病院の実力2022 ＞ 我孫子東邦病院／我孫子東邦クリニック

理事長
藤尾　圭

ふじお・けい／2005年東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大森病院、岡山大学病院、我孫子東邦病院、岡山大学病院泌尿器科助教などを経て、16年我孫子東邦病院副院長、18年8月から現職。医学博士（岡山大学博甲）。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。日本骨盤臓器脱手術学会所属。日本女性骨盤底医学会所属。

ロボット手術を得意とする常勤泌尿器科医師が８人在籍

　我孫子東邦病院では手術支援ロボット「ダビンチ」を全国でも初期の2012年に導入。以来、年々有数の実績を残してきており、昨年（2021年１月～12月）は、128件の実績を誇る。2020年９月からは女性特有の骨盤臓器脱の手術にも使用。「今後は子宮筋腫などでもロボット手術を開始していく方針」と同院理事長の藤尾圭医師は話す。
「ロボット手術は、３Ｄモニターによって約10倍に拡大された視野のもと、自在に可動するアームを使って組織を剥離・切除・縫合し手術を進めます。人間の手指よりも精緻であり、数か所のポート（穴）からアームを入れ手術を行うので、身体への負担が大幅に軽減されるというメリットがあります。当院泌尿器科には８人の常勤医がおり、全員がこのロボット操作に長けていることが一番の強みです」（藤尾医師）
　同院には東京慈恵会医科大学附属柏病院から医師が派遣され、綿密に連携している。
「がんの患者さんでは手術の前後に化学療法や放射線治療が必要なケースもあります。そうした場合は慈恵医大柏病院に紹介します。当院には手術室が２室あり毎日稼働しているので、患者さんの待機期間を短くできます。このように患者さんの病状やステージに応じて当院と慈恵医大柏病院が協力して、より適切な治療を提供しています」（藤尾医師）
　慈恵医大柏病院でも「ダビンチ」を導入しており、前立腺がん全摘術を開始しており、今後、腎臓がん、膀胱がん、婦人科手術なども予定している。同大学泌尿器科診療部長で准教授を務める三木淳医師はこう話す。
「前立腺がんや婦人科のロボット手術の症例数が豊富な我孫子東邦病院泌尿器科に赴き、その手術に参加できることは、慈恵医科大学柏病院泌尿器科の医師にとって大変貴重な経験になります。また、私自身も両院でロボット手術に取り組むとともに、その経験に基づいた論文を執筆して学会発表も行っています」
　今後は泌尿器科だけでなく、婦人科でも相互に医師を派遣し合うなど、連携を強化していくという。

東京慈恵会医科大学附属柏病院
泌尿器科診療部長・准教授
三木　淳

みき・じゅん／1998年東京慈恵会医科大学卒業。2004年米国メリーランド州CPDR（Center for Prostate Disease Research＝前立腺疾患研究センター）にて博士研究員、07年東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科診療員、12年同大学附属柏病院泌尿器科診療員、同院同科講師・准教授をへて、18年4月から診療部長。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。

女性特有の骨盤臓器脱でもロボット手術を実施

　我孫子東邦病院で2020年秋からロボット手術を開始した骨盤臓器脱は、加齢や出産などが原因で骨盤底の筋肉がゆるんでしまい、膣口から子宮や膀胱、直腸などが外に出てしまう病気だ。命に関わることはないがＱＯＬ （クオリティ・オブ・ライフ＝生活の質）が著しく低下するので治療が望ましい。
「当院では骨盤臓器脱に対するロボット支援下の仙骨膣固定術（ＲＳＣ）を行っています。 ＲＳＣはメッシュシートを下垂した膣周囲臓器に縫合し引き上げることで、臓器を元の位置に戻す手術です。骨盤の中でも深い場所での縫合操作を要するため腹腔鏡では難度が高いが、ロボットであればアームを自在に操作できるため、的確に手術が行えます。加えて、当院では手術の際に腹部に開ける穴の数を極力少なくして、手術の跡がなるべく残らないように配慮しています」（副院長兼泌尿器科診療部長、大槻英男医師）
　このＲＳＣで得た知識と技術を応用して、性同一性障害に悩む女性のための「性適合手術（ＳＲＳ）」も実施している。
「ＳＲＳは子宮や卵巣を摘出する手術ですが、これを実施する医療機関が少ないため、当院には北海道や東海地方など、遠方からの患者さんも多い。現在は腹腔鏡を使っていますが、いずれはＳＲＳもロボット手術に切り替わっていくでしょう。また、30歳以上の女性の３割が患っている子宮筋腫の摘出手術もダビンチで行う予定で、その準備を進めています」（藤尾医師）

副院長・泌尿器科診療部長
大槻 英男

おおつき・ひでお／2001年防衛医科大学校卒業。自衛隊中央病院、陸上自衛隊衛生隊、イラク復興支援群、防衛医大泌尿器科等を経て14年から現職。医学博士。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。日本透析医学会認定透析専門医。日本排尿機能学会所属。日本女性骨盤底医学会所属。日本骨盤底手術学会所属。

結石手術にも先進手術を導入

　泌尿器系の疾患で激痛を伴うのが結石だ。具体的には尿管結石をはじめとする尿路結石だが、同院には救急搬送される患者も少なくないという。
「一口に結石といっても、大きさや数、部位、粘膜との癒着具合など病状はバリエーションに富んでいます。男性の病気と思われていますが、女性も注意が必要。罹患者の約３割は女性なのです」（泌尿器科医長、山崎智也医師）
　尿路結石や腎臓結石に対しては、尿道から細い内視鏡を入れ、レーザーで石を破砕する「経尿道的結石破砕術（ＴＵＬ）」や、腰に６ミリほどの穴を開け、腎臓に内視鏡を入れてレーザーで石を割る「経皮的腎砕石術（ＰＮＬ）」がある。さらに、この２つを同時に行う「ＥＣＩＲＳ （エシルス）」も2020年から開始した。
「ＰＮＬは割れた石を容易に摘出できるというメリットがあるのですが、腎臓の構造上、全ての部位には対応できないという欠点があります。 ＴＵＬは操作範囲が広いのでこれをカバーできる。この２つを同時に行うＥＣＩＲＳなら、サイズの大きな結石や、複数ある場合に対応できます」（山崎医師）
　このほかにも前立腺肥大症に対する内視鏡治療である「ホルミウムレーザー前立腺核出術（ＨｏＬＥＰ ：ホーレップ）」の症例数も年間１２０件と実績があり、我孫子東邦病院泌尿器科診療への地域の信頼は高い。
「泌尿器科に特化することで患者さんが集まり、医療技術も磨かれて来ました。これは医師だけではなく、看護師をはじめとしたコメディカルスタッフも同様で、専門性が高い人材が揃っています。この環境を生かしながら、より良い治療を追求していきます」（藤尾医師）
　現状に満足することなく、常に工夫し、進化し続ける病院なのである。

泌尿器科医長
山崎 智也

やまさき・ともや／2009年香川大学医学部卒業。香川県立中央病院、岡山大学病院泌尿器科、広島市民病院などを経て、2016年から我孫子東邦病院。2018年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。所属学会は、日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本透析医学会、日本化学療法学会など。