順天堂大学医学部附属 順天堂医院

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順天堂大学医学部附属 順天堂医院 順天堂大学医学部附属 順天堂医院ワンチームで患者さんを丸ごと支える
「がん治療センター」

髙橋 和久

院長
髙橋 和久

たかはし・かずひさ/1985年順天堂大学医学部卒。米国ハーバード大学医学部附属マサチューセッツ総合病院がんセンター留学、順天堂大学医学部呼吸器内科学講座教授、同大学医学部附属順天堂医院副院長などを経て、2019年より現職。


加藤 俊介

がん治療センター長
加藤 俊介

かとう・しゅんすけ/1992年東北大学医学部卒。東北大学病院腫瘍内科を経て、2013年より順天堂大学大学院医学研究科臨床腫瘍学教授、がん治療センター副センター長。2019年より現職。



髙橋 当院は37診療科を擁する総合病院で、がんに関わる診療科も複数あります。それぞれの科にエキスパートの医師がおり、あらゆる症例に対処できるのが強みです。がん治療センターは、さまざまな診療科を横断的に結び、ひとつのチームとなって患者さんを診ていきます。高齢化に伴い、がんだけでなく高血圧や糖尿病などを併発している患者さんもいらっしゃいますので、その場合も担当の診療科と協力して対処しています。他の病院では治療できない患者さんが、当院を訪れるケースも増えてきました。最近は負担が軽い腹腔鏡手術やロボット支援手術にシフトしており、ダビンチを1台増やし、2021年から3台で稼働しています。
加藤 がん治療センターでは、院内全体の化学療法のマネージメントや緩和ケア、がん相談のほかにも医療従事者に対する教育研修、患者さんへの広報、地域医療機関とのがん診療連携などの業務を行ってきました。がん患者さんの治療には複数の診療科やメディカルスタッフが関わってきます。そのためがん治療センターは複数の診療科や関連部署を繋ぐハブのような機能を果たしています。
髙橋 医療は日々進化しています。2019年にはがん遺伝子パネル検査が保険収載されました。当院は2016年から自由診療で始めており、2018年には「がんゲノム医療連携病院」に指定されています。
加藤 院長のおっしゃるように医療が高度化され、ますます情報の共有が重要になってきました。新規医療に関する情報の収集と提供もセンターの重要な役割です。例えば、がんゲノム医療は医療従事者にとっても全容を理解することはなかなか難しいため、関与する診療科に声をかけて、エキスパートパネルと呼ばれるがんゲノムに精通したメンバーを組織化し、院内の情報共有に努めています。また、様々な癌腫で使われる免疫チェックポイント阻害剤はこれまで経験がないような副作用もみられるため、院内副作用データベースを構築し各診療科の知見を集めて対処しています。

新薬の開発で貢献 国際的な評価を認証

髙橋 2020年からは臨床研究中核病院として承認されており、その波及効果で新薬や医療機器の開発が急激に進んでいます。治験の件数も年々増え、2021年の10月には183件に達しました。治療だけでなく、新しい薬の開発を通して患者さんに貢献していると自負しています。光免疫療法や分子標的薬など新しい医療も取り入れ、難治性のがんにも成果を出しています。2015年には国際的な病院機能評価の「JCI」に認証され、さらに2021年にはニューズウィーク誌による「ベストスマートホスピタル」に選ばれるなど、国際的な評価も高まっています。

順天堂の取り組みについて語る髙橋院長と加藤センター長

順天堂の取り組みについて語る髙橋院長と加藤センター長


地域がん診療連携拠点病院 順天堂の取り組み

【脳腫瘍】術後生活を想定した治療

近藤 聡英

脳神経外科
近藤 聡英 教授

こんどう・あきひで
1999年順天堂大学医学部卒。理化学研究所、米国ノースウェスタン大学などを経て2020年より現職。

 日本初の脳外科手術は順天堂第3代堂主・佐藤 進が行ったとされており、当院では患者さん重視の伝統ある手術が行われています。手術前には患者さんの手術へ望むことをお聞きし、神経機能を温存できるよう最善の治療を選択します。MRIを備えた手術室を有し、適切な範囲で切除が進んでいるかを術中に確認することで、一度の手術で目的を達するようにしています。脳腫瘍治療に必要な腫瘍の分子生物学的解析も大学施設ならではの最先端検査機器で明確に提示できます。脳神経外科全体で年間1000件以上の手術を行っており稀な病気である脳腫瘍へも病院としての習熟度が高く、様々な分野の知見を合わせて、あらゆる腫瘍に対応できる体制です。

【肝臓がん】総合力で難治に取り組む

齋浦 明夫 教授

肝・胆・膵外科
齋浦 明夫 教授

さいうら・あきお
1993年東京大学医学部卒。がん研有明病院肝胆膵外科部長などを経て2019年より現職。

 肝胆膵がんは5年生存率ワーストスリーの難治性がんです。近くに重要な血管が走っているため、手術も高難度になります。病状に応じて低侵襲手術、腹腔鏡手術を行っていますが2020年からロボット支援手術も取り入れました。がん患者さんは高齢者が多く、心臓病や糖尿病などを抱えているケースもありますが、合併症を起こしたとき内科の医師と共同でサポートできる体制を整えています。ここ数年は抗がん剤が進歩しており、治療成績も上がって膵臓がんの患者さんの5年生存率が10%を超えました。手術が難しくても抗がん剤で小さくし、治療が出来るようになることもあります。あきらめず、患者さんに喜びを届けたいという思いで治療にあたっています。

【前立腺がん】高い技術で難手術にも対応

齋浦 明夫 教授

泌尿器科
堀江 重郎 教授

ほりえ・しげお
1985年東京大学医学部卒。テキサス大学、国立がんセンター中央病院などを経て2012年より現職。

 前立腺がんは男性が罹るがんのなかで、一番多くなりつつあります。今は体への負担が軽く、翌日から食事が摂れて歩行が可能になるなど、メリットが大きいロボット支援手術が世界的な標準になっています。ただし、やはり手がける症例数によって習熟度が異なり、がんの根治性、機能の温存、合併症の多寡に差がでてきます。当院は前立腺がんだけでなく、膀胱がん、腎臓がんについても日本最大級の症例数で、経験豊富な医師が質の高い手術を行っています。膀胱がんについても、摘出後の尿路変更術や回腸導管造設術など、他院では開腹で行っている難易度の高い手術も、当院ならロボット支援手術で行うことが可能です。

【悪性リンパ腫】がん免疫療法の提供と開発

安藤 美樹 教授

血液内科
安藤 美樹 教授

あんどう・みき
1997年順天堂大学医学部卒。ベイラー医科大学、東大医科学研究所などを経て2021年10月より現職。

 貧血や血小板減少症などの一般的な血液疾患から、白血病、悪性リンパ腫など血液のがんまで幅広く診療しています。特に力を入れているのは、血液のがんに対する細胞治療です。無菌室27床を有して各種の造血幹細胞移植を行う他、がん免疫療法である「CAR-T細胞療法」の提供可能施設として多くの患者さんを治療しています。また、新しい治療法を開発して実用化に繋げる橋渡し研究にも取り組み、現在はiPS細胞技術やゲノム編集技術を駆使したウイルス特異的T細胞療法の研究を進めているところです。日々の診療を大切にしながら、小さな発見も見逃さず、より多くの人を助ける治療の提供、開発を目指しています。

【胃がん】優しい術法でしっかり治す

福永 哲 教授

食道・胃外科
福永 哲 教授

ふくなが・てつ
1988年琉球大学医学部卒。がん研有明病院消化器外科医長などを経て2015年より現職。

 胃がん、食道がんの95%以上を腹腔鏡手術かロボット支援手術で行っており、しっかり治す一方で、患者さんの負担が軽減できます。開腹だと2~3週間の入院が必要ですが、腹腔鏡手術は翌日から歩くことができ1週間程で退院できます。今まで手術を受けられなかった高齢者や合併症のある方も対応できます。安全かつ短時間で終わらせるには症例を重ねることが大事で、経験豊富な当科なら膵臓と大腸を一緒に合併切除するような高難度の手術も腹腔鏡手術が可能です。術前会議では十分な時間をかけ血管走行を確認するなど、安全確実な手術を目指しています。手術が難しかった高度進行がんも、抗がん剤治療後に手術ができた症例もあります。

【頭頸部がん】QOL落とさず根治目指す

松本 文彦 教授

耳鼻咽喉・頭頸科
松本 文彦 教授

まつもと・ふみひこ
2000年順天堂大学医学部卒。癌研究会附属病院、国立がん研究センター中央病院などを経て2021年より現職。

 本科の領域は食べる、話す、匂いを嗅ぐなど重要な機能を担っています。それだけに、患者さんのQOLを落とさずに手術を行うことが大切です。舌がんは大きく切除すれば根治の可能性は高いですが、食べにくくなったり話しにくくなったりしてしまいます。患部をどれだけ取るか見極めが重要で、さらに頭頸部には細かな神経が張り巡らされているので高い技術力が必要です。治療法が複数あれば患者さんの意見も聞きますが、必ず最善と思われる方法をアドバイスしています。当院は他院に先駆けてロボット支援手術を導入しました。光免疫療法も始めており、治療法は日々進歩しているので、難しい症例を抱えた方もご相談ください。

【婦人科がん】次世代を考慮し治療に臨む

寺尾 泰久 教授

産科・婦人科
寺尾 泰久 教授

てらお・やすひさ
1996年順天堂大学医学部卒。米国イリノイ大留学などを経て2020年より現職。

 婦人科腫瘍は、妊娠可能年齢の比較的若い女性に発症するのが特徴です。そのためただ切除すればいいのではなく、患者さんの希望に寄り添い、妊孕性を温存することも重要です。難しい手術でも、他の診療科と合同で取り組んでいます。また腹腔鏡手術やロボット支援手術など、体への負担が軽い手術も導入しています。さらに理化学研究所と共同で、子宮体がんのリンパ節転移を見分ける特徴的な遺伝子を発見しました。実用化に向けて動き出すなど、新たな医療にも取り組んでいます。産婦人科は次世代を繋ぐ診療科です。「お子さんどうですか?」と、継続的に関わる事ができるのも、産婦人科医としてのやりがいに繋がっています。

HOSPITAL DATA

順天堂大学医学部附属 順天堂医院

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