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※掲載の肩書は取材当時のものです。

[対談]今こそ求められる体験を通しての学び ~教育学科の特色とは~

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来春、学習院大学文学部に新設される教育学科では、2050年を見据えて次代を担う資質と能力を持った小学校教員を養成します(現在、文科省に申請中)。この教育学科における柱のひとつである、小学校教員養成に必要な「体験を通しての学び」について、学校現場の環境教育に詳しい飯沼慶一氏と教育学科で教鞭を執る予定の長沼豊教授が語り合った。その対談の模様をお届けします。

自然とふれ合い、感性を育む体験が求められている

飯沼 慶一氏(成城学園初等学校 教諭)

長沼
来春、学習院大学の文学部に新設される予定の教育学科において、教育の柱として考えているのが「体験を通しての学び」です。現在、飯沼先生は成城学園初等学校にて、環境教育に力を入れていらっしゃいますが、小学校教育における「体験」についてどのようなお考えをお持ちですか?
飯沼
まず感じるのは、最近の子供は自然とふれ合う体験が非常に少ないということです。そもそも、その親の世代が自然に親しむことをしてきていないため、子供たちがなかなか自然の不思議さ、美しさ、素晴らしさに目を向けることをしなくなっていると感じます。環境汚染にいち早く警鐘を鳴らした『沈黙の春』の著者として知られるレイチェル・カーソンは、遺作となった『センス・オブ・ワンダー』の中で、「自然の不思議さ、美しさに目を向ける感性を子供の頃に育むことが大切であり、そのためには共感してくれる大人が隣にいる必要がある」と言っています。今の日本の状況では、教員の存在自体が子供が自然とふれ合う体験を持てるかどうかに大きな影響を与えます。普段の大人の目線ではなく、子供たちと一緒になって自然の中の不思議に目を向ける——そういうことのできる教員が今、求められているのだと思います。
長沼
確かに“共感する”あるいは“感性を育てる”といった観点は、非常に大事だと思います。教員に必要な知識や技能は勉強すれば身につけられますし、あるいは教員になってから覚えても遅くはありません。しかし何かに共感する心の部分というものは、もっと長い時間をかけて育てていくものです。大学の4年間という時期に、学生たちが自然に対する感性をしっかりと育んでいくような、そういうことを大切にできる教育学科にしなければなりません。
飯沼
例えば、私が勤める小学校で特設している教科に、1、2年生が週に一度行っている「散歩科」があります。その名の通り、みんなで散歩に出かけて、地域の自然や社会や人にふれ合うのですが、何より“体験する時間を豊富にする”という考え方でこの教科を設定しています。小学校の多くの教科には「到達目標」が定められていますが、この授業の場合は体験そのものを目的としているので、いわば「体験目標」を重要視しているわけです。

ボランティア学習を通じて、社会に役立つ自分を知る

長沼
学習院大学の教育学科でも、学生時代にできるだけ様々な体験を持つ機会を設けようということで、カリキュラムの中に一年次には自然体験、三年次には社会体験をそれぞれ必修科目として組み込むことになっています。幸い、学習院大学は“目白の森”と呼ばれる自然豊かな敷地を持っており、自然とふれ合うフィールド体験型授業を展開するにはうってつけの環境にあります。また少し遠方に足を延ばして、学年あるいは世代をまたいでツリーハウスづくりを授業の一環として継承していくなど、ダイナミックな形での体験型学習も実践していきたいと考えています。さらには自然体験やボランティア学習などを通じて実際に体験したことを、今度は子供たちにどう教えるのかというところまで、模擬授業などを行いながら発展させていきます。さらには学問的な基盤も必要ですから、文献等を参考にしてアカデミックな学びも織り交ぜながら行っていく予定です。

長沼 豊(学習院大学 教職課程教授、教育学科開設準備委員)

飯沼
環境教育に力を入れている身としては、学習院大学の教育学科の試みについては非常に期待するところが大です。先ほどツリーハウスを作るという話がありましたが、こうしたグループワーク的な授業には大変意義があると感じています。今の教員の特徴として、子供は大好きでも保護者や教員同士での人間関係がうまく作れないという例が少なくありません。グループワークなど体験型の授業を取り入れ、社会体験という意味で学生同士が討議し、考える機会を増やすことは、高いコミュニケーション能力と将来の幅広い視野を持った教員を育てるために、重要な役割を果たすのではないでしょうか。
長沼
環境教育と並んで教育学科で推進しようとしている科目に「ボランティア学習」がありますが、これには学生たちにボランティア活動を通じて“自分は役に立つ存在なんだ”ということを感じ取ってもらおうという狙いがあります。飯沼先生のおっしゃる自然体験の不足と同じで、実は社会の中で「自分が役に立つ」と感じる機会は意外に少ないものです。ボランティアは自分の責任においてするものですし、参加するのも自由、参加しないのも自由。そういう場に身を置いて、何が社会の中で必要とされており、自分に何ができるのかを感じ取る——こういう学びを推進したいと考えています。もちろん、学生自身が教員となったときに、赴任した小学校でもボランティア学習を実践できるようなカリキュラムを想定しています。
飯沼
自分が役に立つと感じ、自分を好きになれることは非常に大切なことです。実は小学生でも自分に自信が持てず、自分を肯定できない子が増えています。専門的な言葉で言うと「自己肯定感(SELF−ESTEEM)」というのですが、特に小学生時代においてこうした意識を育てることは、これからの教師にとっては重要な使命になるものと思います。
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