手外科 手指の治療に実績ある病院特集

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手は「さわる」「持つ」「つまむ」といった日常生活動作を担うだけでなく、手話、拍手、ダンスなど感情や表現の手段にも使われる多様で繊細な器官です。ケガや病気によってひとたび手が使えなくなると大きな不便が生じます。手の疾患に関する診療を専門的に行うのが「手外科」です。主な疾患や治療法などについて、日本手外科学会の岩崎倫政理事長にお話を伺いました。

岩崎 倫政

取材協力
日本手外科学会 理事長
北海道大学大学院医学研究院
専門医学系部門 機能再生医学分野
整形外科学教室 教授
岩崎 倫政

いわさき・のりまさ/旭川医科大学卒業。北海道大学医学部整形外科入局、Johns Hopkins大学整形外科留学を経て、1998年北海道大学大学院医学研究科外科系専攻博士課程修了。2012年10月より現職。



複雑で精緻な手の専門的治療を担う手外科医

「手外科」は肘から先の手首や手、指のケガや病気の診療を担っています。
 手は皮膚、神経、血管、筋腱といった軟部組織や骨、関節などが集まる複雑で精緻な器官です。また、手は体の中で最もケガをしやすい部位でもあります。ですから、整形外科、あるいは形成外科の専門医としての資格を持ち、かつ手に関する専門研修や試験を受けて合格した手外科医が治療にあたっています。
 顕微鏡を用いたマイクロサージャリー(顕微鏡拡大下での手術)の技術を持ち、たとえば切断指の再接着、上肢や下肢の骨、皮膚の再建といった微細な手技に習熟しているのも、手外科医の特徴の一つです。


特に多い疾患とその治療法

 手の疾患で特に多いのは手根管症候群、腱鞘炎(ばね指)、手指の変形性関節症、橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折、などが挙げられます。順番に説明していきましょう。
 手根管症候群というのは、手首の正中神経が手根管というトンネルで圧迫され、中指などにしびれや痛みが出る病気です。飲み薬や、手の使い方を制限して安静にするなどの保存療法を行っても治らない場合は内視鏡を用いて神経を圧迫している靭帯を切離し、圧迫を解除する鏡視下手根管開放術が広く行われています。妊娠中や更年期の女性に多く、症状が強ければ手術の選択をされた方がいいでしょう。
 腱鞘炎は指の付け根付近(MP関節と呼ばれる部分)に痛みや腫れが生じる障害です。進行するとばね現象(弾発)が生じます。これをばね指といいます。親指に多く発症します。治療は装具を用いての固定や、ステロイド注射をして症状を抑えるのが基本です。保存療法で改善されないときや指が曲がったまま伸びないなど症状が進行した場合は腱鞘の一部を切離して腱への圧迫を解除する手術を行います。
 手指の変形性関節症では、指の第一関節(DIP関節)が腫れたり痛んだりするヘバーデン結節、指でつまむ時や瓶の蓋を開けるときなど、親指に力を必要とする動作をする際に付け根の関節が痛む母指CM関節症などがあります。これらは加齢やホルモンバランスの変化が関係しているとの研究もあり、40歳代以降の女性に多く見られます。飲み薬や装具で動作を安定させても痛みが軽減しないときは、手術という選択肢もあります。近年盛んに行われている内視鏡下の手術は患者様の体への負担が少ない低侵襲手術が基本で、日々進化を遂げています。


上肢の変形や破壊を矯正
機能回復をはかる新しい治療法

人工手関節(画像提供:帝人ナカシマメディカル株式会社)

人工手関節
(画像提供:帝人ナカシマメディカル株式会社)

 閉経後の女性や骨粗鬆症によって骨が脆弱になった高齢者などに多いのが、転倒して手を突いたときに骨折する橈骨遠位端骨折です。手首に強い痛みや腫れが出て、伏せたフォークのように変形するケースがよく見られます。昔はギプスで固定していましたが、最近では骨接合プレートを用いて骨を正常な位置で固定する手術をすることが多くなっています。
 近年では、上肢の骨折後、変形したまま治ってしまった場合、三次元シミュレーションデータで設計された骨切りガイドと接合プレートを用いる「変形矯正カスタムメイド治療」が行われています。これは個々の患者様の骨の状態に応じて最適な骨切りやプレート固定をすることで、複雑な変形を正確に矯正する先進的な治療法です。
 関節リウマチによって手首の関節が破壊された患者様に対しては、「人工手関節」があります。これまで手関節が機能不全に陥り痛みが激しい場合、装具を装着して痛みの軽減をはかる治療法しかなかったのですが、人工手関節に置換することで、痛みの除去だけでなく手関節の動きも改善できるため、関節リウマチに苦しむ患者様にとってはQOL (生活の質)を向上させる治療として注目を集めています。


手の悩みや相談は全国の手外科医へ

 日本手外科学会では現在、手外科の診断、治療のスペシャリストである手外科医のことやその活動などについて、もっと知っていただくことや、若手医師の教育、地域格差の解消、研究、治療成果を世界の場で積極的に発信することなどに力を入れています。
 手は動きによって感情をあらわす器官でもあり、機能面だけでなく整容面も大切です。手指が変形するなどして、もう治らないだろうと諦めている場合でも、現在では医療技術の進歩により元の状態に近い形に治せる可能性も十分にあります。
 手に関する専門的な診療を行う手外科の存在が広く認知されて適切な医療を受けていただきたく思っています。学会のホームページには全国の手外科医が掲載されていますので、手に関する悩みや相談があれば、お近くの手外科医を検索してみてください。



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