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※掲載の肩書は取材当時のものです。

女性が生涯を通して活躍できる専門職“法曹”を育てる ~学習院大学 法科大学院で学ぶということ~

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優秀な法曹を数多く輩出してきた学習院大学は、専門的な知識や技術にとどまらない、幅広い教養を身につけた法曹を社会に送り出すために、2004年に法科大学院を開設した。現在、独自の少人数教育を掲げる法科大学院で学ぶ学生の約3割を女性が占める。女性が生涯を通じて活躍できる専門職としての法曹の魅力について、4人の女性法律家が語り合った。その座談会の模様をお届けする。

多彩で広がりのある法曹の世界

長谷部 由起子(学習院大学 法科大学院教授)

長谷部
 本日、司会をさせていただきます長谷部です。私の専門は民事訴訟法で、学習院大学の法科大学院では民事訴訟法のほか、少人数指導の「起案等指導」を担当しています。法曹になるための勉学は非常に大変で厳しいものであり、また様々なバックグラウンドを持たれた方が夢を持って挑戦してくる世界でもあります。法曹をめざす人たちが希望を持って法科大学院で学んでいかれるようにという趣旨で、今回の座談会には、弁護士、検事、研究者と法曹の様々な分野で活躍されている学習院と縁の深い方々をお招きして、法律学や法律業務に関して現在、注目されている問題や、法曹に求められる能力、専門職としてのやりがいなどについて語っていただくことにしました。まずは出席の先生方に、自己紹介から始めていただきたいと思います。
 私は2012年に学習院大学法科大学院の准教授に就任しました。専門は民法で、法科大学院の民法入門や、法学部の債権総論、担保物権といった授業、そのほか演習の授業などを担当しています。学外では渉外弁護士事務所の弁護士さんなどを交えて、英語で日米の契約を比較するというような授業もさせていただいています。

原 恵美(学習院大学法科大学院准教授)

望月
 2013年の4月より、学習院大学法科大学院の実務家教員をしている望月です。本職は検事で、1998年に任官し、16年目となりました。教育に関わったのは昨年からで、まさに悩みつつの1年目でした。法律を学ぶ学生に対して、実務と理論をつなげるというところでヒントを与えられればいいなと、日々考えながら努力しています。
今田
 私は2004年に学習院大学の法科大学院に入学し、法学未修の一期生として、一から法律を勉強させていただきました。それから3年間勉強し、卒業後に、司法試験に合格しました後は企業法務を中心とする大手弁護士事務所で働き始め、6年目になります。
長谷部
 続いて、現在の活動および関心を持っておられるテーマについて、お話しいただけますか。

望月 栄里子(学習院大学 法科大学院教授)

 私の現在の研究関心としては、主に「信託」という制度を比較法的な観点から分析するというところにあります。信託は英米法圏に由来する制度ですが、元々は家族間の財産を継承する手段として考え出されたものです。日本では、信託銀行が中心となって信託が発展しており、年金信託や投資信託として信託が利用されています。分かりやすい例を挙げるならば、例えば、おじいさんが1歳の孫のために将来の教育資金を残そうとしても、実際問題としてお金を管理するのは孫の親となります。しかしその親が浪費家であった場合、おじいさんとしては教育資金の行方が心配になるはずです。そこで信託銀行などの受託者に教育資金を預けて、その資金の管理・運用を任せるというのが、信託の大まかな仕組みです。仮に信託銀行が債務を負って事業が頓挫しても、孫のための教育資金は隔離され、他の債権者の追求を免れるという点も、信託の特長となっています。また、この信託の仕組みとも重なる部分が大きい財産論も、主要な研究テーマのひとつです。例えば個人事業主が事業に失敗した場合、自身が家族と生活するようなマンションを含めた全財産を投じて責任を負わなければならないのでしょうか? どのような範囲の財産で責任を負うのか、ビジネスに利用していたものだけなのか、プライベートの財産も含まれるのかといったことを理論的にどのように説明することができるのか? というような事象に関心を持っています。特に研究対象としては、19世紀以来、財産論が積極的に議論されてきたフランスの法律などを参考にしています。
今田
 私が勤務しているのは約120名ほどの弁護士が所属する比較的人数の多い法律事務所です。現在は知的財産に関する訴訟を担当することが多く、中でも特許侵害訴訟が仕事のおよそ3割を占めています。また学生時代にモデルをやっていた経験から、例えばモデル事務所からの依頼等、通称“エンタメ”といわれるエンターテインメント関連の事案にも取り組んでおります。とはいえ、依頼者の要望によってどんなことでも対応するというのが基本的なスタンスです。

今田 瞳(弁護士/学習院大学法科大学院修了)

望月
 私は現在、法務省からの派遣という形で、学習院大学の法科大学院で学生に教えています。ただ、刑事事件を扱う検察官が本来の肩書きでして、主に警察から送られてきた事件について、証拠の収集、被疑者や参考人の取調べなどをする捜査活動や、被疑者が起訴された後、裁判所で主張・立証をする公判活動が主な仕事です。直近の現場は2012年度になりますが、既にこのときは裁判員制度が始まっており、1年間で20件の裁判員裁判に立ち会いました。裁判員制度は私が任官した平成10年当時から考えると、最も大きく変わった制度のひとつ。当時は、一般の方々に刑事事件における事実の認定や刑罰の判断を仰ぐ制度が実現しようとは、夢にも思いませんでした。実際に私が関わった裁判員裁判においては、年齢、性別、経験、知識もバラバラな裁判員の方々に、本来膨大な量の証拠資料をうんと圧縮して示しながら説明していくという作業が非常に難しく、なかなかうまくいかない部分がありました。専門用語などは相当かみ砕いて説明しているため分からないということはあまりないと思うのですが、例えば間接事実に当たるものを積み上げていって立証する事件の場合、それぞれの間接事実が事件解明とどうつながるのか理解できないという声も聞きました。裁判が終わった後で裁判所が裁判員の方々に対して行っている無記名のアンケートを見ると、「検察官の説明が分からなかった」「証人の証言の意味が分からなかった」など、裁判を進めていく上で根本的な問題となりうる指摘が多く、まだまだ改善すべきところは山積みだというのが実感です。

コミュニケーション能力が問われる

長谷部
 裁判員裁判は、法律の専門知識を持たない方が参加される制度として始まったものですから、従来は想定されていなかったさまざまな問題が出てくるのはやむを得ないのかも知れませんね。とはいえ、例えば弁護士も法律の専門家ではない一般の方から依頼を受けることもあるわけです。その際に必要となるのは、相手の言いたいことを察しつつ、法律家としての判断を分かりやすく伝えるコミュニケーション能力だと思います。実務法曹の方は、常にそういう必要性に迫られてトレーニングもされているのではないですか。
今田
 おっしゃるとおり、コミュニケーション能力は、弁護士にとって非常に重要な能力であると感じています。例えば、非常に理知的で精緻な議論をする弁護士でも、それを依頼者にかみ砕いて説明することができないと、依頼者も不安を抱えたまま事案が進んでいってしまうこともあると思います。事案の問題点やその解決方法を分かり易く提示できる、依頼者に安心感を与えることができるというような、コミュニケーション能力の高い弁護士は、依頼者から見て頼りがいのある弁護士であるといえます。しかも、そうした能力は、弁護士の誰もが持ち合わせているわけではなく、むしろ座学に注力してきた我々には、容易に身に付けることのできない能力ではないでしょうか。弁護士はサービス業だということを、もっと意識していかなければならないのだと、最近はよく感じています。
 確かにそうですよね。司法試験でコミュニケーション能力が問われることはありません。そういう能力はロースクールで培っていくか、あるいは働き出してから実地で学ぶしかないというのが実情です。
望月
 刑事事件の場合、事件関係者にとってはあまり聞かれたくない、あるいは、話したくない内容であることが多いです。そのような状況で、被疑者にしても参考人にしても初めて会う方に胸襟を開いてもらうためには、ファーストインプレッションはもちろん大切ですし、信頼関係を築き上げるまでのコミュニケーションは絶対に不可欠です。黙りっぱなしというわけにはいきませんし、しゃべりすぎてもダメ。話しづらいことを話そうという気持ちになってもらうためには、話を引き出す技術が必要になってきます。私の場合、相手にシンクロすること、つまり、できるだけ相手と同じ目線や価値観で考えてみて、どのような質問をすれば答えやすいかとか、答える上でどんなことに不安を抱いていて、それを取り除くにはどのような言葉を掛けたらいいかなどを考えながらやりとりするようにしています。これは任官以来、トレーニングを重ねていることではありますが、なかなかうまくいかず、苦労の多い点でもあります。
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