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※掲載の肩書は取材当時のものです。

[対談]新・教育学科が目指すもの

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2013年4月、学習院大学は文学部に教育学科を新設します。主に小学校教員の養成を目的とするこの学科は、激動の時代に直面する子供たちの人間形成に深く関わるという意味で、非常に重要な使命を帯びているといえます。近年、従来のやり方では対応しきれない様々な教育課題が指摘される中、学習院大学だから実現できる新しい教師教育のあり方について、教育学科で教鞭を執る佐藤学教授と諏訪哲郎教授が語り合った、対談の模様をお届けします。

新しい教養に立脚した教師教育を

佐藤 学(学習院大学 教職課程教授)

諏訪
学習院大学では、来年4月に教育学科の開設を目指しています。日本はもとよりアジアの教育事情に詳しい佐藤先生ですが、新しい教育学科に“学習院ならでは”というカラーを押し出すために、どんな方向性を定めるべきとお考えですか。
佐藤
まずひとつ挙げられるのは、「新しい教養」に立脚した教師を育てることです。昨今、世界的に持続可能性を掲げた社会・経済のあり方が問われており、こうした概念の基礎を培う教養教育は、今後は初等教育から始めるべきものであるといえます。当然、教師にも持続可能性に関する深い知識と理解が必要となるわけです。またグローバル化が進み、社会が求める人材が多様化する中で、文系や理系といった知識の壁にとらわれない文理融合の概念も、新しい教養のキーワードといえるでしょう。二つ目にはやはり、新しい時代の教師の専門性を考えなければなりません。今、アジア全体を見ると「知識基盤社会への対応」が初等教育における新たな課題とされており、これまでのように単に知識を蓄積していくという学び方から、子供たちが主体的に学ぶ力を引き出す学習者中心の授業に変わってきています。黒板の文字を書き写すだけではなく、子供たち自らが知識を選び、また自ら知識を活用するような探求的な学びに根ざした教育を進める必要があるというわけです。さらに三つ目としては、「アジアの中の日本の教師」というものを考えざるを得ません。グローバル化する世界を念頭に置き、アジア全体における連帯の中で展開する教師教育は、中国や韓国の教育現場との太いパイプを持つ学習院だからこそできるものではないかと感じています。

学び続ける教師が必要とされている

諏訪
持続可能性という観点から考えた場合、私自身が強く関心を持っているのがPISA調査(OECDによる生徒の学習到達度調査)の姿です。PISA調査というと、日本の順位ばかりが取りざたされがちですが、その核心となる能力概念「キー・コンピテンシー(主要能力)」は、学力を得た結果が実際の社会においてどれだけ活用できるかという側面と社会への参加を大変重要視しています。これはすなわち、いずれ持続可能性という難題に直面する今の子供たちが、臆せずそこに立ち向かえるだけの能力を育むことが非常に重要と考えているわけです。

諏訪 哲郎(学習院大学 教職課程教授)

佐藤
PISA調査の考え方の根底にあるのは、変化する社会の中で子供たちが学んだことをどうすれば生かせるか、そして生涯にわたって学び続けるという基礎を学校がいかに準備できるかということです。これは、従来のようにただ知識をストックするとか、何かの技能に習熟するということをはるかに超えた要求であるといえます。また教師の側にも、教科書で扱っている知識が今の社会の動きや自分たちの生活とどうつながっているのかを見据えた能力がないと、これからの教育は成り立たないでしょう。
諏訪
学び続ける児童の育成は現代の教育の大きな目標ですが、そのためには教師自身も学び続けなければなりませんよね。それは教師自身が学び続ける姿勢を示すという意味であると同時に、実際に教室に立って子供たちが自発的に学び続けるように育むという、教師の専門性が問われているのではないでしょうか。
佐藤
知識は時代と共に高度化するだけでなく、複合化していきます。複合化とは教科の壁を越えることであり、また知識自体も10年もたてば一新されてしまいます。ITネットワークなどを通じて誰もが高度な知識を共有し、また更新できる知識基盤社会の時代にあって、後生大事に古いノートで教え続けるような教師はそぐいません。大学における教師教育においても、生涯にわたって絶えず学び続ける教師の育成に重点を置くべきというのは、当然の帰結といえるでしょう。
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