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※掲載の肩書は取材当時のものです。

グローバル社会に必要とされる人材とは

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開学以来、グローバル社会で活躍できる人材の育成を掲げる学習院女子大学は、多彩な留学制度や海外研修を通じて、世界を知り、自分自身を知るための幅広い学びの機会を提供してきた。国際協力の現場における豊富な経験を持つ伊藤由紀子教授が、若い世代に向けてグローバル社会で必要とされる人材像について語った。そのインタビューの模様をお届けする。

国際協力を仕事に選ぶということ

——国際協力の現場で豊富な経験を持つ伊藤先生ですが、どのような経緯でこの世界に飛び込み、また教育者の道へと進まれたのですか?

伊藤 由紀子(学習院女子大学 教授)

 私はアメリカの大学で国際関係や国際援助に関連する学科で学びました。帰国後、縁があってネパールで行われた調査のお手伝いをさせてもらったのですが、現地で様々な国際援助機関を訪問する機会があり、そこでの経験がその後の進路を決定づけました。

 当時、現場に何も貢献できていないと感じていた私でしたが、あるネパール人の女性活動家が「外国人のあなたがここにいるだけで、インパクトがある」と言ってくれたのです。その女性は現地で女性の教育や識字に関わる援助を行っていましたが、貧しさが先に立つ現場ではお金に直結しない援助・活動はなかなか興味をもってもらえないという現実がありました。ところが外国人である私がそこにいるだけで、現地の方の興味を引き、活動の入り口とすることができます。こうしたことに気づかされて以来、私は“援助する側の役割とは何だろう”と考えるようになり、国際協力・援助の現場で働きたいと思うようになったのです。

 もうひとつ印象的だったのが、ネパールで出会ったひとりの少女と交わした何気ない会話の中でのひとことです。あるとき、私が彼女に今一番ほしいものを聞いたところ、「学校に行きたい」という返答が即座に返ってきました。私はその時、少女にこんなことを言わせる世の中を“おかしい”と感じ、それが今の今まで続いています。

 とにかく“現場”が好きだった私は、ネパールを離れてイギリスの大学院で学んだ後、NPO法人「難民を助ける会」と出会ったのをきっかけに、1995年からルワンダでの国際協力活動に身を投じました。当時の経験は私が国際協力の仕事をしていく上で本当に多くの示唆を与えてくれ、また内外からの評価を得ることができたという意味でも、非常に満足のいくものでした。

 1994年の紛争後、ルワンダには海外から数多くのNGOが入ってくるようになり、ある意味で国際協力・国際援助はブームを迎えました。これはもちろん歓迎すべきことではありますが、一方で“外国人による不必要な介入”も増えたように感じられます。本当に現地の人々にとって意味のある援助とは何なのか――それを伝えられるのは、きっと私なのだろうと思ったときに、現場を離れ、後進の指導にあたる立場になろうと決意しました。そして1997年に帰国後、私は学習院女子大学の教壇に立つことになったのです。

——国際協力の現場、そして学習院女子大学で教鞭を執られる中でお気づきになった、日本の社会とそれ以外の世界との大きな違いは何だと思われますか。

 よく思うのは、「日本はお願いができない社会」だということです。一方、開発途上国や、人間関係が豊かに感じられる社会では、そこで暮らす人間が依存し合うことで、互いにお願いができる環境にあるように感じます。日本では良い意味で「人に迷惑をかけてはいけない」という教育が浸透してきましたが、ふと気づくと、お願いすることが苦手な人間を作っているのではないか、と感じるようになりました。

 例えば、女性が働きながら子供を育てるのはとても大変なことです。特に日本では、家庭内ですべてを解決することはほぼ不可能であり、そのため保育施設に預けたり、ベビーシッターを雇うなど、お金で解決することになります。ところが途上国では、お願いをしないと生きていけないという現実があり、それゆえに自然な形で密接な人間関係が生まれることになるのです。そうした状況を日本の学生が目の当たりにしたときに、「なんて豊かな生活なんだろう」という素直な感想を口にします。貧しいと思っていた開発途上国でみつける豊かさに触れることで、開発、国際協力の意味を問うてほしいと考えています。

 国際協力・援助の基本的な考え方として、「私たちにはふつうにあるモノ」が「ない」ということが遅れている、劣っているのではないということを理解する必要があります。そのことについて考えるには、当たり前かもしれませんが“自分の生活のあるべき姿”を意識することも必要です。私たちは欲しいものを自由な意志で選び、手に入れていますが、そのニーズは意外と「広告」、「コマーシャル」、「流行」に左右されているのも事実です。本当に手に入れるべきものは「必要」なもの。そして大切なのは、手に入れたものをどのように使うかであること。モノがたくさんあり、それを消費することで成り立っている私たちの社会ですが、地球上の資源は無限ではないのですから、これまで以上に一歩立ち止まって、私たちの生活をまず振り返りたいと思います。とはいえ、近年、節約やシェア文化が浸透してきています。「ない」生活を楽しむ若者が増えつつある中、彼らが担ってゆく国際協力はこれまでにない新しいアプローチが出てくるかもしれません。どのように変化していくことが現地の人たちにとって必要、あるいは必要ではないのか――。そうしたことを実践的学習を通して、学生たちに考えてもらえるような学びの機会を提供していきたいと考えています。

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