従来の大学院は研究者の養成がおもな目的でしたが、最近は高度な専門職業人の養成に努める大学院が増えており、幅広い分野で社会人が学びやすい環境を整えています。ここでは、社会人のための大学院の特徴やその仕組み、入試のポイントなどについて紹介します。
社会人が仕事を持ちながら学びやすいよう、そのための設備や施設、授業構成を用意している大学院のことを指します。
最近では、平日夜間や土曜、日曜に開講したり、インターネットを利用して授業を行ったりする大学院が増加。同じ授業を昼間と夜間の両方の時間帯に行う「昼夜開講」の大学院もあり、スキルアップやキャリアチェンジを目指す人から、好きな分野を専門的に学んでみたいという人まで、それぞれの目的に合わせて多くの社会人が学んでいます。
分野は、人文系や理工系、医療・保健・福祉系、MBA取得コースなど実に多彩。各大学院とも仕事の質を高めるのに役立つ科目を揃えており、修士論文の研究テーマに仕事上の課題を取り上げることができる大学院もあります。
(1)昼夜開講、平日夜間、土曜日開講など学びやすい履修システム
(2)職場の近くなど通学しやすい立地(サテライトキャンパスなど)
(3)仕事力の向上に直結するカリキュラム
(4)研究テーマに自分の仕事上の課題を取り上げることもできる
(5)研究者教員と実務家教員による“理論と実践の教育”を重視する大学院も
(6)社会人向けの特別入試などが整っており、入学しやすい環境
専門職大学院とは、修士課程や博士課程に次ぐ「第三の大学院課程」として2003年4月に新設された、専門職課程を持つ大学院のこと。専門職大学院の標準修了年限は2年間で、修了すれば専門職の学位を得ることができます。
専門職大学院は一般の大学院とは異なり、高度な専門職業人の育成に特化しています。指導に当たるのは、研究者教員と専門分野に精通した実務家教員(※)。理論と実務をバランスよく学ぶことができるため、職業人のスキルアップにもっともふさわしい教育機関といえるでしょう。
いわゆる「ロースクール(法科大学院)」も専門職大学院の一つ。標準修業年限は3年で、修了することで新司法試験の受験資格を得ることができます。この法科大学院を目指すには、まず「法科大学院適性試験」の受験が必要です(毎年6月に実施)。
※実務家教員=特定分野で高い実績と豊富な経験を持つ専門家教員。ロースクールなら弁護士や裁判官、アカウンティングスクールなら公認会計士や税理士、MBA大学院なら金融や商社などのマネージャークラスの人物に学ぶことができる。
社会人のための大学院では、法曹職に就くための新司法試験受験資格をはじめ、公認会計士、税理士などの国家資格取得に結びついている研究科もあります。おもな資格と、それを取得できる大学院は次の通りです。
修了に要する標準年限は、修士課程が2年、博士課程が3年。大学院によっては、修士課程の年限が1年間のところや、逆に長くできるところもあります。
会社を1年間休職し、短期集中型で修了することもできれば、在学期間を長くとって、働きながら学べるよう研究量の軽減を図ることもできます。
いずれも、所定の単位を修得して論文審査に合格すれば修了となり、修士課程であれば修士号、博士課程であれば博士号の学位が授与されます。
大学院を選ぶ際には、まず学ぶ目的を明確にすることが大切です。その後、自分が学びたいテーマについて適切な指導をしてくれる教授がいるかどうか、学費や場所といった条件をクリアできるかどうかなどを検討してみましょう。
最近では、社会人を積極的に受け入れている大学院の多くが、新規学卒者向けの試験とは異なる「社会人特別入試」を行っています。一般的には、専門知識を問う試験などを免除し、小論文と面接によって選抜する大学院が多いようです。
入試問題を公式サイト上で公開する大学院も増えているので、受験に当たってはどの程度の知識が必要なのかを事前にチェックしておくことが大切です。