総長 東上 震一
病院長 尾野 亘
救急医療に力を入れる病院は少なくないが、岸和田徳洲会病院では2022年2月完成の新・新館に救急ワークステーションを併設。市の救急隊員が常駐している。
「民間病院内に公的機関が併設されるのは全国的にもまれです」と同院総長で徳洲会グループ副理事長を兼務する東上震一医師は話す。
本館3階に救命救急センターがあるが、新・新館の増築にともないフロアを改修。同センター隣に「スーパーICU(集中治療室)」を設置する。院長の尾野亘医師は次のように話す。
「スーパーICUは、通常のICUよりも1床あたりのスペースが広く、多職種のコメディカルスタッフが専属して、早期リハビリを含めた高度な急性期治療を行います」
2020年から続く新型コロナウイルス感染症には救命救急センターが対応してきたが、通常の救急搬送もこれまで通り断らずに受け入れてきた。感染を恐れて控える医療機関も多いため、同院の救急搬送受け入れ数は8600件と大阪府でトップになった。
「救命救急センターはコロナ感染者治療に限定して、通常の救急患者はICU(集中治療室)やHCU(高度治療室)で受け入れるなど、ゾーンをきっちり分けて対応してきました。医師や看護師の配置を工夫したこと、彼ら・彼女たちがそれぞれの持ち場で最大限の力を発揮したことが、救急搬送数でトップという数字につながったと思います」(尾野院長)
今後は、介護を含めた包括ケアシステムを徳洲会グループで構築していくという。
「岸和田市に隣接する貝塚市に、病院と介護老人保健施設(老健)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を集めた施設を予定しています。仮称は『貝塚徳洲会病院』。総面積は4500坪ほど。老健やサ高住はリーズナブルな料金にしたい」と東上総長は話す。「生命だけは平等だ」という同グループの理念を、より多くの人に提供していく方針だ。
岸和田徳洲会病院の新・新館が2022年2月に完成。4月から本格稼働する。民間病院ではまれな救急ワークステーションの併設が際立った特徴だが、これに伴って既存の本館もリニューアル。「スーパーICU」を8床設置するなど、救急医療体制がさらに拡充する。
総長
東上 震一 Shinichi Higashiue
ひがしうえ・しんいち/1954年生まれ。80年和歌山県立医科大学卒業。和歌山県立医大附属病院臨床研修医を経て、82年同病院胸部外科入局。90年岸和田徳洲会病院心臓血管外科部長、2002年同副院長、06年から現職。2016年6月から徳洲会副理事長を兼任。
岸和田徳洲会病院は1977年に岸和田グループ3番目の病院として開院した。本館、新館に続く、3番目の病棟となる新・新館を建設中であり、2022年4月から稼働する予定だ。これによって、病床数400という規模になるが、際立った特長は、1階に岸和田市の救急ワークステーションが併設されることだ。市の救急隊員が常駐している。
「民間病院の中に救急ワークステーションが設置されるのは全国的にも珍しい。これも当院が長年にわたって自治体と良好な関係にあった証と言えます」と同院総長の東上震一医師は話す。
「新・新館の完成後は、既存の本館も改修。特に本館3階には救命救急センターがあるのですが、ここにスーパーICUベッドを8床新設。当院が重視してきた救急医療を一層充実させることができます」(東上総長)
スーパーICUとは、通常のICU(集中治療室)よりも1病床あたりの面積が広くなり、医師とともに看護師や理学療法士などのコメディカルスタッフがチームで患者をケアする、先進の急性期治療ベッドである。
「当院にはICUと一般病棟の間に位置づけられるHCU(高度治療室)もあり、新・新館完成後はスーパーICU、ICU、HCUのすべてが揃います」(東上総長)
岸和田徳洲会病院では、救急医療、心臓病手術、内視鏡を中心にした消化器系治療を3本柱としており、東上総長は心臓血管外科医としても豊富な実績がある。
「かつては心筋梗塞に対するバイパス手術などの開胸手術が中心でしたが、近年は足の付け根や手首を小さく切開して、そこから細い医療用の管を挿入するカテーテル治療がメインになっています」と話す。
中でも、大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)や、不整脈の治療法の一つである、カテーテルアブレーションが増えているという。
「2022年度中に心疾患専用のカテーテル室を増設する予定ですが、今後もニーズに応じながら、患者にやさしい、先進の治療を積極的に導入していきます」(東上総長)
病院長
尾野 亘 Wataru Ono
おの・わたる/1968年生まれ。95年奈良県立医科大学卒業。2001年から岸和田徳洲会病院消化器内科勤務。2019年4月岸和田徳洲会病院消化器内科部長兼副院長。同年9月から現職。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定消化器病専門医。
岸和田徳洲会病院は、2021年4月に大阪府から「地域医療支援病院」に指定された。地元診療所との連携が一層強化され、住民にとってより身近で利用しやすい病院となった。
「診療所から当院への紹介率や、当院から診療所への逆紹介率などが規定されているのですが、かかりつけ医が必要であると判断すれば、当院の先進的な検査機器を使用できるなど、患者さんにとっても様々なメリットがあります」と話すのは院長の尾野亘医師だ。
同院は2018年に国際的な医療機関認証であるJCI(Joint Commission International)を取得しており、2021年12月にその更新を終えたばかりだ。
「JCIは、患者の安全性や、提供している医療の質などを1300にもわたるチェック項目で審査する非常に厳しい国際認証です。最初の認証では改善点が指摘されましたが、JCIの理念を深く理解できたせいか、更新審査はスムーズにクリアできました」(尾野院長)
尾野院長は2001年に岸和田徳洲会病院に着任したが、その当初から内視鏡検査・治療をベースにした離島やへき地での医療にも取り組んできた。現在は消化器系内科に30人の医師が在籍。順番にへき地・離島病院に赴任している。2021年は同院で1万9000件、離島などで1万8000件の内視鏡検査・治療を実施した。
「院内外で合計3万7000件にも達します。これは国内の医療機関で有数の実績と言えるでしょう」と尾野院長。今後は人間ドックでの内視鏡検査に力を入れる方針だ。
「新型コロナウイルスの感染を心配して、人間ドックの受診者数が激減。その結果、がんの早期発見が減ってしまったからです。内視鏡で見つかる消化管(食道・胃・大腸)がんでは、がんが浅い場所(粘膜)に留まっていれば内視鏡で切除できますが、粘膜下層にまで浸潤していたり、ほかの臓器に転移していたりすると、完治させることは難しい。がんは治療法が進化しても、早期発見が何より重要。ですから、40歳を越えたら1度は内視鏡検査を受けていただきたいですね」(尾野院長)
新・新館完成後は400床に増えるが、これに合わせて看護師を増員するほか、女性医師も増やす方針だという。
「キャリアアップやライフイベントに配慮した勤務体制を取り入れるなど、福利厚生の充実に力を入れています。医師や看護師が笑顔で元気でなければ、患者さんも安心して受診できないですからね。究極の目標は、当院にかかわるすべての人に幸せな人生を送ってもらうこと。そのための病院運営を追求していきます」(尾野院長)
救命救急センター長
鍜冶 有登
かじ・ありと/1980年大阪市立大学医学部卒業。2011年から岸和田徳洲会病院に勤務。日本救急医学会認定救急科専門医。
当院では救急救命センターで新型コロナウイルス感染症患者に対応しています。本来は28床を救急患者に用意していますが、当院ではコロナ患者の中でも重症患者を受け入れており、ECMO(体外式膜型人工肺)を使用することがあるため、広いスペースが必要となり、14床に。それでも第4波や第5波のピーク時にはその数を超えることもありました。非常に緊張感の高い状況が続きましたが、すべての看護師が懸命に、心のこもったケアをしていたことは私たちの誇りです。
救命救急センターはコロナ感染患者に限定していたため、心臓疾患や脳梗塞、あるいは交通事故で大けがなど、一般の救急患者はICU(集中治療室)やHCU(高度治療室)で対応しました。この結果、昨年度(2020年4月~2021年3月)の救急搬送数は8600件と大阪府でトップになりました。これは、コロナ感染を危惧して、救急搬送を断るということをしなかったからです。
2020年から医師と看護師が消防署の要請に即応して現場に向かう「ラピッドレスポンスカー」を導入しています。初年度は40件の出動でしたが、2年目となった2021年度は100件と倍以上に。来年度は、新・新館に岸和田市の「救急ワークステーション」が併設されますので、ますます出動数が増えるだろうと予測されます。当センターでも医師や看護師を増員して準備を進めています。
医療法人徳洲会 岸和田徳洲会病院
〒596-0042 大阪府岸和田市加守町4-27-1
TEL.072-445-9915(代表)
https://kishiwada.tokushukai.or.jp/
【診療科目】 内科/消化器内科/循環器内科/神経内科/外科/整形外科/形成外科/脳神経外科/心臓血管外科/産婦人科/小児科/皮膚科/泌尿器科/耳鼻咽喉科/眼科/歯科口腔外科/放射線科/麻酔科(大前典昭・佐谷誠・高木治・土屋正彦・武貞博治)/病理診断科/リハビリテーション科/救急科/心療内科/呼吸器内科/腎臓内科/消化器外科/歯科