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医療法人 光誠会 しろばとクリニック しろばとクリニック自分らしく生き、幸せな最期を迎えるために
理想の在宅医療をめざし、普及と充実に尽力

近鉄八尾駅近くにある「しろばとクリニック」は2010年4月に開業。一般診療、検診、在宅医療の3本柱で地域の人たちの健康を支えてきた。特に在宅医療に注力し、毎年約120人を在宅で看取っている。近年は老人ホームでの看取りが増加傾向にあるなか、幸せな最期を迎えるために在宅医ができることは何か、老人ホームの施設選びではどんな点に留意すべきかなどについて、栗岡宏彰院長に伺った。

栗岡 宏彰

院長
栗岡 宏彰

くりおか・ひろあき/日本内科学会認定総合内科専門医、日本救急医学会認定救急科専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。



「寄り添う」とは、患者の「自分らしく生きる」を叶えること

 栗岡院長は「自分が関わった患者さんは人生の最期のときまで責任を持って寄り添いたい」と同クリニックを開業。以来13年間にわたって八尾市を中心とした在宅医療に尽力してきた。2023年は年間約120人を在宅で看取っている。
 末期がんや神経難病などの患者、他の施設での受け入れが困難な人などが入居対象の「しろばと緩和ケアホーム」(八尾市山賀町)は2015年に開設された。医療と介護サービスを提供し、自宅での暮らしと同じような生活ができる療養施設だ。
 同施設は24時間365日の診療体制がとられ、看護師が常駐。栗岡院長が毎日巡回する。起床や就寝時間、外出や外泊、飲酒や喫煙、私物やペットの持ち込みなど、施設利用に際しての制限はほとんどなく、面会も24時間可能。本人のペースに合わせ、自宅と同じように過ごすことができる。自宅で療養中に容体が悪化したら施設に来てもらい、落ち着けばまた自宅に戻る、あるいは、ふだんは施設で過ごし、最期のときは慣れ親しんだ自宅に戻るといったこともできる。
「患者さんにはここに入院するのではなく、自宅に次ぐふるさとと思って入居してほしいと伝えています。医療、介護サービスを受けながら自宅とほとんど変わらない生活ができるため、患者さんやご家族からはとても喜ばれています」と栗岡院長。病院と老人ホームとの中間的な位置付けの施設として注目され、全国から見学に訪れる関係者も多いという。
 長年、在宅医療の現場で患者や家族と真摯に向き合ってきた体験から、栗岡院長はこう話す。
「患者に寄り添うとは、その方が何をしたいのか、どうすれば自分らしく生きられるかを叶えて差し上げることだと思っています。寒くて外に行きたくないのに天気がいいからと言って外に連れ出したり、本人が望んでもいないのにレクリエーションに参加させたり、というのは寄り添い方が違います。いつも観ているテレビ番組、食べたい料理、楽しみにされている趣味など、その方のしたいことができる体調、環境を整えるために、医師は痛みを取り除く、看護師は病状の変化をよく診る、ヘルパーは日々の介護を通じて快適に過ごしてもらうというようにそれぞれの職種が自分の役割を果たしてその方を全方位でしっかりとお支えするのです。それがうまくできてこそ、人生の残りの日々を心穏やかに過ごしていただけると思うのです」(栗岡院長)

しろばとクリニック スタッフ集合写真


在宅医に求められる資質とは

 その人らしい最期を迎えるためには「病院医療と在宅医療の違いを知り、どのような治療をどの程度行うことがその人にとって最も幸せなのか、在宅医は患者の人生に寄り添いながら適切な判断や処置をすることが大切」と栗岡院長は感じている。
「たとえば、それまで元気だった83歳の女性が、だんだん食事を摂れなくなり体重も減って、ついには倒れてしまい、家族が救急車を呼んだというケース。病院に運ばれた彼女は『食事が摂れないなら点滴しておこうね』と点滴を受け、自宅に帰されました。病院は病気を治療する場所ですし、病院の医師は彼女のことを深く知っているわけではないので、その時の容体に応じた処置を講じることしかできません。一方、普段から彼女と向き合っている在宅医なら、食事が摂れず痩せてきたということは生きていくための栄養が摂れておらず体が破綻寸前にあると判断し、場当たり的な点滴ではなく、不足分を補いつつ今の暮らしを維持する別の治療法を提案することもできるわけです」
 高齢者が病院に何週間も入院すれば、たとえ症状が治ったとしても、退院後、一人でトイレにも行けないほどADL(日常生活動作)が低下し、結局寝たきりになってしまうといったケースもよくあるという。
「在宅医が患者の体の状態のみならず、生活スタイル、本人の価値観、家庭環境などを理解し、患者の人生に寄り添えているかどうか。日頃からそのように接していれば、その時々の容体、本人や家族の要望に応じた的確な診療ができます。在宅医にはそうした資質やスキルが求められていると思っています」と栗岡院長は語る。


老人ホームでの看取り
ケア体制の充実に期待

 厚生労働省の人口動態統計(2022年)によれば、日本では病院で亡くなる人が65.9%(2021年の数値。20年は68.3%)、自宅が17.2 %(同15.7 %)、老人ホームが10.0%(同9.2%)で、病院は減少傾向、自宅と老人ホームで亡くなる人の割合は増加傾向にある。
「老人ホームではここ数年、入居者の最期を施設で看取る環境づくりを行ってきました。というのも、施設での看取りができないと利用者に選んでもらいにくいという現状があるからです。ただし、看取りができる、とうたっている施設でも、症状が急変した場合、看取りケア体制が十分でないため、従来のように救急車で救命救急搬送され、病院で亡くなるケースもあります。必ずしも終末期や在宅医療に精通した医師や看護師がいるとは限らず、前述したような寄り添いができるかどうかはその施設によります。ですから、入居されるご家族が施設を選ばれるときには、食事がいい、景色がいい、施設がきれいといった雰囲気だけではなく、どんな医師がいるか、非常勤医師か在宅医か、緊急時や24時間の対応は可能か、看取りに向けた医療のあり方はどうか、介護と医療の連携がうまくなされているかなど、その施設の看取り介護体制を事前によく調べてみることをおすすめします」
 来年の2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化が加速。「『2040年までの間に41万人もの死に場所が不足する』との試算もあります。問題解決のためには自宅や施設での看取りの普及と充実が期待されており、今後は自宅のみならず、老人ホームも看取りをしっかり担うことがより求められるようになるでしょう。利用者の意識が高まれば老人ホームでの看取りのあり方はもっとよくなっていくはずです」
 理想の在宅医療環境をめざし、栗岡院長は「やお多職種連携の会」を立ち上げ、月1回勉強会を開催。地域での横の繋がりを深め、多職種が連携することで患者の満足度を高める取り組みも続けている。
 末期がんなど、どうしても救えない命はある。しかし「心だけは救ってさしあげたい」と栗岡院長。「幸せな最期を迎えられるよう、これからも在宅医療の質を上げられるよう努めてまいります」と語った。

著書『自宅で最期を迎えたい ~在宅医療の現場から~』

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