オンラインセミナー巨大地震に備える~東日本大震災から10年~

2021年3月27日

 2011年に発生した東日本大震災から10年。3月2日、その振り返りと今後起こり得る巨大地震への備えをテーマにした、生活者向けオンラインセミナーが開催されました。当日は、2020年度地震保険広報キャラクターを務める俳優の中尾明慶さん・女優の仲里依紗さん夫妻をゲストに迎え、震災経験者の講演と、防災啓発に取り組む方々によるパネルディスカッションを実施。財務省の新川浩嗣氏、金融庁の栗田照久氏による来賓挨拶(あいさつ)も行われました。

主催:
一般社団法人日本損害保険協会
共催:
読売新聞社
後援:
財務省、金融庁、一般社団法人外国損害保険協会、一般社団法人日本損害保険代理業協会

来賓挨拶

新川 浩嗣氏

財務省総括審議官
新川 浩嗣氏

栗田 照久氏

金融庁監督局長
栗田 照久氏

セミナー動画 全編

講演1 被災地から未災地へ 防災から未来を見つめる

震災の記憶を風化させないために

雁部 那由多氏

東北学院大学教養学部地域構想学科、「16歳の語り部」著者、防災士
雁部 那由多氏
1999年生まれ。宮城県にて小学5年生の時に東日本大震災を経験。現在、災害社会学を学ぶ傍ら各地で語り部活動を行う。

 東日本大震災が起きたのは11歳の時でした。あの日、私は大人5人が津波にのみ込まれるさまを目撃し、その後ずっと彼らを見殺しにしたという思いにさいなまれました。今、災害社会学を学んでいるのも、この「命を救えなかった」という感覚が原動力になっています。

 被災前の私は、震災といえば阪神淡路大震災で倒れた高速道路の写真を思い浮かべていました。そこには人の顔は写っていません。しかし、実際に経験して最もつらかったのは人の顔から表情が消えたことでした。人が写っていない震災写真は、真に見なくてはいけないものを見えなくしていると感じます。

 震災で何が奪われるのか、一番つらいことは何か。私はそうした経験者の声を社会に反映したいという思いから、今「人と向き合う災害社会学」を目指しています。

 あれから10年が経(た)ち、地域には震災を知らない世代も増えてきました。被災地は、その体験が風化してしまえば、未(いま)だ災害が来ていない「未災地」に戻ってしまいます。私が語り部をしているのは、それを防ぐためでもあります。

 震災の真の姿を知る上で最も大事なのは、被災した人々がその後をどう生き抜いたかという「人生の物語」ではないでしょうか。これは人が語り継がなければ残りません。学校の防災教育の中で語る、一人一人が聞いたことを周囲に語る。そうして次代に伝え、震災の本当の姿を知らない「未災地」をなくしていくことが、未来の防災につながると思います。

講演2 あの日を忘れない 〜前を向き共に歩む〜

被災して得た気づきと使命感

榊原 昌宏氏

株式会社谷地保険事務所代表取締役
榊原 昌宏氏
岩手県陸前高田市出身。1989年、保険の個人代理店に就職。創業者の死や東日本大震災の被害を乗り越え、2011年から現職。

 私は、岩手県大船渡市で保険代理店に勤めていた時に東日本大震災を経験しました。10mを超える津波が押し寄せましたが、社員と高台に避難し何とかことなきを得ました。しかし、陸前高田市にいた高校生の姪(めい)は行方不明となり、ようやく会えたのは3週間後、遺体安置所でのことでした。

 発災後、私は被災地の保険代理店として迅速に保険金をお支払いしなければと、社員や全国から駆けつけてくれた応援社員と共に、必死で対応に当たりました。被災地を歩き回って損害調査をし、「保険証券が流されてしまった」などのお客様の不安を取り除くため、ご説明をしながら、ほぼ2か月弱で何とか33億円のお支払いを完了できました。

 しかし、社員の一人は、地震保険に未加入だったお客様に保険金をお支払いできなかったことをずっと悔やみ続けていました。私たちは本当に加入を正しくお勧めすることができていたのか、保険代理店の存在意義や使命は何か。震災は、私たちに新たな気づきをもたらしたものでもあったと思います。

 震災後、私は社員たちと、この災害の記憶を未来への財産として後世に伝えていこう、そして「保険人(ほけんびと)」としてずっとお客様をお守りしていこうと誓い合いました。保険は、人の幸せを願う気持ちの表れでもあります。私たちの仕事はそうした思いを支え、他者を大切にしたいという優しさを形にすることです。今後も、地域の保険代理店として精いっぱい力を尽くしていきます。

パネルディスカッション 巨大地震に備えて 〜我々はどう向き合うか〜

自助共助公助 取り組みの今

中尾 明慶氏

俳優
中尾 明慶氏
1988年生まれ、東京都出身。 2001年「3年B組金八先生」でデビューし俳優として活躍。最近の出演作に、連続ドラマ「監察医 朝顔」「天国と地獄」など。


仲 里依紗氏

女優
仲 里依紗氏
1989年生まれ、長崎県出身。ドラマや映画に出演するほか、ファッション誌ではモデルとして活躍。4月23日には「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」が公開予定。


武田 真一氏

宮城教育大学 特任教授
武田 真一氏
東日本大震災時、河北新報社報道部長。震災伝承や防災啓発に取り組み、定年退職を機に現職に。震災伝承連携組織の共同代表も務める。

――皆さんの、地震への備えに対する取り組みをご紹介ください。

武田 東日本大震災後、私は震災の伝承や防災啓発への取り組みを始めました。現在も、皆さんに震災の教訓を今後の備えにつなげていただくため、教育機関や伝承組織において活動を続けています。

中尾(晃) 日本では今後、南海トラフ巨大地震や首都直下地震が懸念されています。災害予防には国による公助だけでなく、各人による自助や地域での共助も重要です。そうした意識の向上に向け、私たちも普及啓発活動に取り組んでいます。

かもん 防災講座「防災ママカフェ®」は、東日本大震災を機に「子どもの命を守れるママになろう」を合言葉に活動を始めました。皆が防災を自分ごと化できるよう取り組んでおり、自主防災ママ組織を結成したり、防災士資格を取ったりする受講者も増えています。

私も一児の母なのですが、子どもに地震のことをどう伝えたらいいか悩んでいます。

かもん 何も知らない状態で地震にあうと、子どもは大きなショックを受けてしまいます。まずは、地震はただ怖いものではなく、「毎日当たり前に起きる自然の現象」であることを教えてあげてほしいですね。損保協会さんのサイトには、居住地や調べたい地域の地震リスクが簡単にわかる「地震10秒診断」や親子で学べるツールなどがあるので、普段から親子で学んでほしいです。

広瀬 損保協会はそうした情報の提供を含め、地震への経済的備えにつながる地震保険の普及啓発に取り組んでいます。また、より損害の実態に即した保険金支払いを実現すべく、地震保険制度を改定するなど、皆様のお役に立てるよう努めています。

中尾(晃) 被災後の生活再建に対しては国の支援制度もありますが、各自で地震保険に加入するなどの自助も重要です。国としても周知に取り組んでいるところです。

連携とつながりが防災の力に

中尾 晃史氏

内閣府政策統括官 (防災担当)付参事官 (普及啓発・連携担当)
中尾 晃史氏
1996年建設省入省。国土庁や復興庁にて被災者の生活再建や地域の復旧・復興等の政策を担当。他にも地方創生など幅広い分野に携わる。

――防災に取り組んでいる方々の連携について、考えをお聞かせください。

中尾(晃) 災害に備えるには、異なる組織間の連携が欠かせません。国が主催する「ぼうさいこくたい(防災推進国民大会)」は産学官民の防災の担い手が連携して行っています。自助・共助・公助をつなげることが、我が国の防災力を高めるカギだと思います。

武田 同感です。メディアも、伝承や啓発に大きな影響力を持ちますから、業界をあげての協働が望まれます。産学官民メディアが連携して働きかける、その訴えに触れた人たちが次代へ教訓をつなぎ備えを共有する。今後はそうした意識が求められると思います。

中尾(明) 日本は地震が多い国ですが、その分、蓄積された教訓を備えに生かすことができるはず。僕たちも、子どもたち世代にしっかり語り継いでいきたいと思います。

命と生活を守るための備えを

かもん まゆ氏

一般社団法人スマートサプライビジョン特別講師、防災ママカフェ®主宰
かもん まゆ氏
被災地のリアルと生き残るための知恵を、育児中のママたちに分かりやすく伝える防災講座「防災ママカフェ®」を全国300ヶ所以上で展開。


広瀬 伸一氏

一般社団法人日本損害保険協会会長
広瀬 伸一
1982年、東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)入社。2020年より現職。自然災害時の保険金の迅速な支払いに向けた取り組み等を推進。


笠間 亜紀子氏

読売新聞 くらし×防災メディア 「防災ニッポン」編集長
笠間 亜紀子

――今後のために、私たちはどのように備えればいいでしょうか。

武田 被災者は異口同音に「備えていればよかった」という後悔を口にします。これをなくすには、まず各人が災害の厳しさや残酷さを直視し、自分に起こり得る被害について現実感をもって見つめ直さなければなりません。10年前の震災を教訓にして備えれば、回避できる被害も多いはずです。

中尾(晃) 災害が起こり得るのはわかっているが、自分は大丈夫だろうと思ってしまう心の動きを「正常性バイアス」と言います。これを克服するためにも、防災への取り組みは大切な人を守り安心させるため、愛する郷土を末長く続かせるためと考えていただきたい。防災は心の取り組みでもあるのです。

かもん 私は備えの大切さを「備災」という言葉で伝えています。地震を知り、それに対する自分たちの力を把握し、足りない部分を防災グッズなどの準備で補う。この順番で、ぜひ今から備えを始めてほしいですね。

広瀬 その意味では、被災後の生活再建に向けた経済的な備えも重要です。そうした手立ての一つとして、地震保険への加入も併せてご検討いただきたいと思います。

中尾(明) 自然災害が起こった時自分や家族の命をどう守るか、その後の生活をどう再建するか。今日のお話を聞いて、あらためてそこをしっかり見つめ直さなければと思いました。

命を守るための備えはもちろん、地震保険などの備えも重要なのですね。身近なところから意識を共有するために、我が家でもさっそく家族会議をしようと思います。

──セミナーをお聞きの皆さんも、今日感じたことを大切な人に伝え、心をつなげるところから始めてみてはいかがでしょうか。それが次の災害への備えにつながるのではないかと思います。

ディスカッション

パネルディスカッションの様子

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