病院の実力2021 ＞ 脳神経外科 東横浜病院

理事・副院長
郭　樟吾

かく・しょうご／2001年 東京慈恵会医科大学卒業。独立行政法人国立病院機構横浜医療センターなどを経て2018年より現職。東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座非常勤講師を兼任。医学博士。日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医。日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医。

脳卒中撲滅のためのハイブリッド医療を実践

　東横浜病院は、脳卒中に軸足を置く脳神経外科の“特化”病院である。昭和61年の開設以来、大学病院に比肩する高度医療を地域住民に提供することをモットーとしてきた。現在、日本脳卒中学会より一次脳卒中センター（ＰＳＣ）に認定されている。
「当院の脳卒中チームの最大の特徴は、常勤医師６名全員が開頭による外科手術と、脳血管内治療の両方に通暁していることです」と語るのは、チームを統率する副院長の郭樟吾医師だ。
　このハイブリッド医療が奏効する典型例は脳卒中のうち、脳動脈瘤破裂がもたらす「くも膜下出血」の急性期治療と、くも膜下出血予防のための、未破裂動脈瘤の治療である。
「開頭では瘤の根元を留めるクリッピング術、血管内治療では瘤の中に極細のコイルを詰めるコイル塞栓術が行われます。コイルの性能が飛躍的に上がり、低侵襲でもあることから、採用する医療機関が増えてきました。しかし患部の位置や病態によって、本来適応は異なるもの。当院ではチームが一丸となり、長年の蓄積された膨大な知識と経験により、患者さんにベストな術式を導き出します」
　一方、カテーテルを用いた脳梗塞の血栓回収術では、ステント方式と吸引ポンプ方式、双方を組み合わせるコンバインド方式の新型デバイスがずらりと揃っている。横浜市内でも手術症例が多いことから医師の経験値が高く、症例に応じて自在に使いこなしているという。
　これらの背景として、専門医を指導する立場の郭副院長以下、脳血管内治療専門医、脳神経外科専門医が複数勤務する実績が挙げられるだろう。日本脳神経血管内治療学会から研修施設認定を受けており、若手医師の教育にも余念がない。

スピーディーで包括的な診療体制

　脳の神経細胞の壊死をもたらす脳卒中の治療は、時間との勝負でもある。東横浜病院では、救急搬入から手術開始までの時間は平均30分以下と非常にスピーディー。治療方針を即決できるよう検査機器への投資は怠りなく、常に新型バージョンだ。
「ＣＴは、血管の再開通で壊死を回避できる細胞（ペナンブラ）の部位と割合を明示する新型ソフトを搭載しています。血管撮影装置（アンギオ）も、血管の細部まで多面的にＸ線造影が可能。ＣＴで稀に見逃すことのある微細な脳梗塞症例をカバーするため、新型の３テスラＭＲＩも完備しています」
　24時間365日、平日日中と同じパフォーマンスを維持するため、脳卒中チームが患者の検査画像を端末で共有する「ジョインシステム」も5年前から導入。遠隔診療が可能なレベルの膨大な画像を常時確認でき、個人情報の保護機能も万全だ。
「現在の脳卒中チームに死角はありません。加えて手術室看護師、臨床工学技士、検査技師、放射線技師、理学療法士など多職種がフットワークよく参画する体勢があります。常に最善の治療を安全に配慮しながら迅速に届ける。それが我々の信念です」
　2023年夏には隣地に新病院の開設が予定されている。
「緑豊かな景観を生かし、今まで以上に地域に開かれた医療体制を構築します。地元クリニックと連携強化し、生活習慣病の予防・改善に配慮する。めまい、片頭痛など脳のコモンディジーズのケアも行う。脊髄脊椎疾患については現在も専門医を招聘し、高度な手術を実施するなど評価を得ています」。
　横浜市における脳神経外科医療の“ベンチマーク”たらんと精進の日々である。

当院の特長はＣＴファースト。画像診断はＭＲＩだけでなく、脳の血流をリアルタイムの３Ｄ画像で把握できる新型ＣＴを積極的に活用。