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協力:ジンマー・バイオメット合同会社
膝の痛みに再生医療という新たな選択肢 膝の痛みに再生医療という新たな選択肢

中高年世代のつらい膝の痛み、多くは変形性膝関節症によるものです。ヒアルロン酸や消炎鎮痛剤による治療は対症療法で、根本的に治すには人工関節置換術などの手術療法が必要です。そうしたなかで近年注目されているのが「再生医療(細胞治療)」による膝痛の改善。継続的な効果に対する可能性も高まっているなかで、外来診療で簡単に受けられるPRP 療法・APS 療法について、2人の専門家にお話を伺いました。

身近な場所ですぐに受けられる膝痛の再生医療

「コロナ膝」からメタボやロコモに

コロナ禍で外出を控えざるを得なくなり、運動不足による体重増加に伴って膝が痛む、いわゆる「コロナ膝」の人が増えています。肥満は、生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、骨や筋肉が弱くなり寝たきりのリスクが高まるロコモの発症にも関係しているというデータもあります。膝が痛いからとじっとして動かないでいると、全身の健康にも深刻な悪影響を及ぼしてしまいます。

東海大学医学部整形外科学 教授
佐藤 正人先生

膝の痛み(変形性膝関節症)に対する再生医療

中高年世代の膝の痛みの原因として圧倒的に多いのが変形性膝関節症です。患者数は2,530万人、そのうち痛みがある人は800万人ともいわれる中で、再生医療による治療も登場しています。保険外の自費診療では、ポイントオブケア(外来ですぐに受けられる治療)として、患者さん自身の血液成分を活用し、痛みの改善や組織修復を目指すPRP(多血小板血漿※1)療法・APS(自己タンパク質溶液※2)療法が、すでに多くの施設で行われています。そのほか整形外科の再生医療として、変形性膝関節症のすり減った軟骨に手術で細胞シートを貼って修復する治療が先進医療制度(一部自費)のもとで始まっています。一方、ケガによる軟骨損傷に対する自家培養軟骨移植術、幹細胞による脊髄損傷の治療については保険診療で行われています。

強い炎症、膝に水が溜まる場合はAPS療法

膝の痛みに対して、身近な場所ですぐに受けられる再生医療として、PRP療法・APS療法ついて説明します。PRP療法は、血小板の成長因子が持つ組織修復能力を活用して症状の緩和を目指します。一方のAPS療法は、PRPにさらに特別な加工を行い、成長因子だけでなく高濃度の抗炎症成分を抽出するためPRPよりも高い抗炎症効果が期待できる治療法です。国内の研究※3では、APS療法の投与成分には、強い抗炎症効果に加えて、生きた免疫細胞の一種(マクロファージ)に抗炎症効果を長く持続させるような働きがあることが分かり、実際に一回の施術で一年以上症状が軽快して、安定している患者さんもいます。現在のところ、PRP療法とAPS療法を使い分けるガイドライン等はありませんが、強い炎症による痛みや膝に水がたまりやすい場合は、APS療法のほうが向いていると言えます。

ヒアルロン酸注射と手術の間をつなぐ新たな治療の選択肢

PRP療法・APS療法は、運動療法や薬物療法、ヒアルロン酸やステロイド注射などの保存療法では痛みが改善せず、かといって手術にはまだ踏み切れないというときに試してみてもよい治療の選択肢だと思います。あるいは、コロナの感染リスクや多忙を理由に整形外科への通院がままならない人が、長期間の除痛効果を期待して受けるのもいいと思います。ただし、PRP療法・APS療法は、再生医療といっても万能ではありません。最近ではあたかも万能なように期待をさせる文言も見かけますが、それは言い過ぎです。

保険外の自費診療ということもあるので、PRP療法・APS療法を受けても思ったような効果が得られなかったら手術を考えてみることも大切です。また、膝がちょっと痛いかなと思うくらいでも整形外科で適切な検査を受けて、診断をつけてもらうと良いと思います。

  • ※1 PRP:Platelet Rich Plasma=多血小板血漿
  • ※2 APS:Autologous Protein Solution=自己タンパク質溶液
  • ※3 東海大学医学部 整形外科 研究データ

過度な期待は禁物であり、手術を含めた幅広い選択肢が必要

変形性膝関節症で手術を検討する前に

多くの人が抱える、変形性膝関節症による膝痛の悩み。運動療法や痛み止めの服用、ヒアルロン酸注射などを続けても効果が得られず、迷いながら人工関節などの手術を検討する人は少なくありません。近年、保存療法と手術の間をつなぐ新たな治療選択肢となっているのが、APS(自己タンパク質溶液)療法です。APS療法は、患者さん自身の血液に含まれる血小板の組織修復力を活かした、体への負担が小さい再生医療のひとつです。合併症があり手術のリスクが大きい、まだ若いので人工関節にするのは避けたい、介護中で入院を伴う手術が受けられないなど、それぞれの事情を抱えた患者さんがこの治療法を選択しています。

船橋整形外科
みらいクリニック 院長
小倉 誉大先生

安全性が高く、日帰りで治療できるAPS療法

APS療法では、患者さんの血液を55cc採血し、遠心分離機にかけ自己たんぱく質溶液を採り出し、関節内に注射で投与します。自分の血液を使用するためにアレルギー反応などが起きず安全性が高いこと、日帰りですぐに治療できることなどがメリットです。治療後、一時的に痛みや腫れなどの副反応が起きる場合がありますが、1~2日で落ち着きます。成人であれば年齢制限はありません。関節リウマチや悪性腫瘍で治療中の人は適応外となります。

まだ新しい治療法のため十分なデータの蓄積は今後の課題といえますが、変形性膝関節症の進行が軽度なうちに受ける方が効果を得られやすい傾向にあります。早期〜進行期では70~75%、末期では50%程度の人で痛みの軽快が見られます。

手術とAPS療法を組み合わせた治療の可能性

手軽さや高い安全性から注目が集まるものの、APS療法は失った軟骨を取り戻す治療ではなく、あくまで炎症を抑えて痛みを和らげるものである点は注意が必要です。期待した効果を得られない人が一定割合でいるほか、効果持続期間にも個人差があるのが現状です。過度な期待は禁物であり、手術を含めた幅広い選択肢を理解した上で治療に進むことが大切です。

O脚が強い人であれば、膝にかかる荷重バランスを調整する骨切り術を行い、その上でAPS療法を受けることも考えられます。または、傷んだ半月板を取り除いて関節内をそうじする関節鏡視下手術とAPS療法との組み合わせも、変形性膝関節症の進行をコントロールする上で有効でしょう。

再生医療を膝への負担を減らす好循環のきっかけに

今まで膝痛のために思うような生活が送れなかった人が、APS療法によって痛みが軽減されたことで、活動量を高めていく例は当院でも少なくありません。動くことで減量が進みますし、痛みがなければ膝周囲の筋力トレーニングにも取り組みやすく、関節への負担を減らす好循環のきっかけとなり得ます。「趣味を再開でき、生活が豊かになった」「自分の人生に前向きになれた」などの声が患者さんからはしばしば聞かれ、膝という体の一部分の治療ではあっても、患者さんの暮らし全体に与える影響の大きさを実感します。再生医療を含め、変形性膝関節症の治療選択肢は広がっていますので、膝関節の専門医との相談のもと、ご自身に合った方法を選んでほしいと思います。