回復期リハビリテーションの先進医療
全国の医療現場では、専門職の手により、患者一人ひとりに合わせたADL(日常生活動作)の改善に向けた、様々なリハビリテーションが行われています。その実践の場である回復期リハビリテーション病棟は、現在は9万1000床と量的には充実しつつあり、その「質」を高めるための取り組みが進められています。その詳しい実態や評価方法などについて、回復期リハビリテーション病棟協会の園田茂副会長にうかがいました。
回復期リハビリテーション病棟協会
副会長
園田 茂
1985年慶應義塾大学医学部卒業、同大学リハビリテーション科入局。1995年東京都リハビリテーション病院医長。1997年慶應義塾大学月が瀬リハビリセンター専任講師。2000年藤田保健衛生大学(現 藤田医科大学)医学部リハビリ医学講座助教授、2002年同教授。2003年より同大学七栗サナトリウム(現 七栗記念病院)病院長。日本リハビリテーション医学会特任理事、日本脳卒中学会幹事。日本専門医機構認定リハビリテーション科専門医。
リハビリは、様々な疾患・外傷・病態により生じた機能障害を回復し、残存障害を克服しながらADL(日常生活動作)を回復することが目的です。それをより良く実現するためには、リハビリテーション科専門医、看護師、セラピストなどの質の高い専門職の育成が必要となります。
そのために各所で様々な取組みが行われており、例えば回復期リハビリテーション病棟協会では、専門に対する幅広い支援を行っています。その一つが多様なスキルやレベルアップの研修の実施で、各病院から集まった多職種を対象にした全職種研修会などがあり、より広い視野が身に付けられ、チーム医療に役立てられると好評です。
また、最近のトレンドであるロボットを活用したリハビリも、アシストを伴った運動訓練による効果が期待されております。その重要度は、今後の更なる高齢化に伴う疾患に対するリハビリのニーズと共に高まるでしょう。いずれも質の高いリハビリ医療を幅広く患者に提供できるために、現場では常に新しい取り組みが行われています。
回復期リハ病棟の「質」を示す審査体系の中でも大きなものとして、「日本医療機能評価機構」によるリハビリテーション病院の認定があります。これには、日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医の常勤設置、リハビリの365日提供があり、各職種の専門性、チーム医療などの項目で、医師・看護師・療法士からなる評価者による訪問審査が行われるため、実態を正しく伝えるものといえます。そして、この認定を受けた病院を対象に「高度・専門機能評価リハビリテーション(回復期)バージョン1.0」の認定も2020年から始まりました。これは以前の「付加機能評価リハビリテーション機能(回復期)」を進化させたものです。
「安心・安全で効率的なリハ・ケアの提供」「地域との切れ目のない連携」「職員の専門性の発揮、および専門性を習得するための教育体制」の3点を評価し、回復期リハにおける「組織運営」「職員の専門性」「チーム医療によるリハ・ケアの実践」を領域として、あるべき姿を目指す姿勢が示されています。また、実際の患者のカルテを数多くチェックし、一部の患者に関するカンファレンスの様子を訪問して審査します。これがリハ・ケアの運営に活かされ、より方針に沿った「質」の高いリハ・ケア実施につながることが求められます。
これら以外にも、入院から退院までのADL改善と在院日数から算出されるリハビリ実績指数が診療報酬制度のなかで使われており、ある意味で質の評価の一指標となってきています。