病院の実力2021 ＞ 埼玉協同病院

整形外科主任部長
関節治療センターセンター長
仁平 高太郎

にへい・こうたろう／1988年群馬大学医学部卒。1997年フランス。パリ第６大学病院に留学し人工関節手術に関して学ぶ。慶應大学病院、川崎市立川崎病院、さいたま市立病院等を経て現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本再生医療学会再生医療認定医。

整形外科部長
関節治療センター副センター長
桑沢 綾乃

くわさわ・あやの／2001年東京女子医科大学医学部卒。川崎市立川崎病院、東京医療センターを経て2008年から現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本人工関節学会評議員兼人工関節専門医・日本股関節学会評議員・日本再生医療学会再生医療認定医。

関節の状態は千差万別
個々に応じた治療を提供

　同院の関節治療センター・仁平高太郎センター長は、「関節のゆるみや摩耗、脱臼や痛みの再発を防ぐためには、患者さんの状態に合わせて人工関節を選び、靭帯バランスも考慮した上で、的確な位置と角度にインプラントを設置することが重要です」と説明する。
　そのために、10年以上前からナビゲーションシステムによる手術を実施し、2019年には人工関節の手術支援ロボットを導入した。ナビゲーションシステムは、術前の３Ｄ画像と赤外線誘導を同期させることで、１ミリ、１度の精度で人工関節の設置を可能にする。ロボット支援手術も、個々の状態に合わせた手術を行うという点では同じだが、ロボットによる作業は、術中の関節状態を加味した設置を可能とし、人的エラーも極限まで排除、術野の視野確保も最小限で低侵襲に行えるなど、さらに手術の向上に力を発揮するという。
　桑沢綾乃副センター長は、「手術支援ロボットの活用で、変形する前の本来の関節形状に最も近い位置に人工関節を設置し靭帯のバランスを整えることができます。最も難易度が高い前十字靭帯を温存する人工膝関節の手術では特に威力を発揮し、術後は靭帯の機能が効率よく発揮され、生活の質が向上します」と語る。

再生医療にも多くの選択肢
患者の希望に親身に寄り添う

　同院は、厚生労働省が認可する第二種再生医療等提供医療機関として、次の３種類の再生医療も提供する。
　まず、患者の脂肪細胞の中に含まれる幹細胞を培養して関節内に注射する「脂肪由来幹細胞移植」。血液に含まれる血小板を濃縮し、関節内に注射する「ＰＲＰ療法」。そして、軟骨を少量採取し、培養してすり減った軟骨に移植する「自家軟骨培養移植」だ。
　「３種類の再生医療を行える医療機関は全国でも少なく、当センターでは症状・部位に応じた療法を選択し行うことが可能です。特にＰＲＰ療法は、数種類の方法を使い分け、全国でも屈指の症例数を行っています」と仁平センター長。
桑沢副センター長は、「再生医療は、変形した関節を元に戻せるわけではありませんが、例えば、家族の介護で今は手術ができないという方の痛みを一定期間やわらげ、しのげるようにする効果もあります。再生医療から先進的な手術まで、幅広い選択肢を揃えていることが当センターの特長です。患者さんの希望に寄り添いながら、適応や効果を見極め治療を提案すること、どんな患者さんにも手を差し伸べることが、私たちの使命です」と語る。
　同センターでは新型コロナウイルス感染症を万全の対策をとり、治療実績は前年を上回る。こうした成果も、患者のニーズに応えるという信念が結実したものだ。
　「めざすのは、高い技術に“真心”がプラスされた、満足度の高い心の通う医療です。患者さんの人生を最優先に考え、寄り添っていきたい」と、２人は語る。