乳がん検診・治療特集

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乳がんは日本人女性の10人に1人が生涯で発症するとされる。患者数が多いだけに治療法の研究・開発も進んでおり、遺伝子検査に基づいた精密医療も導入されている。その現状を日本乳癌学会理事長の井本滋医師に聞いた。

井本 滋

杏林大学医学部
乳腺外科学教授
井本 滋

いもと・しげる/1985年慶應義塾大学医学部卒業。足利赤十字病院外科、国立がんセンター東病院乳腺外科医長などを経て、2007年から現職。2018年から日本乳癌学会理事長を、2021年学術総会会長を務める。

手術と放射線に加えて様々な薬剤を使用して完治を目指す

 乳がんの標準的な治療は、ほかの部位のがんと同様に、手術、薬物療法、放射線療法の3つがあります。
 手術の場合、1980年代は乳房温存手術(部分切除)が主流でしたが、2010年代に入り、乳房再建が保険適用になると、再建手術が急増。部分切除では乳房が変形することもあるため、全乳房を摘出し自家組織(皮膚、脂肪や筋肉)または人工物(シリコン)を使って再建する手術が好まれています。
 薬物療法では抗がん剤のほかに、ホルモン剤や分子標的剤も使われています。乳がんと一口にいっても、進行のスピードや女性ホルモンへの反応性などからサブタイプに分かれ、それに応じた薬を使い分けながら、完治を目指します。


再発リスクをはかる遺伝子検査も登場

 乳がん検診の受診率の向上は望ましいことです。かつては20%前後でしたが、最近では50%に近づいてきました。
 通常の検診ではマンモグラフィーやエコー検査が行われていますが、遺伝性乳がんと診断された場合は、MRI検査も有効であり、2020年から保険適用となりました。
 乳がんの場合、「BRCA」遺伝子に異常があると発症率が高まります。乳がん患者全体の約4%がこの遺伝子保有者と推計され、40歳代までの若い方に遺伝性乳がんは多いので、精密なMRI検査が受けられるようになったことは歓迎すべきことです。
 乳がんの再発リスクをチェックする遺伝子検査もあります。「多遺伝子アッセイ」検査と呼ばれ、再発の可能性が高い方にはホルモン剤と抗がん剤の両方を使いますが、再発リスクが低い場合はホルモン剤だけに。抗がん剤は副作用が強いだけに、それが不要となれば患者本人に負担を与えないだけでなく、その分の医療費も削減できることになります。この「多遺伝子アッセイ」検査は、現状では自由診療ですが、近い将来、保険適用になることが期待されます。

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