北日本唯一の重粒子線治療施設が本格稼働。10種類以上のがんに対応

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山形大学医学部東日本重粒子センター 山形大学医学部東日本重粒子センター北日本唯一の重粒子線治療施設が本格稼働。
10種類以上のがんに対応

2022年に5種類のがんで保険適用が拡大し、注目を集める重粒子線治療。東北・北海道エリア初の山形大学医学部東日本重粒子センターが担う役割と治療の特徴を聞いた。

根本 建二

山形大学医学部
東日本重粒子センター長
理事・副学長
根本 建二

ねもと・けんじ/1982年東北大学医学部卒業。2006年山形大学放射線腫瘍学講座教授、2016年~2020年3月同大学医学部附属病院院長。2020年4月より現職



特別な治療から身近な治療へ

 東北・北海道エリア初の重粒子線がん治療施設として2021年2月に治療を開始した山形大学医学部東日本重粒子センターは、2022年10月より本格稼働した。
「前立腺がんの治療を始めとして、段階的に治療対象を広げてきましたが、これで当初から予定していた(先進医療含む)すべての治療が可能になりました」と根本建二センター長は語る。
 国内の重粒子線がん治療施設としては7ヵ所目。これまで東北や北海道地域の人たちが重粒子線治療を受けるには高いハードルがあった。保険適用外のがんの治療費は高額になるうえ、治療施設は関東より西の地域にしかない。長距離移動に加えて、治療回数分の交通費や宿泊費も捻出しなければならず、物理的にも経済的にも大きな負担となり、治療を受けたくても断念せざるを得ない人も少なくなかった。だが、北の地にその砦となる同センターができ、さらに昨年春から保険適用となるがんも広がったことで、より治療を検討しやすい環境が整った。重粒子線は“特別な治療”という従来のイメージから、手が届く身近な治療へと変わりつつあるという。
「とくに肝臓、膵臓がんの治療を希望される患者さんが増えており、多くの方が待っていらしたんだなという印象です」と根本センター長は続ける。

回転ガントリー照射室。患者は楽な姿勢のまま治療を受けられる

回転ガントリー照射室。
患者は楽な姿勢のまま治療を受けられる

前立腺がんは固定照射室が使われる

前立腺がんは固定照射室が使われる

重粒子線治療実績



正常組織を守り 高い治療効果

 重粒子線は放射線の一種だが、一般的な放射線治療に使われているX線とはビームに大きな違いがある。X線には身体を突き抜ける性質があり、がんを狙うと周囲の正常組織にも広く当たりやすい。一方、炭素イオンを使う重粒子線は威力が3倍ほど強く、ビームの直進性・集中性に優れる。正常組織に当たる範囲を抑え、副作用のリスクを大幅に軽減できるのも特徴だ。また、治療したことで将来的に生じる二次発がんについても、「X線より発症を抑えられることが科学的に明らかになっている」と同センター長は話す。重粒子線を集中させることにより、治療回数もX線よりはるかに少なくて済む。
 治療装置は世界で3台目となる最新型の回転ガントリーを導入。固定照射では難しい位置の腫瘍にも照射が可能で、患者が身体の向きを変える必要はなく楽な姿勢で治療が受けられる。
 また、従来型より進化した超伝導磁石を用いることで施設のスリム化が実現し、大学病院とは接続廊下で直接往来ができる。車椅子やストレッチャーでの移動も容易で、心臓病や糖尿病など複数の既往がある人への診療体制も整えている。こうした取り組みや重粒子線治療の利点が理解されるようになり、最近は「保険適用外であっても重粒子線治療を受けたい」という相談も増えてきている。「ぜひ治療の選択肢に加えて頂き、ご自身にとってのメリット、デメリットをよく理解したうえで後悔のない治療選択をして頂きたいと願っています」(同センター長)

前立腺がんの治療イメージ

病院棟と接続廊下で連結

病院棟と接続廊下で連結

診察室につながるロビー

診察室につながるロビー


HOSPITAL DATA

山形大学医学部東日本重粒子センター

山形大学医学部 東日本重粒子センター
〒990-9585 山形県山形市飯田西2-2-2
TEL.023-628-5404
https://www.id.yamagata-u.ac.jp/nhpb/
山形大学医学部東日本重粒子センター