたか?
片山
夕食付きで午後8時まで預かってもらうことのできる保育園を利用していたので、仕事をするうえで、何かあっても保育園のお迎えの時間までは大丈夫という安心感がありました。一方で、お迎えの時間までには必ず帰宅するようにして、自分で仕事をコントロールしてきました。時間の制限があったことで、かえって効率的な働き方ができたように感じています。夫婦の役割分担では、夫が時間をコントロールしやすい仕事だったため、子どもが病気の時も夫婦で連携して病院に連れて行くなどして、子育てというミッションに取り組む「チーム」のように子育てをしました。どうしても都合がつかない場合は病児保育を活用したり、お互いに休みをやりくりして乗り切りました。
竹内
企業で仕事をされていて、出産が不利に働いたと感じたことはありますか?
片山
不利と感じたことはありません。でも、産休期間の人事評価結果に納得できず、当時の人事部に直談判したことがありました。結果としては、その当時は願いが叶わず資格昇格が遅れる悔しい思いはしましたが、今では、産休時の人事評価の考え方は改善されています。産休等で仕事ができない期間は誰しもがあるかもしれませんが、その期間があるかないかでなく、意欲ある職員の頑張りを評価したいと思っています。2024年4月から年功的な要素のある資格制度も廃止し、役割発揮や実績を評価するよう、制度を改正します。今になって振り返ると、「自分がやり遂げないと、次の人が続かない」という気持ちで働き方を模索していました。30代半ばに20数名の営業職員を管理する営業所長となりましたが、その管理職という経験をやり遂げられた思いから、「仕事をずっと続けよう」と思うようになりました。
竹内
人事の評価の考え方が変わってきたのですね。私自身は、アナウンサーの仕事が大好きで活躍したいという思いがありました。テレビ朝日のアナウンサー時代は、お休みの日も職場に行くというスタイルで働いていました。

今、企業で働く個人が求めているもの今、企業で働く個人が求めているもの

片山
テレビで竹内さんの活躍はよく拝見しています。当時はどのような働き方をされていたのでしょうか。
竹内
入社後、音楽番組とサッカーの番組を担当していましたが、それ以外の時間を持て余していたので、「自分から仕事をつくりに行かなければいけない」と危機感を持つようになりました。スポーツが大好きだったのでお休みの日は、試合などの現場に自主的に行くようにしたところ次第に周囲に認めてもらえるようになり、水泳の世界大会のキャスターをはじめスポーツにかかわる番組を多く担当することができました。自分の中で仕事の成功体験になっています。ただ、お休みを返上して頑張った分だけ自分に返ってくるという、時間で解決するという働き方でした。
片山
私も出産前は、時間で解決するという働き方をしていたので、その気持ちがよくわかります。
竹内
今もスポーツの仕事は大好きですが、出産後は、働き方を大きく変えなければいけない状況になりました。夫婦の役割分担は、夫は仕事中心、私は子育てをメインに仕事もするという形にしています。仕事の時間に制限があり、「私がこの時間までに仕事を終えないと子どもを迎えに行く人がだれもいない」という状況です。子育ては楽しく、「仕事で自己実現もしたいけれど、子どもにさみしい思いをさせたくない」という気持ちが強いですね。片山さんは、ご自身の中で子育てと仕事をどのように線引きされていましたか?
片山
今も線引きはできていません。子どもたちがそれぞれ4歳と2歳くらいの時期が一番、仕事との両立で悩んでいました。それでも、子どもたちには「お仕事でさみしい思いをさせてごめんね」と謝ることはせずに、「お仕事、頑張ってくるね」と言っていました。子どもたちが大きくなるにつれて、「お母さんは働いている人」という認識ができ上がり、「お母さんも仕事を頑張っているから私も頑張る」と言ってくれるようになりました。子育てで働く時間に制約があって納得のいく仕事ができていなくても、仕事を続けていくなかで、再び思いきり仕事ができるタイミングまで力を蓄えておけばいいと思います。
竹内
周囲のサポートがあれば、仕事と子育ての両立がとても大変な時期も乗り越えることができるような気がしてきました。今、企業で働く人たちは、企業にどんなことを求めていると感じていますか?
片山
働き方も働く人の意識も大きく変わってきていると感じています。共働きが当たり前の時代で、女性の社会進出や人生100年時代をきっかけにマルチステージの働き方が広がっています。一方で、大変な仕事をやり遂げることで初めて乗り越えられる壁があり、その経験が個人の成長につながります。だれもが懸命に仕事をしないと成長できない時期があると考えています。では、そのタイミングがいつなのか。一人ひとり異なります。企業としては、一人ひとりの状況、ライフステージに寄り添うことが求められていると思っています。
竹内
企業側としては、働く人の意識の変化をどのようにとらえていますか。
片山
多様な人が働く組織の中で、それぞれが自分に合った働き方を選択できることで、いきいきと働き、成果を出し続けるという好循環が生まれるという考え方を大切にしています。「DE&I」と呼ばれるダイバーシティ(多様性)とエクイティ(公正性)、インクルージョン(包括性)です。一律・画一的な支援ではなく、一人ひとりの状況に応じて公平な機会を提供していきます。
竹内
私はフリーランスで、その時々の状況で自分に合った働き方を選択しています。企業での働き方も大きく変わってきていますね。

「人生マルチステージ時代」の働き方とは?「人生マルチステージ時代」の働き方とは?

片山
女性の場合、たとえば20代で出産した後、子どもが手を離れてくる40代以降でも、定年まで20年ほどあります。子育てから仕事の比重を高めることを選択できる期間は、実は長いということを伝えたいです。明治安田生命の従業員の9割が女性です。女性の力なしでは成長できないと考えていて、女性の管理職登用にも力を入れています。4月には女性役員も、もう1名増える予定です。登用にむけては階層別の育成プログラムを展開し、管理職候補者を約1,100人登録しています。昔と比べて、管理職登用に前向きな女性職員も増えています。
竹内
女性だけでなく、男性の意識の変化をどのように感じていますか。
片山
男性は配偶者のキャリアを大事にするとともに、自分も育児に参加したいと思っている人の割合が増えていると感じます。男性育児休職については、直近3年間の取得率が100%に達しています。計画的に取得するため、配偶者の妊娠がわかったら、育児休職の計画書も提出してもらっています。女性は産前休暇がありますが、男性も「産前パパ育休」として、子どもが生まれる前に取得できる休暇制度をつくりました。配偶者の病院に付き添うなど、父親としての準備時間を持てるようにしています。
竹内
出産前は、自分のために使える時間がたくさんありました。今は子育てに仕事と毎日することがたくさんありますが、幸せ度が高いですね。仕事だけではなく、いろいろな居場所があるため精神的にとてもいい状態を維持できています。
片山
長い人生の中で、育児をする期間もあるし勉強をする期間もあります。配偶者が海外に転勤することもあります。まさにマルチステージの時代です。当社では、配偶者の海外転勤に帯同する場合や、大学などで勉強をしたいという場合に、一定期間休職できる「マルチステージ休職制度」を用意しました。会社の外の経験も個人の成長につながりますし、安心して戻れる環境を用意しています。
竹内
多様な働き方ができるような支援制度が充実していますね。仕事をしたいけれどできなかったという人の思いをくみとろうとする企業としての姿勢を感じます。
片山
一人ひとりの意欲・頑張りを後押ししたいと考えています。例えば、全国各地の支社で勤務している人のキャリアの幅を広げるため、本社の仕事を経験できる「キャリアチャレンジ制度」や、本社が所在する東京以外にいながら、リモートで本社の仕事ができる「リモート型勤務」もあります。働く場所によってキャリアをあきらめることがないようにしています。
竹内
私は夫の仕事の都合で現在、静岡で暮らしていて週に3日ほど東京で仕事をしています。地方にいながら東京勤務と同じ仕事ができるという制度も魅力的ですね。片山さんのお話を聞いて、企業が個人の人生について、こんなにも考えてくれているということがよく分かりました。会社が個人の生き方に寄り添っている、寄り添うことを考えてくれる時代になったのですね。将来的には、こうした支援体制が整っている企業が増えていくと、女性がもっと仕事と子育てを両立しやすくなると思いました。
片山
目に見える商品や工場を持たない生命保険会社にとって、人こそがすべてであり、「人材」を当社の「たから」として「人財」と表現しています。人はそれぞれ価値観が違います。人生におけるライフステージの変化の時期、仕事に集中したい時期もバラバラで、その時々に重要視することも違います。人生は選択の連続ですが、その時々の選択に会社がサポートできることは、できるかぎりサポートできればと思っています。長い期間、自分らしく働いてもらうためにどうすればいいかを考えながら、一人ひとりがいきいきと活躍することを応援していきます。
竹内
片山さんは2児の母として仕事を続けて結果を出されています。私も子どもたちが大きくなった時に、「ママも頑張って仕事をしているね」と感じてもらえるように仕事を続けていきたいです。子どもたちから働き方や生き方についての相談も受けることができたらいいなと思っています。

PROFILE

竹内由恵

たけうち・よしえ
2008年テレビ朝日アナウンス部入社。2019年結婚を機に退社し静岡へ。現在はタレントとして活躍中。

片山圭子

かたやま・けいこ
1991年明治安田生命総合職入社。2022年、執行役員人事部長に就任。

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