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トップ>HAKUMON Chuo【2013年夏号】>【グローバル人材育成】中央大学英語学会 45年ぶりの英語ドラマ劇公演 大成功の舞台裏もう一つの感動ドラマ

HAKUMON Chuo一覧

グローバル人材育成

中央大学英語学会
45年ぶりの英語ドラマ劇公演

大成功の舞台裏もう一つの感動ドラマ

中央大学英語学会(ESS)はことし創立110年を迎えた。
記念の年に『NOBODY FAMOUS』(有名な人は誰もいない)と題する英語ドラマ劇を5月12日に公演した。
会場の中大多摩キャンパスCスクエア中ホールは立見が出るほどの超満員、劇は成功を収めた。
ESSの英語ドラマ劇公演は1968年以来45年ぶり。当事者には初体験だ。
完成するまでには毎日色を変えていく人間ドラマがあった。

 ヒロインのブレンダは有名になることを夢見る新進女優。親友のヘザーに連れられ、占い師の館にやってきた。主のムーチは「そのうち有名になる」と占い、宝くじの当選番号も予言した。銃を持ってムーチを探す謎の男。ブレンダをスカウトしに来た映画監督メアリー。出演を巡って意見衝突するブレンダとメアリーの間を懸命に取り持つブレンダのマネジャー、ジーナ。

 6人の登場人物は役に成り切っていきいきと演技、英語のせりふを滑らかに口にした。客席には字幕スーパーが映し出される大型スクリーンがあった。

 30分間の公演中、観客はじっと見入り、フィナーレでは大拍手。舞台と客席が一体となった。余韻が残るなか、「製作総指揮」でジーナ役の鍋島千尋ESS会長(法学部3年)が金髪に赤いふちの眼鏡をかけた舞台衣装のまま、「会長あいさつ」に立った。居並ぶOBや関係者へ何度も謝辞を述べたあと「思いつきで始めました」と意外なことを打ち明けた。

伝統の組織、進取の精神

 執行部が新しくなり3カ月ほどたった昨年11月中旬。鍋島会長と伊坂理花副会長(法学部3年、メアリー役)が「私たちの代ならではの活動をしたいね」「何ができる?」「英語劇はどう?」と話し、すぐに行動を起こした。OB諸氏を訪ねては相談し、英語劇で先行する立教、早稲田などの大会舞台を伊坂副会長が見学した。「感動した、私たちも負けてられない」

 副会長から報告を受けた会長が奮い立った。この目で見てやろう。東大で『マクベス』(シェークスピア)を上演していた。「私も感動しまして」。動きは早い。ESS仲間の東京理科大、東京外語大などからはノウハウを学んだ。

 折しも白門祭の参加形態に疑問を感じていた。「たこ焼き売って、ESSで~す」。これでいいのだろうか。もちろん年間活動計画に基づき、ディスカッション、スピーチコンテスト、留学生との交流など伝統のESSらしさは存分に出していた。

 私たちの代ならではの何かを出す、見学して感動した英語劇、先輩から教えられた進取の精神、これらが一つになったとき、「私たちで英語ドラマをやろう」との気運が一気に高まった。

ビジョンの確立

 もう思い付きではなくなった。1月上旬、年度末納会の議題にかけた。「新規事業として英語ドラマを演じます」と鍋島会長。しかし細目に関する質問にたじろぎ準備不足とされ、承認は見送られた。「悲しかったけれども、部員みんなが真剣だからこそ、吟味しなければいけませんでした」

収穫はドラマの終章である。
種まきからつき合った者のみが終章の感動を味わうことができる
(脚本家・倉本聰さんの言葉=読売新聞から)


 やり直しである。再びOB諸氏を訪ね、「ビジョンを明確にしよう」との助言を受けた。ESS総勢327人を率いて取り組む英語ドラマ劇は、歴史の扉を45年ぶりにこじ開ける壮大な事業である。額に鉢巻きをきりりと締める心境になった。

 出演希望者のほかに広く人材を求めた。メールで呼びかけ、会って話をする、悩む背中を押す。活動休止状態の部員にはより多くの問いかけをした。こうした中から出演者、運営スタッフが集まり出した。

 台本が本決まりとなって、配役が決まり、スタッフの役割分担も決まる。機関車の大きな車輪が動き出していく。

 「めきめき上手になっていくキャストがいる、あの人あんなに大きな声を出せるんだ。スタッフは照明、音響、舞台セットなど個々人で工夫をこらしている、私うれしくなって」(鍋島会長)。「若いOBの方々にはお仕事が忙しいなか休日返上で私たちを1日中ご指導くださいました。OBの皆さまからは多額の寄付も頂戴し、本当に感謝しています」(同会長)

 承認を得て、春休みから本格化した舞台けいこが4月に頓挫する。新入生歓迎イベントが目白押しで、部全体の言動が“新歓”へ傾斜していた。1カ月近くも、しぼんだような状態にいた出演者らから「公演できるか不安です」との声があがった。公演は5月12日だ。プロでもけいこ、けいこの連続で初日を迎えるのに、アマチュア集団ならば停滞は絶対に許されない。

 再びやり直しである。「製作総指揮」のもと、けいこに励んだ。「全員がそろうのは週2回。授業やゼミが終わる午後6時ごろから始めて9時過ぎまでやっていました。アルバイトを休んで来てくれた人もいました」とは監督の鈴木恒範さん(法学部3年)。建築現場なら鎚音が鳴り止まない慌ただしさだ。

 「せりふはキャストが自分で英訳します」(占い師役の内野太陽さん=総合政策学部2年)。公演前日のリハーサルでは、そこかしこが磨かれて8時間みっちりけいこ。無駄をそぎ落とし、輝きを増した舞台は、キャスト・スタッフ全員の鋭敏な目そのものだった。

自慢の涙

 5月12日午後3時半過ぎ。中央大学英語学会の英語ドラマ劇『NOBODY FAMOUS』は拍手のなか幕を閉じた。

 ジョー役の加藤光太郎さん(経済学部2年)には演技経験がなかった。銃を持って出てくるシーンでは、けいこ量を伺わせる演技で存在感を示した。「ドラマをやると聞いたとき、まさか自分が舞台に上がるなんて」と驚きながらも、「部屋で一人鏡を見て表情をつくったこともあります。達成感がすごくよかった。中学時代、代打でヒットを打って勝った野球の試合を思い出しました」

 懇親会では舞台裏を支えたスタッフが一人ひとり紹介された。みんながスポットライトを浴びた。鍋島会長は打ち上げなども終えた帰路、「涙が止まらなくなって。つらいこともあったけれど、舞台をやり遂げた、もっとやりたいという気持ちが重なったのだと思います」と胸の内を明かした。ちょっぴり自慢したくなる涙である。

 「思い付きで始めたことですが、私たちは大きなものをつかみました。たくさんの仲間でドラマをつくりました。仲間に助けられました。あなたも誰かの仲間になります、力になります。視野を自分で狭めることなく、視野は自分で広げていくものだと思います」

 「会長あいさつ」で言葉にした思いはいっそう強くなっている。後輩へのメッセージも込めた。思い付きから始まって、ついには歴史を塗り替えた。まさしくアクション・スタート。演技開始を告げるカチンコがいまも鳴っている。

OBの声

大高巽会長
(メリックス社長=1966年卒業)
「私たちが中大に入学した1963年ごろもESSには300人ほどの部員がいました。東京五輪を翌年に控えて英語がますます必要とされた時代。いまの部も似たような雰囲気です。大学を挙げてグローバル人材育成に取り組むなか、ESSも力を発揮して英語力を高めていきたいと思っています、支援は惜しみません」

桑田泰久前会長
(元日動火災保険=1958年卒業)
「ドラマを演じると聞いたとき本当かと思いましたが、実際に見て、部全体で取り組んだことがよく分かりました。立派だった。短期間でよく頑張った。力が入り過ぎていたかな(笑い)。私たちのころはドラマ全盛時代、よく復活してくれた。ありがとう」

メンバー紹介

(写真提供=ESS)

<キャスト>
ブレンダ   川口 治佳(商2)
ヘザー    関口 耀子(文3)
ムーチ    内野 太陽(総政2)
ジョー    加藤光太郎(経2)
メアリー   伊坂 理花(法3)
ジーナ    鍋島 千尋(法3)

<スタッフ>
道具     大湖 光代(商2)
       林  文佳(文2)
衣装     岡本 仁華(商2)
音響     古川 真衣(商2)
照明     木村 優希(商3)
字幕     今水 悠貴(法2)
       鈴木 恒範(法3)
       関口 耀子
広報     内野 太陽
パンフレット 阿部 暢朗(法3)
監督     鈴木 恒範
製作総指揮  鍋島 千尋

45年前の世相

1968年・昭和43年/札幌医科大の和田教授が日本初の心臓移植手術。川端康成氏がノーベル文学賞受賞。東京・府中で3億円強奪事件発生。プロ野球では巨人の長嶋、王両選手が大活躍した。