知ってる?みんな飲んでる牛乳の"ホント"

 牛乳や、バター・チーズなどの乳製品は、実はお米よりも需要の多い、日本の基礎的な食料です[牛乳・乳製品:約1,240万トン(生乳換算)、お米:約840万トン]。ところが、牛乳・乳製品の原料となる「生乳」(牛から搾ったままのお乳のこと)を生産する酪農家は年々減少しています。酪農家や関係者たちは様々な努力を重ねていますが、生乳生産量はピーク時から130万トン以上も減少してしまいました。 酪農の役割は、栄養豊富な牛乳・乳製品の原料である生乳を生み出すことだけではありません。日本の明るい未来にとって、欠かすことのできない酪農の現状と、産業としての大切さを紹介します。

 近年、健康志向の高まりなどを反映して、牛乳・乳製品の需要は高まっています。その原料となる生乳を生産するのが酪農の仕事です。酪農家は毎日、愛情をもって乳牛の世話をし、子牛を産んだ母牛からお乳を搾ります。

 もっとも、乳牛という生き物が相手の仕事なので、酪農の仕事に休みはなく、長時間労働になりがち。高齢化や後継者不足に加え、エサ代や燃料代の高止まりや、設備の更新などに多額の費用が必要となることもあって、現在の酪農家の戸数は1万5000戸と、1963年のピーク時から40万戸以上も減ってしまいました。

 生乳の生産は、暑さで牛の体力が落ちる夏場に減少し、冬場になると増加します。ところが、生乳の需要は牛乳を中心に夏場になると増える傾向にあります。こうしたアンバランスに対応するため、酪農や乳業の関係者は協力し合って、需給の調整を行っています。

 例えば、年間を通じて、大型高速船や鉄道を使い、主産地の北海道から消費地の都府県に生乳を輸送していますが、夏場にはその輸送量を最大化して牛乳を製造します。一方、冬場から春先は生乳の生産が牛乳の需要を上回るため、保存性の高い脱脂粉乳やバターなどの乳製品を多く製造するなど工夫をしています。

 しかし近年、これまでにない酷暑などの影響を受け、夏場の生乳生産量が想定以上に減少したほか、台風などの自然災害によって北海道からの船が欠航し、都府県への生乳輸送がストップするなど、関係者の努力だけでは解決できないような事案も発生しています。

 足りないなら、いっそのこと全量を海外から輸入したらと思うかもしれません。しかし、基礎的な食料である牛乳・乳製品は、多くの国で自国内で優先的に消費され、輸出に回るのは世界の生産量(約8億トン)のうち1割未満。輸出できる国も限られています。しかも、酪農は気候の影響を受けやすく、干ばつなどによりいずれかの国で輸出が減ると、国際価格は急騰してしまいます。

 いずれにしても、世界的に人口が増加しており、中長期的にみて牛乳・乳製品は不足気味になりそうです。ですから食料安全保障の観点からも、輸入に頼らず、日本で生乳を安定的に生産する体制をしっかりと整えておくことが、大切なのです。

 酪農の果たす役割は、生乳の生産だけではありません。牛の排せつ物を肥料として田畑に還元することで、持続可能な社会に貢献する「循環型農業」の基軸を担っています。また、耕作放棄地を牧草地などとして活用することで、土地の荒廃を防ぎ、里山の景観や環境の維持にも貢献しています。さらに酪農家の中には、酪農を通して食やしごと、命の大切さを子どもたちに学んでもらう「酪農教育ファーム活動」に取り組む人たちもいます。日本人にとって欠かすことのできない食料である牛乳・乳製品。それらを日本の酪農家が、日本でつくることの重要性について、私たち消費者も関心を持つことが必要なのです。

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