病院の実力2024 ＞ おおたかの森病院

理事長・院長
松倉　聡

まつくら・あきら／1993年東京大学医学部卒業。同大学医学部附属病院 第２外科入局。99年国立がんセンター中央病院 肝胆膵外科チーフレジデント、2001年東京大学附属病院 肝胆膵・ 人工臓器移植外科 助教。05年よりおおたかの森病院院長、13年医療法人社団誠高会理事長就任。日本外科学会認定外科専門医、日本肝臓学会認定肝臓専門医。

消化器・肝臓内科　医長
安達 哲史

あだち・さとし／2010年千葉大学医学部卒業。日本内科学会認定総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医・関東支部評議員、日本消化器病学会認定消化器病専門医、緩和ケア研修修了。

　おおたかの森病院は千葉県柏市を拠点に、東葛北部5市約140万人の2次医療圏、さらには県外の救急患者も24時間365日で受け入れる体制を整えた急性期病院だ。
　同院は2005年の開院当初から高度な専門性を持って地域医療に貢献してきた。特に松倉聡院長を筆頭に肝臓・胆嚢・膵臓を専門とする医師を複数人擁し、気づいた時には根治不能な症例が多いがん治療に積極的に取り組んでいる。　肝臓・胆嚢・膵臓のがん手術では臓器の一部または全体の切除が必要なことがある。これらの臓器は特殊な領域で、その働きは複雑な血管ネットワークで支えられているため、血管再建術の難易度が非常に高い。
「血管再建術は、がんの進行度合いによってさらに難しいものになります。手術前には詳細な検査と診断が行われ、栄養指導も含め適切な手術計画を策定します。ステージⅡまでのがんなら、一刻も早い手術が予後を決定します」と語る松倉聡院長は、これまで国立がんセンターや東大附属病院肝・胆・膵外科での豊富な執刀経験を持ち、院長を頼る患者も多い。
　手術を良好な状態で進めるために欠かせない処置が黄疸治療だ。胆管がんや膵頭部がんでは、腫瘍が胆汁の流れを阻害するため重度の黄疸を発症する。黄疸が出ると合併症のリスクを増加させたり、麻酔の管理が難しくなったり、肝機能低下で手術の成功率を下げる原因となる。そのため、口から内視鏡を入れ十二指腸経由で胆管や膵管に挿管して、造影剤を注入しX線で観察するERCP（内視鏡的逆行性胆道膵管造影）を行い、胆管の狭窄部分にステントを留置して胆汁を排出させる。こうした処置による迅速な黄疸の抑制が、時間との戦いとなるその後の手術にとって、大きなアドバンテージとなる。

ERCPとPTCDで術前処置を迅速に行う

　松倉院長が大きな信頼を置くのが、このERCPを担当する消化器・肝臓内科の安達哲史医長だ。2016年1月から2023年12月までの8年間で約1400例（2023年1月から12月では142例）の処置を行い、挿管率98.7％の実績を誇る。またERCPの合併症ともいえる膵炎になる確率も、一般的に10％といわれるところを2～3％に抑えている。
「肝臓・胆嚢・膵臓の手術や処置法で標準化が進んでいるのは状態が良いケースのみで、ほとんどは疾患の進行具合によって人それぞれです。ですからERCPも今までどれだけの件数を行ってきたかという経験が重要になります」（安達）
　ERCPが困難な肝門部胆管がんでは、消化器外科医である松倉院長が肝臓の外から針を刺すPTCD（経皮経肝胆道ドレナージ術）で胆汁を排出する。この処置もエコーで見ながら細い胆管を刺す繊細な手技で、熟練した技術が求められる。このように内科と外科が連携する迅速な術前処置が、肝臓・胆嚢・膵臓領域の難しいがん治療を成功に導いている。
「この領域のがん治療のポイントは、診断と処置を早め、いかに短期間で手術に持っていけるかに尽きます。そのためには医療スタッフ間の信頼と連携がとても重要になります」と松倉院長は力説する。