病院の実力2022 ＞ 九段坂病院

脊椎脊髄チームを支える医長達

難病・後縦靭帯骨化症治療に早くから取り組む

　都心ながら北の丸公園の緑を一望する九段坂病院。2015年の新築移転で診療機能を拡充し全257床。うちハイケアユニット10床、地域包括ケア44床、回復期リハビリテーション41床を擁する総合病院である。
　整形外科部長の大谷和之医師は、「指定難病である頸椎後縦靭帯骨化症の治療に定評があります。他には保存的治療の効果のない成人脊柱変形、腰部脊柱管狭窄症、頚椎症性脊髄症などが多く、手術件数はコンスタントに年間1000件強行っています」と語る。
　後縦靭帯骨化症とは、脊柱の中を通る後縦靭帯という靭帯が骨に変化する疾患。隣接する脊髄を圧迫し、手足のしびれや、運動麻痺などを引き起こす。
「進行に個人差が大きいため、経過を見極め、適切な時期に手術を提案します。脊柱管を広げ圧迫を取る『後方法』と、骨化部位を薄く削り、浮き上がらせて圧迫を取る『前方骨化浮上術』があり、後者は当院の名誉院長が世界に先駆け開発した画期的な術式です」
と診療部長の進藤重雄医師は語る。

手術からリハビリまで一貫し脊椎脊髄を守る

　脊柱管狭窄症は椎間板や椎間関節などの変性が原因で脊柱管が狭くなり神経を圧迫し、休み休みしか歩けない間歇跛行（かんけつはこう）と足腰の痛み・しびれが主症状だ。
「狭窄部位が複数カ所あったり、椎間孔狭窄が併存したりするため、痛みの原因の的確な診断がカギ。手術は現院長・中井修が開発した拡大開窓術など低侵襲の除圧術が原則ですが、不安定性や脊柱変形があれば固定術を併用します」と進藤医師は語る。
　ハイレベルな治療を支える設備の充実も見逃せない。立位の全身を前・横から１度に低被曝で撮影可能なＸ線画像システムは、脊椎と共に股関節や膝への影響も評価する。また、手術室には可動式のＣＴがあり、立体画像に手術プロセスを映す術中ナビゲーションシステムと連動し、正確な手術を可能としている。さらに、神経損傷などの合併症を防ぐため、神経の電位波形を確認する術中モニタリングシステムも導入している。
　設備とともに診療を支えるのがチーム医療である。脊椎脊髄チームでは複数担当医制を導入し、常に患者さんの情報をチームカンファレンスで共有すると共に、医師・看護師・セラピストがチームを組んで診療にあたる。
「脊椎脊髄疾患は、リハビリテーション科との連携が欠かせません。入院時から理学療法士などのセラピストが病状を評価し、運動療法を提供。術後も超早期リハを開始します」と大谷部長。
　急性期治療後は回復期リハビリ病棟へ移り、機能回復に必要なリハビリが集中的に行われる。在宅復帰へ極力つなげ、必要なら行政の介護制度とも連携する。
　退院後、病状が落ち着いたのちも１年１回の定期検診があり、アフターケアは万全を期す。生涯の主治医と出会える、温かくも頼りがいある病院だ。