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東北大学病院 ロゴ 東北大学病院リアルタイムにMRI画像撮影可能な
がん放射線治療の先進機器を導入

東北大学病院は宮城県を中心に東北地方で先駆けとなる様々な医療を提供しており、2022年2月には「MRリニアック」を導入。放射線治療中にリアルタイムでMRI画像を撮影することで、より精度の高い照射が可能になった。

神宮 啓一

東北大学病院
放射線治療科科長・教授
神宮 啓一

じんぐう・けいいち/福岡県出身。2002年に東北大学医学部卒業。同放射線治療科に入局。放射線医学総合研究所重粒子医学センター、米国スタンフォード大学留学などを経て、2012年4月に東北大学大学院医学系研究科放射線腫瘍学分野教授に就任。17年から東北大学病院病院長特別補佐を兼任。



MRIとリニアックを一体化
より効果的な治療が可能に

 東北大学病院では、東日本大震災直後の2012年に「先進医療棟」の建築を計画。2018年に完成を迎えたが、東北大学病院放射線治療科科長の神宮啓一教授は、先進医療棟の計画当初より次世代型の放射線治療装置「MRリニアック」の導入を考えていたという。
 リニアックとは、がんの放射線治療に使用されるエックス線照射機器。多方向から照射でき、さまざまながん治療に使用されている。一方、 MRIは磁石と電波を利用して体内を撮影するもので、軟部組織(筋肉、血管、皮膚など)の描出に優れている。 EUのメーカーとオランダのユトレヒト大学が共同開発し、世界で約50台、日本では3台設置されている。北日本で設置されているのは東北大学病院が唯一。
 神宮教授はこの機器について「放射線治療のブレークスルーになる」と力を込めて話す。
「メリットは3つあります。1つはMRI搭載なので軟部組織(筋肉、血管、皮膚など)がはっきりと映し出されること(写真参照)。がんの形状がはっきりと分かり、その日のMRIに合わせて放射線を照射する部位を設計し直すため、正常組織への影響が少なくできます。2つ目は撮影後わずか0.2秒差でMRI画像が見られるので、患者が動いたり、呼吸など内臓の動きにより生じるズレを即座に確認できる。そして3つ目ががんの質まで分かることです」(神宮医師、以下同)
 3つ目の「がんの質」とは、たとえば酸素濃度が低いがん細胞は放射線が効きにくいというような、がんがもつ性質を意味する。 MRIは、この「がんの質」も画像化することが可能なため、放射線量を高めて効果的に照射することもできる。
 MRIの磁場強度は1.5ステラあり、1回の治療にかかる時間は40~50分程度。形状は筒型のため閉所恐怖症の方は注意が必要。また、体内に金属を埋め込む手術をしている人も対象外となる。

日本では2台目のMRリニアック導入で、2022年2月より本格稼働

日本では2台目の導入で、2022年2月より本格稼働。主に前立腺がんの治療を行っており、今後は他のがんにも治療を拡大していく。

右がCT画像。がんの輪郭がはっきりしない。MRI(左)では筋肉や血管などがはっきり映し出される

右がCT画像。がんの輪郭がはっきりしないため、照射範囲を広めにとり、がん周囲の正常組織が耐えられる程度まで抑えた線量で照射する必要があった。ところがMRI(左)では筋肉や血管などがはっきり映し出され、がんの位置や輪郭も明確なので、正常組織の被曝が少なく、より正確に強い線量で照射することが可能。



照射回数はわずか5回
働き盛りでも無理なく治療

 このMRリニアックは22年2月から稼働。これまで112例を治療してきた。このうち100例が前立腺がんである。
「男性特有のがんである前立腺がんには多様な治療法が開発されていますが、中には体にメスを入れたくないという方もいます。また、放射線は通院でも可能。ですから、中高年の働き盛りの男性や、手術を避けたい高齢者に向いています」
 さらにこのMRリニアックなら、従来のリニアックよりも正確に強い線量で照射することができるため、通常は照射が40回必要なケースでもわずか5回で終了できる。通院期間も従来の2か月から10日間程度まで短縮できるので、患者の身体的負担が軽減される。従来型と同様に保険が適用されるため、3割負担なら費用は20万円程度。
 同院では、今後、肝臓、膵臓、腎臓、脳などのがんにもMRリニアックを使用していくという。
「特に制限は設けず、全てのがんを対象としていきたい。ただし、がんには多くの種類があり、その種類によっては、この治療が向かないものもありますが、このMRリニアックは放射線治療の中でも先進的であり、有力な選択肢の一つとなりますから、ぜひご相談いただきたいと思います」


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