一次脳卒中センター「脳卒中治療」に強い病院特集
脳神経外科部長
脳卒中センター長
垣田 寛人
かきた・ひろと/2003年兵庫医科大学医学部卒。医学博士。2021年から現職。日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医。
脳神経外科の専門病院として24時間365日、救急患者を受け入れるシミズ病院。地域の方々のための「断らない医療」を推進してきており、地元から「脳神経外科ならシミズ病院」と厚い信頼が寄せられている。
脳卒中は治療開始までの時間が予後に影響する。同院では救急隊と連携し、連絡を受けると同時に態勢を整える。脳神経外科部長・脳卒中センター長の垣田寛人医師は、
「急性期の脳梗塞の血栓回収などに対しては特に早く検査し、診断して治療を開始することが重要です。当院では医師、看護師などスタッフが一丸となって、搬送から60分以内の治療開始を目指します。脳神経外科の専門病院だからこその小回りが利くことが当院の強みです」と言う。
2021年には日本脳卒中学会認定の「一次脳卒中センターコア施設」になり、地域の中核病院として位置づけられた。
脳卒中治療では血管内治療の進歩がめざましい。同院では体への負担が少ないこの治療に早くから取り組んできた。
急性期脳梗塞に対しては血栓溶解療法(t-PA療法)や、カテーテルを挿入しての血栓回収療法などが行われる。
くも膜下出血には、脳動脈の血管にできた瘤(脳動脈瘤)にコイルを入れ、血流を塞ぐコイル塞栓術が行われる。
また先進的な治療として母血管に細かな網目状のステントを留置して脳動脈瘤の破裂を防ぐフローダイバーターステント治療が注目されているが、同院では2023年から治療を開始している。
「これにより、今までは経過を見るしかなかった大きな脳動脈瘤の破裂も防げるようになりました」(垣田部長、以下同)。
さらに、W-EB(Woven EndoBridge)というデバイスも開発されているが、同院でも近々導入予定だ。
治療には脳神経外科専門医5名(うち血管内治療専門医3名)を中心にあたる。開頭手術も含め、幅広い治療法から患者に最適な治療を選択できることが同院の強みと言える。
急性期治療後には早期からのリハビリテーションの充実が欠かせない。同院ではSCU(脳卒中ケアユニット)が18床設けられ、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士などのコメディカルスタッフが連携して在宅復帰、社会復帰をサポートする。
「各分野で専門性の高いケアがされています。患者さんの家族構成や家の構造まで綿密に考えます。また、脳卒中は再発に不安を感じる人もいます。当院には深夜でもお盆・正月でもスタッフが常駐しています。患者さんには、退院後、何か不安なことがあればいつでも来てくださいとお伝えしています」
このような患者に寄り添う姿勢が地元から信頼される所以だ。
脳動脈瘤の大きさが10mmを超える大型脳動脈瘤は、コイル塞栓術を施行しても血液を十分に遮断することが難しく、根治が難しい、もしくは再治療が必要となることも多い。この大型脳動脈瘤の新しい治療法として注目されているのがフローダイバーターステント治療。同院では2023年から治療を開始している。
医療法人 清仁会
シミズ病院
〒615-8237 京都市西京区山田中吉見町11-2
TEL.075-381-5161
https://www.shimizu-hospital.or.jp
国道9号線「千代原口」交差点南西角にある。
「阪急桂駅」から徒歩15分(無料巡回バスあり)。
「JR京都駅」から市バスで40分「千代原口」
下車徒歩3分。「JR桂川駅」からタクシー15分。
院長
矢津 匡也
やづ・まさや/1992年大阪医科大学医学部卒。医学博士。2013年亀岡シミズ病院副院長、2017年洛西シミズ病院副院長、2021年から現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医。
シミズ病院グループ2番目の病院として1988年に開設された「洛西シミズ病院」。
ここには「整形外科」「ガンマナイフセンター」「回復期リハビリテーションセンター」という3つの特色ある医療があり、先進的な取り組みが行われている。
その中の「整形外科」には、「脊椎・脊髄外科」「膝・股関節外科」「肩の外科」「手外科」「足の外科」と幅広い部位に対応する5つの領域があり、常勤医8名、非常勤医7名の総計15名が診療にあたっている。この医師の層の厚さも地域住民から信頼されている所以だ。
院長で脊椎・脊髄外科を担当する矢津匡也院長は、
「整形外科は疾患が多岐にわたり、治療法も細分化され、それぞれに専門性が高まっています。体のどこかに痛みがあり、動きにくいなどの困ったことがあれば、当院ではその部位の専門の医師が診察、治療にあたるので気軽にご来院ください」と語る。
幅広い領域をカバーできるため、たとえば、肩に痛みがあり、さらに膝にも疾患がある場合も、病院内で速やかに専門医間の引き継ぎが行われることが利点だ。
「数か所骨折している外傷の場合なども専門医が多くいることで適切な治療ができると思います。また、疾患が脳神経にかかわる可能性がある場合もグループのシミズ病院にすぐに引き継ぐことができます」(矢津院長、以下同)。
治療は投薬による治療、サポーターやコルセットを使う装具療法、温熱・光や牽引を施す理学療法などの保存的療法と手術での治療が行われる。手術の場合は症状に合わせ、内視鏡手術など体の負担の少ない手術を第一選択にしている。
昨今、膝・股関節外科では膝・股関節の人工関節置換術が注目されていて、同院でも実施されている。手術前のMRIからインプラントを入れるためのオーダーメイドのガイドを作り、それを基に骨を削る。このようにすることでインプラントがぴったり適応するという。
「ただ、当院は他の病院に比べ、手術にもっていくタイミングが遅めかもしれません。できるだけ手術をせずにまず保存的治療を丁寧にした上で、どうしても手術をしないといけない場合には、患者さんに納得のいく説明をした上で手術を実施しています。それは私自身や自分の家族に置き換えて考えたときに、手術を受けると聞いたら少し抵抗感があるからです。当院では各先生方がこだわった治療法を確立し、取り組んでいます。症状と患者さんの希望をうかがった上で、保存的療法であれ、手術であれ、ベストな治療法を選択します」。
人工関節置換術が脚光を浴びる中、保存的療法にも注力する姿勢からは、むしろ同院の自信のほどが感じられる。
院内に100床の「回復期リハビリテーションセンター」があることも、ここで受診する場合の利点になる。「リハビリテーション科専門医6名に加え、100名超の理学療法士らがいて、専門性の高いリハビリを365日行い、患者さんの社会復帰、在宅復帰を後押ししています」
また、地域のクリニックとの連携にも取り組む。矢津院長が最近懸念しているのが、骨粗しょう症の増加だという。
「骨粗しょう症は骨折しやすく寝たきりになったり、肺炎を誘発したり、寿命を縮める危険性がある疾患です。当院では地域の皆さんの骨密度を測定して治療方針を決め、地域のクリニックで投薬などの治療をしてもらうシステムを作っています」
社会の高齢化に伴い、今後も整形外科領域の疾患は増えていくと思われる。同院では予防から治療、手術、リハビリまでを総合的に行い、地域住民の健康に貢献している。
医療法人 清仁会
洛西シミズ病院
〒610-1106 京都市西京区大枝沓掛町13-107
TEL.075-331-8778
https://www.shimizu-hospital.or.jp/rakusai/
国道9号線「国道沓掛口」交差点から西へ400mの国道沿い南側。「JR京都駅」「JR桂川駅」「阪急桂駅」からバスまたは病院送迎車利用。