Yomiuri Future Tech Session 2021

主催/読売新聞社 協力/NTTドコモ

社会の閉塞感を打破し、 未来の生活をつくる5G

読売新聞社は、5Gなどの新しい通信技術による社会課題の解決や、
豊かな未来社会の姿について議論するイベントを、今後数年にわたり実施してまいります。
第一回目となる今回は、テクノロジーを活用した場づくりに関わる方々を招き、
現在までに可能となった革新的な体験や、私たちの生活に今後起こる変化についてお聞きしました。
その模様をダイジェストでお伝えします。

Session1 新しいスポーツ観戦のカタチ

馬場 浩史氏

馬場 浩史

株式会社NTTドコモ
スマートライフビジネス本部
スポーツ&ライブビジネス推進室室長

髙橋 大輔氏

髙橋 大輔

読売巨人軍スタジアムMC

現地で味わう楽しみ もっとリッチに

馬場

コロナ禍の影響により、今年のプロスポーツ界も様々な制約の中で試合を行わなくてはなりませんでした。当社ではそんな逆風に負けまいと、「超高速・大容量」「超低遅延」「同時多数接続」が可能な5Gを筆頭とした最新の通信技術を活用することで、スポーツ観戦の楽しみをアップデートする試みを行っています。

髙橋

私がMCを務めている東京ドームでのプロ野球の試合でも、来場されたお客様に向けて、新しい体験を提供したそうですね。

馬場

はい。私のイチオシは、自分の席から見えない角度の試合映像を、リアルとほとんど同時にスマホで見られる「マルチアングル」体験です。すでに「より熱中できる」「特別感が味わえる」と好評をいただきました。

髙橋

観客席にいるとテレビ中継のような詳しい解説は聞けないので、何が起きたのか理解しにくいシーンもあります。そんな時にも役立ちそうですね。

馬場

おっしゃる通りです。野球に詳しいファンの方が一緒に来場した友人にスマホの映像を見せながらプレーの解説をするといった、新しいコミュニケーションも生まれると思います。

髙橋

他のスポーツでの取り組みも教えてください。

馬場

例えば、サッカーの試合を「後半だけでも視聴したい」という方を増やすために、前半のハイライト映像をAIで自動編集し、ハーフタイム中にSNSに投稿するといったトライアルを実施しました。また、自分が好きな選手を中心に試合映像を見られる技術も開発中です。

髙橋

それはスポーツファンにはたまらない仕様です!

馬場

5Gは、離れた場所にデータを届けることはもちろん、現地の体験をアップデートすることにも役立ちます。我々は通信技術を活用して、スポーツの楽しみ方をますます広げていきます。

髙橋

来シーズン以降も、スポーツ界はより一層面白くなりそうですね。

Session2 企業トークセッション ソニーマーケティング株式会社/シスコシステムズ合同会社

内山 貴之氏

内山 貴之

ソニーマーケティング株式会社
ソニーマーケティングジャパン
B2Bプロダクツ&ソリューション本部
B2Bビジネス部
ロケーションバリュー企画室
UXプロデューサー

廣瀬 俊朗氏

廣瀬 俊朗

一般社団法人スポーツを止めるな共同代表、
元ラグビー日本代表キャプテン

濱田 義之氏

濱田 義之

シスコシステムズ合同会社
専務執行役員
情報通信産業事業統括

生活の変化はもう始まっている

廣瀬

私は元ラグビー選手なので、コロナ禍において学生のスポーツ選手が外部との関係を持ちづらくなっている状況を問題視していました。そこで立ち上げたのが「HANDS UP」という新しい動画によるプレーアピールシステムです。自分やチームの強みを映像で投稿すると、同世代の選手同士でつながれるだけでなく、大学やプロチームからスカウトを受けることもできます。

内山

ソニーマーケティングでは、テクノロジーとデザイン、コンテンツの価値を掛け合わせて新しい感動体験をつくりだしています。最新通信技術の展示会である「docomo Open House 2021」では「まるで人が隣にいるような音」や「会話するときの視線」「香り」など、通信で送ることのできない“五感”でさえ、5Gであれば離れた場所に伝えることができるのではないか、という内容のコンセプトムービーを制作しました。

濱田

シスコは、異なるコンピューター同士を接続するシステムを世界で最初期に実現した企業で、他者とのつながりの中で生まれる価値創造を大切にしています。企業の敷地など限られた範囲内で利用できる「ローカル5G」を使った実験では、NTT東日本と協力し、新潟と渋谷のオフィスをつないで高精細な遠隔会議と3D-VR遠隔協調作業のシステムを導入し、5Gによる地域活性化の可能性を示すことができました。

ピンチや不便をチャンスに変えて

内山

私自身もラグビー経験者で、コロナ禍で「ラグビー界に恩返しができないか」と考えていました。そこで、元ラグビー選手による親子向けのオンラインイベントを実施したところ、大変人気を博しました。

廣瀬

そのセミナーには私も講師として参加したんです。この2年間、様々なオンラインセミナーに出演するたびに多くの方が集まってくださっているので、インターネットを使った遠隔指導もますます広がっていくのではないかと感じています。

濱田

コロナ禍で冷え切った人々の心をも動かすスポーツやエンターテインメントの力はすばらしいですね。シスコの米本社はプロスポーツリーグとテクノロジーパートナー契約を結んでいて、複数の会場をつなぐ通信や、来場したお客様の体験向上、避難誘導などに役立つ技術を提供しています。

廣瀬

5Gを始めとした通信技術を活用すれば、障害を持つ方がスポーツ観戦をもっと楽しめる方法が生み出せるのではないでしょうか。私も、スポーツに関連するコミュニティに、インターネットを通じてより多くの人を巻き込む方法を模索していきたいです。

内山

現代はSDGsや包摂の実現がキーワードの時代ですから、エンターテインメントにおいても「誰も置き去りにしないこと」が重要です。チャレンジを重ねて、世の中に可能性を提示することが大切です。

濱田

私たちはデジタル格差の解消を重要視しています。ITリテラシーに関係なく、ヘルスケアや教育、自治体サービスの利用が誰でも簡単にできる社会を実現しようとしています。

Session3 最新テクノロジーでエンターテインメントはどう変わるのか

小橋 賢児氏

小橋 賢児

The Human Miracle 代表
クリエイティブディレクター

リアルな場に足を運ぶ意味を更新する

小橋

私はキャリアの当初から、様々な参加型のイベントを手がけてきました。近年は地方創生などにも関わっていますが、当時から現在まで一貫して取り組んでいるのは、従来のイベントに新しい技術を導入して、革新的な体験をつくりだすことです。
例えば、立ち上げから関わっていたとある音楽フェスでは、当時では珍しかった無料のオンライン配信を実施しました。チケットを買ってもらえないことは、主催者にとって不利なように思えます。しかし、会場を訪れた人にSNS上で「こんなに盛り上がるイベントに行っているよ」と映像付きでアピールしてもらえば、周囲の人によりリアルな魅力を訴求することができ、来年以降の集客につながります。また、イベントの準備段階からSNSで情報を発信していけば、運営と観客が共にイベントを完成させる“一体感”を醸成することも可能です。
ドローンや3Dサウンド、レーザーなどを導入して、日本の夏の風物詩である花火大会をアップデートした経験もあります。従来の花火大会は参加無料が当たり前なので、スポンサーがいなくなると中止せざるを得ません。しかし、現代のテクノロジーと花火を組み合わせて新鮮な感動体験をつくることができれば、お金を払ってでも見たいエンターテインメントになると考えたのです。結果は大成功で、海外の大型イベントでも開催の要望が相次ぐ人気のショーになりました。
発達したテクノロジーは、人々が移動しなくても様々な体験ができるようにしただけではありません。私がいままで取り組んできた数々のイベントのように、「わざわざそこに行って何かをする」というリアルな場の価値を高めることにも大いに貢献していると思います。