自分らしく生きるために
背中を押してくれるものとは
消費動向を占う上で近年注目されている「Z世代」。2000年前後に生まれた若者たちを指し、物心ついた時からスマートフォンがあり、デジタルネイティブなのが特徴で「流動的なアイデンティティを持つグローバル市民」「既存のルールにとらわれない人々」「テックネイティブ」とも言われている。彼らが今、社会の第一線に踏み出し始めている。もっとも、情報入手に長けている世代だが、中には選択肢の多さに翻弄され、自己表現に悩むこともあるようだ。
「自分らしく生きたいけれど、どうしたら良いのかわからない」—そんな人も多いのではないだろうか。様々な情報があふれる現代では、InstagramなどのSNSで周囲と自身を比べ、華やかな写真を見て落ち込むことがあるかもしれない。そのような中で自分らしさを見失い、人生の道に迷って立ち止まってしまうこともあるだろう。誰かに助言を求めたり、自ら行動を起こすことで、自分とは何か、を探すことも必要だ。それらのヒントを得るための手段としてお勧めしたいのが、実話をもとにした映画であり、そこに登場する人物の言葉や行動が、そっと背中を押してくれるかもしれない。特に若い世代に見てもらいたい映画を2本紹介したい。ルールにとらわれない生き方をしている登場人物の軌跡のうちに、Z世代にとっても有益なヒントが見つかるかもしれない。
「ハリエット」(2019年、ケイシー・レモンズ監督)
ハリエット・タブマンというアメリカの女性を知っているだろうか。実は2020年に発行予定だった新20ドル札の肖像にアフリカ系アメリカ人として初めて決まっていた女性のことだ。トランプ政権になって、この新札計画自体が宙に浮いた形となったが、民主党のバイデン政権に交代すると再び計画が持ち上がるのではないだろうか。
1820年か21年にアメリカ・メリーランド州で生まれたハリエットは、数多くの黒人奴隷を解放したことから、アメリカでは「女モーゼ」「黒人のモーゼ」とも呼ばれている。
この映画でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシンシア・エリヴォがハリエットを演じている。家族と切り離されて売られることになった奴隷時代のハリエット。農場から脱走することを決意する。追手が迫り、川にかかる橋に追い込まれた彼女は「自由か、死ぬか、どちらかよ」と言って川に飛び込み、命からがら逃げ出した。やがて黒人奴隷解放グループの指導者のひとりとして、計約300人もの奴隷を南部から北部へと連れ出して、助けることに成功した。奴隷のころは虐待を受け、おどおどして生きていた彼女が、次第に強く、たくましく成長する姿が説得力ある映像で描かれている。その成長物語は、まだ未来を決められない若い世代にも大いに参考になるだろう。
『ハリエット』
DVD:3,618円(税別)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」(2020年、グレタ・ガーウィグ監督)
ルイーザ・メイ・オルコットのベストセラー小説「若草物語」。この映画は、オルコットの半自伝的小説である原作を、「若草物語」誕生秘話といった感じで描いている。
時はアメリカ南北戦争の時代。しっかり者の長女メグ、作家志望の二女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこい末っ子のエイミー。力強く生きる4姉妹が織りなす物語が、さわやかにつづられている。シアーシャ・ローナンが、作家になりたい夢を一途に追い続けるジョーを表情豊かに演じている。
今では考えられないことだが、原作者が生きた1800年代半ばのアメリカは男中心の社会で、女性は良い伴侶と結婚して家庭に入ることが一番の幸せとされていた。その時代にジョーは、愛する人からのプロポーズに対して、「私は結婚できない。あなたはいつかきっともっと素敵な人と出会う」と断った。結婚よりも作家になる夢を実現することこそが自分の幸せと信じ、独りでニューヨークへ旅立つのだ。信念を曲げず、夢をあきらめないジョーの姿は、夢を胸に秘めた若い人たちに希望を与えてくれそうだ。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
ブルーレイ&DVDセット:4,743円(税別)
発売・販売元:
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
「ハリエット」と「ストーリー・オブ・マイライフ」は19世紀アメリカの物語。前者は人種的に、後者は性別的に差別を受けていた人が、自分の意志で立ち上がり、やがて新しい時代を切り開いていく。共に200年近く昔の話だが、その行動力は現代にも通じるものがある。今の若い世代にも共感を持って見てもらえることだろう。
(筆者・福永聖二 YOMIURI BRAND STUDIO Creative Editor/Writer 編集委員などとして、読売新聞で20年以上にわたって映画を担当、7000本以上の映画を見てきた)映画で描かれている登場人物の共通点は、それぞれが抱える障壁を乗り越えて、自分らしさを発揮したことではないだろうか。ありのままの自分をもう一度見つめ直し、現実と向き合う、そのような態度が求められているのかもしれない。
そしてルールにとらわれない発想や考えを持つことも大切だ。カネボウ化粧品のコスメブランド「KATE」によるZ世代に向けた情報発信も注目を集めている。12月22日には「自己表現に悩みを抱えるZ世代」へ向け、Webマガジン「#nomorerules.」をローンチ。ブランドのスローガンである「NO MORE RULES.」を体現するミュージシャンやモデルといった著名人にフォーカスし、その生き様やスタンスなどに迫るインタビュー記事を連載する。そこでは現在の自分らしさに至った苦悩や経験など、これまで語られていない彼らの想いが語られている。Z世代から支持される表現者たちをフィーチャーした記事には「なりたい自分を見つけてほしい」というメッセージが込められ、Z世代向けの自己表現を後押しする情報がぎっしりと詰まっている。インタビューからは、デジタル時代に生きながらも、SNSだけではなく、音楽、ファッションなどで自分らしさを表現することを怖がらずに楽しんでいることが伝わり勇気をもらえる。第一回は、吉井添さん、中山咲月さんのモデル二人。「NO MORE RULES.」をテーマに、ご自身が考える自分らしさについて迫るインタビューになっている。
自分がどうなりたいかわからない、どう表現したらいいかわからないと悩んでいる人にこちらもぜひ見てほしい。同じ時代に生きる彼らのメッセージからきっと将来のヒントが見つかるはずだ。
吉井 添さん
中山 咲月さん
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