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第4回 伊藤園健康フォーラム お茶で人生100年時代を豊かに生きる知恵 主催:株式会社伊藤園中央研究所
第4回 伊藤園健康フォーラム お茶で人生100年時代を豊かに生きる知恵 主催:株式会社伊藤園中央研究所
感染症時代における“茶の効用”

株式会社伊藤園は、「第4回 伊藤園健康フォーラム」を、2021年9月3日に伊藤園公式YouTubeにて開催しました。
フォーラムでは、お茶の効用について最前線で研究されている専門家や臨床医の先生方による基調講演とパネルディスカッションが実施され、コロナ禍におけるお茶の効用や感染症対策について議論がなされました。

  • 山田 浩氏

    静岡県立大学
    薬学部 教授

    山田 浩氏

  • 松田 修氏

    京都府立医科大学大学院
    医学研究科 免疫学 教授

    松田 修氏

  • 仲井 雪絵氏

    静岡県立大学短期大学部
    歯科衛生学科 教授

    仲井 雪絵氏

  • 工藤 孝文氏

    福岡県みやま市工藤内科
    院長

    工藤 孝文氏

  • 衣笠 仁

    株式会社伊藤園
    中央研究所 所長

    衣笠 仁

  • 奥村 隆一氏

    モデレーター
    株式会社三菱総合研究所
    キャリア・イノベーション本部
    主席研究員
    モデレーター 株式会社三菱総合研究所 キャリア・イノベーション本部 主席研究員

    奥村 隆一氏

茶カテキンによる免疫機能の活性化と感染症予防

山田 浩氏静岡県立大学 薬学部 教授

緑茶に多く含まれるカテキンには抗酸化作用や抗動脈硬化、認知機能の改善など様々な作用が証明されています。中でも抗菌、抗ウイルス作用、免疫機能の活性化の作用については特に注目されています。【図1】

図1

免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」があります。「自然免疫」とはウイルスや細菌などの外敵を攻撃して排除しようとする働きで、これにはNK(ナチュラルキラー)細胞やマクロファージなどの免疫細胞が関与しています。一方「獲得免疫」はウイルスなどと戦うことで作られる抗体によって病原体から体を守る働きです。
私たちの研究グループでは高齢者の免疫機能に関する調査を実施しました。65歳以上の高齢者20名を対象にカテキン飲料を2週間飲んでもらい、自然免疫などで働くNK細胞の変化を調べてみました。すると、NK細胞の活性化が確認でき、さらにNK細胞の働きの低い人ほど活性化の作用が大きいという結果も得られました。【図2】

図2

現在、カテキンの感染症に関する研究では、特にインフルエンザに関する研究が盛んに行われています。私たちの研究でも小学生を対象にした調査で、1週間に6日以上緑茶を飲む習慣がある子供は3日未満の子供に比べ、インフルエンザの発症が4割近く抑えられているという結果も出ています【図3】。ほかにも緑茶によるうがいでもインフルエンザの発症において減少傾向がみられています。

図3
こうしたことから新型コロナウイルスについてもカテキンによる予防効果が期待され、世界でも様々な研究が行われています。私もカテキンが補助的な手段として役立つのではないかと思い、新たな研究に取り組む予定です。

出典元:茶カテキンによる免疫機能の活性化と感染症予防
静岡県立大学薬学部教授/健康支援センター長  山田 浩

【図1】

図1

【図2】

図2

【図3】

図3

出典元:茶カテキンによる免疫機能の活性化と感染症予防
静岡県立大学薬学部教授/健康支援センター長  山田 浩

――感染症予防に関して茶カテキンはどのような働きをするのでしょうか
カテキンは緑茶の主要成分の一つであり、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキンガレート(EGCG)の4種が大半を占めています。中でも最も含まれる「エピガロカテキンガレート(EGCG)」については、免疫の活性や抗菌、抗ウイルスなど効能についても研究が進んでいます。インフルエンザに関する研究では、ウイルスの宿主細胞への吸着を阻害し、細胞内の増殖を抑え、細胞外への放出も阻害することが証明されています。
静岡県立大学 薬学部 教授 山田 浩氏

静岡県立大学 薬学部 教授 山田 浩氏

――なぜ、感染症予防には免疫機能の活性化が重要なのでしょうか
免疫には人間に本来備わっている「自然免疫」と病原体と戦うことで抗体がつく「獲得免疫」があります。自然免疫とは体に侵入したウイルスなどの病原体を排除しようとするもので、NK細胞やマクロファージといった免疫細胞が関与しています。NK細胞は病原体を攻撃する働きがあり、マクロファージは病原体を食べて死滅させることで体を守ります。こうした外敵と戦う免疫の働きが低下すると感染症などのリスクも高くなるため、免疫機能を活性化させて体を守る働きを高めることが大切なのです。私たちが行った高齢者を対象にした調査でも、カテキンがNK細胞を活性化させることが示されています。
――感染症予防に役立つお茶の飲み方などはありますか
1日1~3杯の緑茶を飲むことで感染症予防に役立つのではないかと思います。私たちの研究でも、1日1~5杯緑茶を飲む子供と1日1杯未満緑茶を飲む子供では、1日1〜5杯飲む子供の方がインフルエンザの発症が4〜5割減ったというデータもあります。また、緑茶でのうがいにも抗ウイルス効果が期待できるので、取り入れてみてもいいのではないでしょうか。緑茶は薬ではありませんので、副作用などの心配がなく、子供から高齢者まで安心して飲むことができますので、健康維持に役立てていただければと思います。
コロナ禍における“茶の効用”
最前線で研究されている専門家や臨床医の先生方による、パネルディスカッションでは、コロナ禍ならではの、健康課題解決に向けた“お茶の効用”が議論されました。まずは、現場で直面する課題についてディスカッションが行われました。
パネリスト
山田 浩氏
静岡県立大学 薬学部 教授
松田 修氏
京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫学 教授
仲井 雪絵氏
静岡県立大学短期大学部 歯科衛生学科 教授
工藤 孝文氏
福岡県みやま市工藤内科 院長
衣笠 仁
株式会社伊藤園中央研究所 所長
モデレーター
奥村 隆一氏
株式会社三菱総合研究所
キャリア・イノベーション本部 主席研究員
【コロナ禍に広がる健康課題】
奥村
長引く自粛生活などで起こる、コロナ禍による健康課題とはどのようなものでしょうか?
山田
ステイホームで認知機能の低下が加速したり、外出自粛による肥満や血圧・血糖が上がったという患者さんが増えています。
松田
感染力の強いデルタ株の流行に加え、自粛疲れで精神的に耐えられないという人や経済的にこれ以上の自粛が厳しい等の理由があり、人流が抑えられていないことも感染拡大に影響していると感じています。 
仲井
最近、全身疾患と虫歯や歯周疾患などの口内の病気がリンクするという研究がされています。コロナ禍でマスクを長時間着けていることで無意識に「口呼吸」になり、口腔内が乾燥し虫歯にもなりやすくなります。歯周病の方はコロナが重症化しやすいということもわかってきているので、口腔内の健康管理はコロナ禍では非常に重要です。
工藤
コロナ禍の健康問題に加え、水害などの影響もあり「災害不調」を感じる方が増えています。「災害不調」には二つのパターンがあります。一つは生活習慣病の悪化で、ホルモンコントロールができずお菓子依存になり、血圧・血糖の上昇や肥満にもつながっています。もう一つは、動悸、めまい、喉のつかえなど、診断のつかない症状である自律神経失調症です。これは昨年の3倍くらい増えています。外出自粛で日中に太陽の光に当たる機会が減ることで、体内時計が乱れ睡眠にも影響が出ています。体内時計を整えるのは心身の健康にとても大切です。カーテンを開けて眠り、朝に太陽の陽射しを浴びることで体内リズムを整えることができます。
奥村
コロナ禍で他者との交流が減っているのも、健康に影響があるといわれていますが?
衣笠
人間にはコミュニケーションは大切なもので、それによって脳が活性化します。うつやストレス過多、認知機能の低下などにも関連していると思います。
【感染症時代における
お茶のチカラの活かし方「含み飲み」】
奥村
続いて、感染症対策としてどのようにお茶を活用していくかについて伺っていきます。
山田
感染症対策の上で重要なことは、細菌の侵入を防ぐことと、身体の中に入ってしまったときに増殖しないようにコントロールすることです。コントロールする中では、免疫の活性化というのは非常に重要で、まさに「カテキン」には免疫機能を活性化する効果が期待されると考えています。
奥村
新型コロナウイルスに対する効果を期待するとしたら、カテキンはどのような活用ができるでしょうか?
松田
お茶に含まれるカテキン類が新型コロナウイルスを不活化させるということは明らかになっています※。新型コロナウイルスは唾液の中にウイルスが蓄積するのが特徴で、会話などによって伝播します。多くの人が(利他的に)お茶を飲んで唾液の中のウイルスを不活化することができれば、人に移さないという公衆衛生を考えた使い方もできます。特にマスクを外す場所、食事の際にお茶の「含み飲み」が有効だと思います。(※京都府立医科大学と伊藤園の共同研究)
奥村
口腔ケアという観点ではどのような活用が考えられるのでしょうか?
仲井
お茶で子供の歯の仕上げ磨きをしている地域で虫歯が少なかった経験もあり、虫歯菌、歯周病に対してカテキンが有効だという実感はあります。また、虫歯の要因は虫歯菌の出すネバネバ物質が歯に付着することですが、カテキンにはその物質を作る酵素を阻害する効果があります。薬ではなく、お茶のような食品で効果が期待できるのはいいと思います。
奥村
心身を整えていくために効果的なお茶の飲み方などはありますか?
工藤
緑茶にレモンを加える「レモン緑茶」を患者さんにおすすめしています。お茶に含まれる「カテキン」には脂肪燃焼作用もあり、レモンと緑茶を合わせることで「アディポネクチン」という痩せホルモンが増えることも分かっています。さらにお茶を水出しすると「テアニン」というリラックス成分が増えるため、水出しでレモン緑茶を飲むこともおすすめしています。レモンのクエン酸が身体の疲労を取り、テアニンが心の疲労を和らげるということで、心身を整えるという観点でベストな組み合わせだと思っています。
奥村
お茶の効果的な飲用方法はありますか?
衣笠
感染症対策や口腔ケアには「含み飲み」がおすすめです。唾液の中で数秒間口に含んでいきわたらせるようにして飲むことで、唾液の中のウイルスや虫歯菌の活性を抑えることが期待できると思います。
奥村
他に注目すべきお茶の効能はありますか?
衣笠
テアニンのリラックス作用や、認知機能の改善などについても注目しています。成分ではありませんが、お茶は「お茶する」という言葉があるように、人と人の繋がりを持たせるコミュニケーションツールの一つとして非常に重要な役割を担っていると考えています。
奥村
ディスカッションを通して、感染症と向き合いながら健康的な生活をするための知恵を持つことが必要だと実感しました。お茶を活用して、日常生活の中でできる感染症対策を実践して頂けたらと思います。
コロナ禍における茶の5つの効用
  • ①インフルエンザ予防(静岡県立大学 山田 浩 教授)
  • ②新型コロナウイルス感染拡大抑制
    ~公衆衛生学的使い方(京都府立医科大学 松田 修 教授)
  • ③口腔ケア(静岡県立大学 仲井 雪絵 教授)
  • ④体内リズムを整える(福岡県みやま市工藤内科 工藤 孝文 院長)
  • ⑤コミュニケーションツールとしての使い方(株式会社伊藤園中央研究所 衣笠 仁 所長)