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世界口腔保健学術大会記念[第29回]口腔保健シンポジウム/命を守るオーラルケア~いざという時のために、今、できること~

世界口腔保健学術大会記念[第29回]口腔保健シンポジウム/命を守るオーラルケア~いざという時のために、今、できること~

口腔の健康状態が、フレイル(心身の虚弱)や疾病の発症、重症化に深く関わっていることが分かり、オーラルケアの重要性に注目が集まっています。また、誰もが災害等で非日常の生活を強いられる可能性がある今、オーラルケアにも日頃からの備えが必要です。本シンポジウムでは、毎日のケアの重要性とその方法について、有識者による講演とトークセッションを通じて紹介されました。

基調講演 「口腔健康管理」のチカラ 生きる 食べる 話す を考える 基調講演 「口腔健康管理」のチカラ 生きる 食べる 話す を考える

  • 日本歯科大学東京短期大学 学長
    日本歯科大学附属病院口腔外科 教授
    日本歯科医学会 副会長
  • 小林 隆太郎
  • (こばやし・りゅうたろう)1984年、日本歯科大学歯学部卒業後、同大学院歯学研究科博士課程修了。専門は口腔外科。2001年、日本歯科大学歯学部附属病院顎変形症診療センター長、10年、同口腔外科教授。19年、日本歯科医学会総務理事、日本歯科医学会連合専務理事。講演等を通じ、口腔健康管理による国民の健康増進を啓蒙し、歯科医学界の発展に尽力している。

生きる力に関わる口腔の健康管理

近年、歯周病などの口の病気が、糖尿病、心臓病、骨粗しょう症、脳梗塞、認知症、誤嚥性肺炎といった、さまざまな全身疾患と深く関わっていることが分かってきました。各医学会の診療ガイドラインでも、口の病気と疾病との関連性が多くのエビデンスとともに紹介され、疾病予防として口腔の健康管理が非常に重要だと指摘しています。平成30年(2018年)には、健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病、その他の循環器病に係る対策に関する基本法にも、歯科医療の重要性が盛り込まれました。口は「命の入り口」であり、歯科は生きる力に寄与する医療です。

治療中心から維持管理の歯科医療へ

口腔健康管理には三つあります。一つは、私ども歯科医療従事者が行う治療や機能訓練などの「口腔機能管理」。二つめが、主に歯科衛生士さんが行う口の清掃等の「口腔衛生管理」、三つめが日々の歯みがきなど、ご本人や介護職、看護職等が行う「口腔ケア」です。
歯科医師が行う「口腔機能管理」は、むし歯や抜歯、補綴など歯の形態の回復を目的とする治療だけでなく、乳幼児期・学齢期から成人期を経て高齢期にいたるまで、各ライフステージに応じて、歯を含む口腔機能全体の維持・向上に向けた治療と管理が進められています。つまり、常に適切な口腔機能を獲得するために、歯科が介入し、切れ目のないライフコースとして口腔機能の管理を推進していくことが大切なのです。

口腔機能を維持し、しっかり食べる

健康寿命延伸のための「口腔健康管理」を考えるとき、着目したいのがオーラルフレイルと誤嚥性肺炎です。オーラルフレイルとは、口の虚弱という意味で、老化に伴うさまざまな口腔機能、口腔衛生の低下をいいます。滑舌の低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品の増加、口の乾燥といった口の衰えを放置すると、食べる量が減り、低栄養となって心身の機能低下につながります。人の体は食によって作られます。身体のフレイルに大きく関わるオーラルフレイルは、早めに気づき、対処することが重要です。
次に誤嚥性肺炎ですが、これは嚥下機能の低下などにより飲食物や唾液が、歯周病菌などの口内細菌とともに気管に入り、発症する肺炎です。高齢者の肺炎では最も多く、50代から発症率が高まります。誤嚥性肺炎を予防するには、誤嚥を防ぐための食べる姿勢や食べる習慣を良くすることも大切で、日本歯科医師会のホームページで詳しく紹介していますのでぜひ参考にしてください。そして、口腔内の衛生を保つことによる不顕性誤嚥への対策も重要となります。

口腔から全身の健康のサポートを

歯科は、歯だけを治療するところという誤ったイメージが定着してきましたが、目指すのは国民のトータルな健康に心を砕く歯科医療です。楽しく食事をして、楽しく話をする。その力を守るために「口腔健康管理」はとても大切です。毎日のセルフケアと定期的な歯科受診によるプロフェッショナルケアで、お口の健康を守っていただければと思います。

特別講演 日常から“非日常の準備をする”ことの重要性 阪神・淡路大震災からの学びと能登半島地震での避難生活における口腔ケアの現状 特別講演 日常から“非日常の準備をする”ことの重要性 阪神・淡路大震災からの学びと能登半島地震での避難生活における口腔ケアの現状

  • 医療法人社団関田会ときわ病院
    歯科口腔外科 部長
    神戸市健康局歯科専門役
  • 足立 了平
  • (あだち・りょうへい)1978年、大阪歯科大学卒業。神戸市立中央病院、西市民病院勤務を経て、2008年より神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科教授に就任。19年より現職。1995年の阪神淡路大震災での被災と支援活動の経験をもとに、「災害時肺炎」をはじめとする災害関連死予防のための歯科保健の重要性を発信し続けている。

健康被害の最小化が減災・縮災に

勤務していた神戸の病院で、阪神・淡路大震災を経験しました。災害とは、異常な自然現象によって生じる人命や社会的活動の被害を指します。被害や損失を受ける者がいなければ、災害とはいいません。したがって、私は健康被害を少なくすることが、減災・縮災につながると考えています。
災害死には直接死と関連死があります。関連死は、負傷の悪化や避難生活における心身の負担など、災害の起因性が認められる間接的な死亡のことです。それは、普段のように医療体制が整っていれば救えた可能性のある死亡ということであり、その予防は私たち医療者の最大の使命だと思っています。

高齢者に多い「災害時肺炎」

関連死は、災害で受ける大きなストレスにより血液が固まりやすくなる、いつもの食事療法や運動療法、服薬ができず基礎疾患が増悪するといったメカニズムによって引き起こされます。事実、災害関連死の調査では、死因の上位に心筋梗塞や脳卒中といった血栓形成性疾患が入っています。ですが、それらを上回り最も多いのが肺炎です。被災地の複数の病院の調査でも、震災のあった年は突出して肺炎死亡者が増加していて、その約9割を高齢者が占めています。私は、これを「災害時肺炎」と呼んでいますが、特に注目したいのが誤嚥性肺炎です。

オーラルケアが非常時の命を守る

誤嚥性肺炎は、口腔内が汚れているほど、そして抵抗力が減弱しているほど、かかりやすくなります。避難所の環境を振り返ると、極端な水不足で口腔ケアを怠りがちです。多くの方が義歯も入れっぱなしでしょう。福祉避難所に入所できても、人手不足で口腔ケアは後回し。さらに、入れ歯をなくしたり、不具合があったりすると、食事がうまくできず、栄養状態が低下します。避難所ではあまり動かないので、体力や筋力が低下し、飲み込みも悪くなります。
2004年に新潟県中越地震が起きたとき、神戸の震災経験から、新潟の歯科医療関係者に全避難所で口腔ケアを徹底してほしいと伝えました。2000年の介護保険法の施行により、医療と福祉が連携しやすくなったこともあり、災害時肺炎による死亡率は顕著に低減しました。「高齢者のオーラルケアは命を守る」ということを、ぜひ知っていただきたいと思っています。

平時から災害に強い口を作る

肺炎は、口の中の細菌の数と強さが免疫力や体力、栄養状態よりも上回ったときに感染します。災害時肺炎を予防するには、平時から災害に強い体と口を作っておくことです。口腔内細菌を減らし、口腔機能を維持すること。そして、フレイル(虚弱)にならないよう、普段からしっかり食べて動いて、体力維持に努めること。また、口腔機能の維持のためには、定期的な歯科受診も重要です。
災害は必ず起きます。私たちに地震を止める力はありませんが、被害を軽減することはできます。どうか皆さんも口のケアを軽視することなく、普段から災害に備えて、非日常を意識した日常を送っていただきたいと考えています。

トークセッション 命を守るお口の健康のために、毎日できる口腔ケアと非日常への備え トークセッション 命を守るお口の健康のために、毎日できる口腔ケアと非日常への備え

  • 医療法人社団関田会ときわ病院
    歯科口腔外科 部長
    神戸市健康局歯科専門役
    足立 了平
  • 一般財団法人 サンスター財団
    歯科衛生士
    市川 洋子
    (いちかわ・ようこ)
  • キャスター/ジャーナリスト
    総合司会
    長野 智子
    (ながの・ともこ)
  • 神戸学院大学
    「防災女子」
    安福 瑞希さん
    (やすふく・みずき)
  • 神戸学院大学
    「防災女子」
    真田 有希
    (さなだ・ゆき)
  • 神戸学院大学

    「防災女子」

  • 神戸学院大学現代社会学部社会防災学科で防災を専門に学ぶ女子学生たちによって、2014年6月に結成された防災啓発活動に取り組むサークル。女性の視点を生かし、女性から家庭、地域社会へ「やってみたくなる防災」を発信するとともに、自治体や企業の依頼を受け、ワークショップや災害食に関するレクチャーなどを行う。現在、所属しているメンバーは、全員が1995年の阪神・淡路大震災以降に生まれている。

災害時におすすめのポリ袋調理

長野講演にあった「普段から丈夫な口を作っておくことが、心身の健康に重要だ」との考えは、最近注目されている備えない防災、「フェーズフリー」に通じています。フェーズフリーとは、平時と災害時のフェーズを取り払い、いつも使っている商品やサービスを災害時にも役立てようという新しい考え方ですが、今日はまず、神戸学院大学の「防災女子」の皆さんにフェーズフリーに基づく災害時の食をご紹介していただきます。

真田水が貴重になる災害時におすすめの調理法として、ポリ袋調理があります。中に入れる食材や水は飲料水に限りますが、湯せんには川の水や海水が使えるため、少量の水で調理できます。

長野湯せんに使った水は、別の用途にも使い回せますね。食材は、普段冷蔵庫にあるものですか。

真田はい。おすすめは、野菜とレトルト食品の組み合わせです。フレッシュな野菜も無駄なく使え、栄養も豊富です。ただし、みりんやアルコールは袋が膨張して破裂する可能性や、油分を含む食品はポリ袋の耐熱温度を超える場合があるので、注意してください。

長野簡単に栄養が摂れるポリ袋調理、普段から取り入れたいですね。

水が使えない時の口腔ケア方法

長野ある日突然、水が使えないという状況はなかなか想像がつきません。水がなければ、口腔ケアも難しそうです。

市川少量の水でできるケアもあります。コップに30mlほどの水を入れて、ハブラシを湿らせてから歯みがきをする方法で、ハブラシに汚れがついたら、都度ティッシュで拭き取ります。歯みがき後は、コップの水を2、3回に分けて口をすすぎます。

長野そんな少量の水で、ケアができるんですね。もし、水がまったくない時は……

市川その時は、口の中をきれいに保つために、唾液を出すようにしてください。唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺にあるので、その3か所をやさしくマッサージします。

長野少し押すだけで、けっこう唾液が出ます。足立先生、実際に被災地でこのような指導はされますか。

足立はい。口腔乾燥を訴える方は多いですね。人間の体は、使わないと機能がどんどん低下しますから、唾液腺を刺激して機能を維持することは大切です。

長野日々の筋トレと同じですね。これも一つのフェーズフリーといえそうです。

ローリングストックのすすめ

長野防災女子の皆さんは、フェーズフリーの一つとしてローリングストックもすすめていますね。

安福はい。国民健康調査では、国民の約半数が食料備蓄をしていません。その理由の一つは、非常食のイメージが強いからだと考えています。ローリングストックは、普段から使用する食材を少し多めに買い、食べたら、また食べた分を買い足すという備蓄方法です。

長野災害時には、店頭から食材や商品がなくなってしまう風景もよく見かけます。普段食べているものを多めにストックしておくというのは、いいですね。

真田先ほどのお話を聞いて、食材のローリングストックはもちろんですが、お口の健康を守るためのオーラルケア商品のローリングストックも大事だと感じました。

足立そうですね。水ですすぐ必要がない液体ハミガキなどをストックしておくといいと思います。ただし、避難所では、使いかたが分からないという声をよく聞きました。

非常時に備えた日常の口腔ケア

市川液体ハミガキは、液体を口に含み、うがいをして吐き出した後、ハブラシでブラッシングします。発泡剤や研磨剤は入っていませんので、最後に口をすすぐ必要はありません。

長野洗口液というのもありますが、これは液体ハミガキとは違うのですか。

市川洗口液は、手軽に口臭を予防したり口の中をサッパリさせたりしたい時に使うもので、歯みがき用ではありません。

長野液体ハミガキは使ったことがないので、いざという時のために普段から使い慣れておいたほうがいいですよね。

市川そうですね。例えば朝は液体ハミガキで、夜はペースト状のハミガキで、というふうに組み合わせるのもいいと思います。

長野ほかに気をつけたいことはありますか。

市川口の機能を維持するために、口のトレーニングも習慣づけたいです。「パタカラ体操」といって、食べ物を口に入れてから食道に送りこむまでの嚥下機能を鍛える発声体操があるので、ぜひやってみてください。

長野この体操、実はアナウンサー研修で習いました。滑舌だけでなく、口の健康にも良い体操だったんですね。
さて、ここまで非常時に備えた口腔のセルフケアを教えていただきましたが、やはり定期的なプロのチェックやアドバイスも必要なのでしょうか。

足立そうですね。口腔ケアは歯みがきに限りません。自分の口腔機能を正確に評価してもらい、その評価に応じた適切なアドバイスを受けることは大切ですし、歯みがきでは落とせない歯石や歯垢を定期的に除去することも重要です。セルフケアに加え、歯医者さんの力も借りて、ぜひ「自分の命を守る」という意識を高め、実践していただけたらと思います。

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