手術支援ロボット導入病院特集
脳神経外科、脳神経内科、循環器内科、整形外科などを有する社会医療法人寿会富永病院は1970年の開業以来、地域の医療に貢献してきた。
大西啓靖記念人工関節研究センターでは、2021年11月、西日本で初めて先進の手術支援ロボット「CORI(コリ)」を使用した人工膝関節手術を行なった。CORIがあるのは同院を含め国内4施設のみ(2022年1月現在)。より的確で高精度な手術が可能になり、術後満足度の向上に繋がっている。
同院の「大西啓靖記念人工関節研究センター」は2001年4月、富永紳介理事長協力の下、初代センター長の大西啓靖氏が創設。主に股関節や膝関節の人工関節手術に特化した診療を行ってきた。累計手術件数は6千件以上(2001年4月~2021年12月)にのぼる。
同センターでは人工関節手術の固定方法にIBBC法(骨セメント固定時に顆粒状の水酸化アパタイトを骨、セメント間に介在させる人工関節固定法)を採用している。センター長の大西宏之医師は「この手術の特徴は、長期にわたって人工関節が緩みにくく、手術後30数年以上経ってもほとんど緩んでいない患者様もおられます」という。
人工股関節置換術(THA)では低侵襲な前方系アプローチで手術し、合併症の発生率は非常に低く、特に脱臼に関しては過去9年間で初回THAを受けた患者のうち発生した人はいないという。
同院では2021年10月、赤外線誘導式手術支援ロボット「CORI」を導入。同年11月には単顆型人工膝関節置換術と人工膝関節全置換術を西日本で初めて実施した。
CORIは、前身機の「NAVIO(ナビオ)」と比べ、骨を削るスピードが約30%向上し、手術時間を短縮できる。
「このロボットを使えば、骨の掘削誤差を1ミリ、1度以下におさえ、理想的な位置に高い精度でインプラントを設置できます。また、CORIならば、膝関節の伸展時と屈曲90度の靭帯バランスだけではなく、不安定性の出やすい中間屈曲位(屈曲30度から60度あたり)の状態も確認できます。それぞれの患者様に応じた微調整が可能になりました」と大西センター長。
安井広彦副センター長も「手術支援ロボットの活用で、違和感が少なく安定した膝の動きに回復させることができ、長期耐用性のあるオーダーメイドの人工膝関節を目指すことができています。症例によっては従来の人工膝関節手術では切除せざるを得なかった十字靭帯を温存することも可能です。これまでの手術より患者様の術後満足度が高い手術を提供できるようになりました」と語る。
2021年1月から12月までの
人工関節手術件数は股関節が139件、再置換術26件、膝関節が51件、再置換術1件。コロナ禍にあっても同院では手術件数の落ち込みは少ないという。
「コロナ禍以前から、医師をはじめ病院スタッフが一丸となって患者様に真摯に寄り添い、診療やケアに満足して頂いてきたことが繋がっているのだと思います。薬物投与や運動療法などの保存的治療では症状が改善せず、手術が必要な患者様に対して今後は積極的にCORIを活用し、変形性膝関節症、関節リウマチ、大腿骨や脛骨の骨壊死など重度の膝関節機能障害でつらい思いをされている方々の機能回復のために役立てていきたいです」と大西センター長は話す。
同院は総合病院のため、万が一合併症が生じてもすぐに対応が可能だ。また回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟があり、術後のリハビリテーションをすぐに始められる。
「患者様にはわかりやすい説明と丁寧な対応を心がけています。自身の膝の状態や手術の方法をよく理解して頂いた上で、納得のいく治療法を選択してもらえれば」と安井副センター長はほほえむ。
大西センター長は「私としては治療方針を考える際、もし自分の家族が同じような状況であればどのように対処するかを常々自問しながら、患者様と相談しながら決めています。患者様優先の開かれた病院として、これからも質の高い医療の提供に努め、地域社会に貢献してまいります」と語った。
社会医療法人 寿会 富永病院
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■院長/富永 紳介
■診療科目/脳神経外科、整形外科、神経形成外科、脳神経内科、循環器内科、内科、放射線科、リハビリテーション科