文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

広 告 企画・制作 読売新聞社広告局

コロナ禍で難病患者は
どのような不安とともに暮らしているのか?

CSLベーリング主催 当事者・家族が語るオンライン座談会

 治らない病を抱えて日常生活を送る人たちがいる―。希少・難治性疾患を持つ当事者や家族は、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、感染リスクに脅かされながら、何を思い、どのような不安とともに暮らしているのか。コロナが当事者やその家族に与える影響に迫るアンケート「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が希少‧難治性疾患の患者‧家族に与える影響に関する調査※」(調査主体:ASrid、調査時期:2020年5月~2021年1月)をもとに、調査に協力した回答者らによるオンライン座談会が行われた。困難とともに生きる人たちの言葉は、より良い社会につながるヒントにもなりそうだ。

※CSLベーリングは特定非営利活動法人ASridが実施した本調査に協賛しました。

池崎 はるかさん

CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)当事者

河越 直美さん

MECP2重複症候群の当事者家族

森 幸子さん

日本難病・疾病団体協議会 前代表理事
全国膠原病友の会 代表理事

〈ファシリテーター・調査責任者〉

西村 由希子さん

ASrid 理事長

〈調査・解析担当者〉

江本 駿さん

ASrid 研究員

コロナ禍で社会と共有した病への不安

〈西村〉 まず皆さんの状況を教えてください。

池崎 悠

千葉県在住。1992年生まれ。15歳でCIDPを発病。難病などの慢性疾患をもつ人たちを支援する一般社団法人ピーペックで活動する。

池崎 CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)※1という病気のため免疫を抑制しており、医師から外出を控えるように言われています。ほとんど外出することはありませんが、大学病院まで1時間かけて通っています。通勤ラッシュと重なることが多く、混雑する路線を避けていますが、なかなか大変です。緊急事態宣言下の去年5月頃には、薬の流通に影響が出るかもしれないというニュースを耳にし、大きな不安を感じました。

〈西村〉 希少・難治性疾患の当事者は、治療の不安とともに生きています。今でこそ、ワクチンが開発されて治療法も研究されてきましたが、新型コロナウイルス感染症がはやり始めたころは、一般の方々も未知の病に対する漠然とした不安を感じられたと思います。今回の調査でも、このような状況の中で、こうした思いを一般の方々とも共有できたと感じている方は多かったようです。

池崎 確かに私たちが脅かされているえたいの知れない不安を、コロナを経て、一般の人にもわかってもらえたような気がしました。

感染の脅威、当事者だけでなく家族にもプレッシャー

河越 小学校3年生の長男がMECP2重複症候群※2を患っています。この病気は非常に感染症に弱いという特徴があるため、コロナは大きな脅威です。コロナが世間を騒がせ始めた頃、同じ疾患を持つ家族で作る家族会で、子どもたちが感染したらどうなるのかということが大きな話題になりました。

〈西村〉 コロナに対する不安は、当事者よりも家族のほうが大きいという調査結果があります。家族全員を感染から守らなくてはいけないというプレッシャーがあるからではないかと推測しているのですが、いかがですか。

COVID-19に対して患者の感じる脅威(左)および家族から見た患者への脅威(右)の認識

河越 そう思います。家族が当事者の子どもに感染させてしまうことも怖いですが、自分たち親が感染し入院してしまったらどうすればいいのかという不安も抱えています。

〈西村〉 コロナ禍で、家族会のお子さんたちの体調はいかがですか。

河越 興味深いことに、手洗いやうがい、検温など、社会が感染症対策を徹底するようになる中で、感染症で入院する子がほとんどいなくなりました。鼻水を放っておくと肺炎になっていたような子が鼻水を出さなくなった。周囲の意識が変わると、こんなに変わるものかと思いました。しかし、最近は家族会の中でも感染症で入院している子どもが見られるようになりました。以前に比べると周りの感染対策への意識が緩んできていることが影響しているのかもしれません。

 私は基礎疾患があり、免疫を抑制しているので感染は大きなリスクです。実は2019年秋に肺炎で深刻な入院をしました。コロナ禍でその経験が常に頭にありますが、マスクや手洗い、人混みを避けるなどの感染対策は、持病の発症以来行ってきたことです。そのため、あまり気持ちの変化はありません。

〈西村〉 そのような感覚が基本にあるからなのか、希少・難治性疾患の方はコロナ禍で自分たちの状況を声高に訴えるというケースはほとんどありません。だからこそ、その声を残したいという思いが、今回の調査を始めたきっかけです。

ユーチューブでラジオ配信、「あなたは1人じゃない」

〈西村〉 診療に変化はありましたか。調査では、電話診療を含めたオンライン診療を、3割の方が経験したという結果があります。

 電話診療ができるようになって安心したという声は同じ病気の人から多く聞きました。ただ、2回目以降も電話診療が続くことには不安があるようでした。実際に先生にお会いして診てもらいたいという気持ちが大きいのです。私自身は主人に車で送迎してもらうことで、感染リスクを避けて通院を続けることができました。

河越 病院までの距離が遠かったり、コロナの流行エリアを通って通院しなければならなかったりする方にとって、オンライン診療はありがたいと思います。私は電話診療も受けていますが、息子の発作が落ちつかないこともあり通院もしています。言葉だけでやりとりすることには難しさも感じます。

河越 直美

大阪府在住。長男が2歳半の時にMECP2重複症候群の診断を受ける。2016年に家族会を発足させ、代表を務める。

〈西村〉 調査では、心のよりどころとして主治医とのコミュニケーションや家族とともに、患者会を挙げた方がたくさんいました。患者会もオンラインを取り入れた活動を行っていますね。

池崎 以前住んでいた九州の患者会の活動に関東からオンラインで参加できるのはメリットですね。

河越 家族会は全国に点在しているので、もともとメンバー同士のコミュニケーションはオンラインが基本でした。ただ、オンラインではとりとめのない雑談がしにくく、しかし、そうした会話の中でこそ「うちの子もそうなんだよね」といったコミュニケーションが生まれ、関係づくりが進みます。今はオンラインミーティングとは別に、「お茶会」と称して、全員がマイクをオンにして自由に会話を楽しむ機会を設けています。ただ、入会したばかりの方には敷居が高いようです。今後の課題ですが、「いつでもウェルカムです」ということをどう伝えられるかだと思っています。

〈西村〉 疾患としっかり向き合えず孤独を抱えている人たちが、このコロナ禍で、どうやって情報を得たり、どこで相談したりできるのかわからないというケースは多い気がします。

池崎 ずっと家の中やベッドで過ごしているような人たちに向けて、ユーチューブを活用したラジオ番組を配信しています。同じ難病当事者の肉声を届けることで、「あなたは一人じゃない」というメッセージを伝えられればと思っています。

〈西村〉 森さんは日本難病・疾病団体協議会(JPA)や全国膠原病友の会など、全国に支部のある大きな患者団体で活動しています。

 一部助成金を使い、オンライン活動の体制を整えましたが、独自でイベントを開催するまでには至っていません。機関紙の発行やお願い文書などを通じた啓発活動は続けていますが、「応援しています」という声が多く、感謝しています。

〈西村〉 東京、大阪以外の支部の活動に影響が出ているという調査結果があります。

 地域の患者団体は支援者と直接会うことが基本ですが、それが止まってしまい、街頭募金も全くできず、寄付金も少なくなっています。

※1 四肢の筋力低下やしびれ感をきたす末梢神経の疾患(神経炎)。手足の運動や感覚をつかさどる末梢神経に原因不明の炎症が起こり、運動機能の障害や感覚障害が起きる。症状が進行すると歩くことや立つことが困難になることも。
参照:難病情報センター、CIDPマイライフ 他

※2 MECP2遺伝子の重複が原因で起きる進行性重度神経疾患。患者のほとんどが男性であるのが特徴。主な症状として、呼吸器感染症、難治性てんかん発作、肢体不自由や知的障害などがある。
参照:MECP2重複症候群患者家族会 他

新たな不安と取り残された感覚

〈西村〉 アンケートの自由記述をもとに、回答者が抱く感情を探る調査を行いました。その結果をみると、昨年の5月頃は「悲しみ」「不安」がとても大きく、いったん12月ごろまで段々と減りましたが、感染者数が再び増加した今年1月頃にまた大きくなりました。反対に「幸福」は、調査のたびに減少しています。今年1月のデータは他の時期と比べて感情の幅が小さくなっていることとあわせて考えると、これは不幸になったというより、慣れてしまった、諦めに近い感情ではないかと分析しています。

患者・家族の感情の変化

河越 感染がなかなか収まらない中で、一時は皆さんが感染対策に気を付けていましたが、政府の感染対策や世の中の緩みといったものを目の当たりにすることで、諦めに近い感情になってきているのかもしれません。学校の制限は今なお厳しく、子どもは頑張っているのに大人は何をしているのか、という思いもあります。

 コロナが始まった頃の悲しみや不安は、震災が起きた時の感情と似ていました。ただ震災はその後、復興に向けて、少しずつでも希望につながる部分がありましたが、コロナはなかなか先が見えない怖さを感じます。いつまでこの緊張感が続くのだろうという不安があり、なかなか希望につながらないのが現状です。ワクチンが登場してからは、自分たちはワクチンを打っても大丈夫なのかという新しい不安が加わりました。

池崎 GоTоトラベルキャンペーンが始まった際に、基礎疾患のある方と高齢者は家にいてくださいという呼びかけがありました。世の中ではちょっとコロナが収まってきて、人々が外に出始めましたが、私たちは家にいなくてはいけないんだという、当たり前のことだとわかっていても、取り残されたような感じがしました。

〈西村〉 幸福感が減ってきたのにはいろいろな原因があるのですね。昨年、芸術的なことが全て制限されたことがありましたが、そうした関係者からお話を聞いて同じような諦めがあると思いました。ワクチンについても相談する場が必要ですね。どこに行けば正しい情報を入手できるのか、これからも考えていきたいですね。

増えた家族との時間に喜び

〈西村〉 不安の多いコロナ禍ですが、何か新しい発見や楽しかったことはあったでしょうか。

河越 ベランダにホットプレートを出して家族でランチをしました。この状況下でなければそんなことはしなかったと思います。ちょっとしたピクニック気分を味わえました。

池崎 読み方もわからないような海外の料理を主人と作ることにはまりました。オンラインで遠くにいる友だちと話せたことやラジオで全国の難病の方とつながれたこと、現地で受けたこともある海外の研修会に参加できたことも良かったですね。

森 幸子

滋賀県在住。1984年に全身性エリテマトーデスを発症。日本難病・疾病団体協議会 前代表理事。全国膠原病友の会 代表理事。

 コロナ前は1か月のうち半分くらいしか家にいませんでしたが、今は家族全員で一緒にいる時間が増えました。すぐ近くに住む息子夫婦や孫と一緒にご飯を食べたりする時間は、これまでにはあまりないものでしたが、とても楽しいですね。

〈西村〉 コロナ禍で得られた気づきや今後に生かしたい教訓はありますか。

 オンラインとリアル、双方のコミュニケーションのメリットを学んだ気がします。コロナ禍でたくさんコミュニケーションをとれたのはオンラインのおかげです。ただ、空気感や微妙な感情をくみ取るという意味では、直接会うことが大事ですね。

河越 これまでなかなかお会いできなかった疾患の研究をしている先生方と、オンラインで話をすることができました。今後そういう機会をもっと増やしていければと思います。

池崎 手洗いやマスクをしていなかったからコロナに感染したというような、間違った自己責任論が広まっている気がします。私たちの情報発信も、そういうことを助長しないように気をつけなくてはいけないと思っています。

想像力を膨らませ、みんなが生きやすい社会に

〈西村〉 最後に読者へのメッセージをお願いします。

池崎 コロナで生活が変化しましたが、これを機に、病気の人も含めてみんなが社会参画できる世の中になれたらいいなと思います。私が高校で数か月入院した時には授業を受けることができませんでしたが、今ならオンラインで授業を受けられるかもしれません。そういう可能性が少しずつ広がることで、良い方向に向かうのではないでしょうか。いまは変革の時と捉えることもできると思います。「誰一人取り残さない、みんなが生きやすい社会にしていきませんか」と伝えたいです。

河越 障害や疾患を持った人たちにとって便利なことは、誰にとっても便利です。肢体不自由児にとってスロープやエレベーターは必須ですが、歩ける人にとっても便利ですよね。ちょっと立ち止まって、こういう生活だったらこんなこともできるのかなというように想像力を働かせれば、みんな、上手に助け合いながら生活していけるのではないかと思います。

 私自身、発病する前は難病のことを全く知りませんでしたが、難病はいつ誰が発症するかわからない病気なのです。そういう意味で人ごとではなく、自分も発病するかもしれないということを、いったんは考えてみてほしいと思います。共生社会といわれますが、その基本はお互いを知ること。ぜひお願いしたいですね。

〈西村〉 ありがとうございます。いつ自分が感染者になるかもしれないコロナの状況下で、病気というものを身近に感じる人たちが増えたように思います。希少・難治性疾患の方は、身近にいないかもしれませんが、そういう人たちに思いをはせるきっかけになればいいですね。また、疾患を抱えている側からも上手に情報を発信し、丁寧に自分たちのことを知ってもらう取り組みができればと思います。

〈江本〉 今回の調査の解析を担当しました。データを見ているだけではわからない、疾患を持つ当事者と家族の生の声が聞け、様々なヒントにあふれた座談会だったと感じています。読者の方には、希少・難治性疾患を持つ方と自分は、こういうところが一緒だなとか、こういうところが違うな、だからこういう配慮が必要なんだなというようなことを考えながら記事を読んでもらえたらなと思います。そういう想像力の積み重ねが、みんなが生きやすい社会につながるのではないでしょうか。

西村 由希子

希少・難治性疾患を取りまく課題解決に向けて活動する特定非営利活動法人ASridで理事長を務める。

江本 駿

特定非営利活動法人ASridで専従研究員を務める。

ASridについて

ASridは、希少・難治性疾患分野のステイクホルダー(患者や研究者を含む関係者)が抱える広義の課題解決や負担軽減を行うための仕組み及びサービスを「つくる」「つなげる」ための事業や、当該分野に関連する知識の利用と啓発、ならびに研究の促進に関する事業を行い、公共の利益と経済活性化に寄与することを目的として、2014年に設立されたNPO法人です。「to patients, for patients, beside patients」をスローガンに、希少・難治性疾患分野に数多く存在する「ない」を、少しでも「ある」に変えていくべく、多様な事業を展開しています。

CSLベーリングについて

CSLベーリング株式会社は、生物学的製剤のグローバル企業であるCSLベーリング(本社アメリカ)の日本法人です。免疫・希少疾患領域、救命救急・止血領域、及び血友病領域を主要領域としています。日本において生物学的製剤を専門とする企業として設立以来歩みを重ね、2020年で20周年を迎えました。CSLベーリングは、今後とも日本の医療に、ひいては患者さんやご家族の生活の質の更なる向上に貢献してまいります。

CSLベーリング

JPN-OTH-0126