「小児外科医がいるたよりになる病院」特集

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日本ではまだ数少ない小児外科医。専門医が限られている中で、0歳から15歳頃までの幅広い疾患へ対応。ヘルニアなど疾患によっては、低侵襲な腹腔鏡手術で子どもに負担の少ない手術を提供する。さらに、術後も成人にいたるまで継続的なサポートとケアが求められる疾患もあり、子どもに寄り添う重要な役割を担う。

浮山 越史

杏林大学医学部付属病院
小児外科診療科長・教授

浮山 越史

うきやま・えつじ/1986年慶應義塾大学医学部卒。国内の複数の病院で勤務。ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院の留学を経て、2003年より杏林大学医学部小児外科に勤務。日本小児外科学会次期会長。日本小児救急医学会副理事長。


子どもに負担の少ない
低侵襲な腹腔鏡手術が主流

 小児外科は、心臓と脳を除く、子どもの体のほぼ全ての部位に関する外科的治療を行う専門分野です。対象は0歳から15歳頃までと幅広く、生まれつきの奇形、外傷、腫瘍、炎症性疾患など、さまざまな健康問題に対処します。
 全体的に、①鼠径ヘルニア・陰のう水腫(脱腸)、②臍(さい)ヘルニア(でべそ)、③停留精巣、④急性虫垂炎、⑤腸閉塞(へいそく)の手術件数が多く、当院でも①、②、③が特に多くなっています。手術は、低侵襲な腹腔鏡手術が広く採用されています。同手術は、数カ所の小さな切開を通して手術器具とカメラを挿入し、体内の手術箇所を映像で確認しながら行います。開腹手術に比べて出血が少なく、傷口が小さく、回復が早いため、子どもの小さく脆弱な体に対する手術の影響を最小限に抑えることができる利点があります。
 ただ、小児外科手術の最大の難しさは、子どもの体格が新生児期の約3㎏から思春期にかけての50~60㎏まで大きく変化することに対応しなければならない点です。体格の変化に伴い、手術法も大きく異なる上に、手術中に加える力加減も調整しなければなりません。新生児の繊細な組織から、より成長した子どもの強靭な組織まで、幅広い範子どもに負担の少ない低侵襲な腹腔鏡手術が主流囲の手術技術と細やかな配慮が求められます。


日頃から近隣の小児医療・救急を把握しておくことが大切

 日本の小児外科の専門医は約700人、腎臓や精巣などの病気を扱う小児泌尿器科の専門医は約200人と、海外に比べて少ないのが現状です。当院は、近隣の総合病院と密接に連携し、専門的な治療や手術が必要な複雑な症例に対しても迅速な対応が可能ですが、医療機関によっては、専門医がいないため、成人が対象の一般外科で小児外科の手術を行うこともあります。お子さんをお持ちの保護者の方は、日頃からご自宅の近くにある小児医療・小児救急医療機関の場所を確認し、把握しておくことが重要です。子どもは予期せぬ事故や急病に見舞われることがあります。小児救急の場所を事前に知っておくことで、いざという時、慌てずに適切な医療機関にすばやく連絡を取ることができるはずです。
 小児外科で扱う疾患の中には、子どもの頃に手術を日頃から近隣の小児医療・救急を把握しておくことが大切「小児外科医がいる頼りになる病院」特集新生児から15歳までの多数の疾患を担当。術後も子どもに寄り添う小児外科医行ったとしても、成人になるまで、そして成人後も引き続き経過を見守らなければならないケースがあります。それは術後の健康管理だけにとどまらず、子どもの家庭環境や心の成長にも寄り添っていかなければならないからです。そのため、治療や手術だけでなく、長期的な視点で患者をサポートし、成長や発達の各段階で必要なケアを提供してくれる小児外科医と信頼関係を築いてほしいと思います。



社会医療法人財団 聖フランシスコ会 姫路聖マリア病院