埼玉石心会病院

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社会医療法人財団 石心会 埼玉石心会病院“患者さんを元の生活に戻すこと”を目指して外科医と
内科医によるハイブリッドな低侵襲治療を実践

埼玉石心会病院は、2017年11月に現在の場所に新築移転するとともに、「低侵襲脳神経センター」を開設。脳卒中患者を含めた多くの脳疾患の治療をしてきた。開頭手術と血管内治療の両方を行うエキスパートが揃ったチーム医療を実践しているのが特長だ。病院長と低侵襲脳神経センター長を兼ねる石原正一郎医師と脳卒中センター長の近藤竜史医師にお話を伺った。

石原 正一郎

病院長
低侵襲脳神経センター長
脳血管内治療科診療科長
石原 正一郎

いしはら・しょういちろう/1986年順天堂大学医学部卒業。米国国立衛生研究所(NIH)研究員、米国ヒューストン医科大学、フランスパリロスチャイルド病院臨床フェロー、防衛医科大学校講師、2009年埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科教授を経て、2016年埼玉石心会病院副院長、脳神経外科部長。17年低侵襲脳神経センター長、18年から病院長。日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医。日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医。医学博士(順天堂大学)。

患者主体の治療に徹底的にこだわる

 埼玉県西部には大学病院をはじめとして、いくつかの大規模病院があるが、埼玉石心会病院もその一つであり、診療科は33、ベッド数は450床を擁する。病院長の石原正一郎医師はこれまでの経緯を次のように振り返る。
「当院は1987年に石心会狭山病院として開院し、2013年に埼玉石心会病院に名称変更しました。場所は西武新宿線狭山市駅西口よりバスで約6分の距離でしたが、2017年にそこから北に1.8キロほどの現在地に移転。診療部門としては救急と心臓・循環器系が中心でしたが、この移転を機に脳神経系も強化して『低侵襲脳神経センター』を開設しました」
 この低侵襲脳神経センターは、脳梗塞をはじめとする脳神経系の病気に対して、脳神経外科医、脳血管内治療医、神経内科医、精神科医、リハビリテーション医などが協力して治療を行っている。
「低侵襲とは患者さんの身体的負担が軽い治療法を意味しますが、この専門用語を冠したのは、脳神経の治療において、低侵襲であることが何よりも重要だからです。私は以前にアメリカとフランスの医学研究所に在籍してこの分野を学び、脳の治療の難しさを実感しました。脳細胞は一度壊れたら元には戻りません。したがって、検査を含めた治療の過程で、脳や神経細胞を壊さないことが大前提になる。つまり、絶対に脳や体に負担をかけない低侵襲治療を行わなければならないのです」
 同センターには13名の医師が所属しており、脳神経外科専門医5名、脳血管内治療専門医5名、神経内科専門医5名、 リハビリテーション科専門医2名(重複含む)など豊富な人材を揃えている。
「たとえば、脳の動脈に血液が固まってコブができる脳動脈瘤の治療法として、脳血管内治療としてはカテーテルを通してコブの中を細い針金で埋めるコイル塞栓術があり、外科的には開頭して動脈瘤の間口をクリップで止めるクリッピング手術があります。どちらも完成された治療法ですが、コブの大きさ、数、位置などによってどちらで行うかの選択が重要になります。そこで私たちはそれぞれのエキスパートとして、どちらの方法がより安全で完成度の高い治療ができるかを、協議し、その結果を患者さんに提示しています」(石原医師)
 ハイブリッド手術室も極めて先進的で、開頭術、血管内手術、内視鏡手術などを組み合わせる新たな治療法も行っている。CTやMRIはもちろん、血管造影機器、脳外科顕微鏡、ナビゲーションシステム、神経内視鏡などの設備を備え、手術中、患者さんを移動させることなくすべての作業が完結する。手術台の真上には絵画や風景写真を取り入れたライティングパネルを設置して、患者さんが不安を感じないように配慮している。
「看護師や薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士というコメディカルや事務スタッフを含めて、チーム医療に対してポジティブで協調性の高い人材が集まりました」(石原医師)

低侵襲脳神経センターは、脳血管内治療科、脳神経外科、リハビリテーション科、神経内科で構成されている。

低侵襲脳神経センターは、脳血管内治療科、脳神経外科、リハビリテーション科、神経内科で構成されている。

救急は24時間365日対応。救急外来診療と血管内治療の2つのチームが同時に召集される。

救急は24時間365日対応。救急外来診療と血管内治療の2つのチームが同時に召集される。


近藤 竜史

低侵襲脳神経センター
脳血管内治療科
脳卒中センター長
近藤 竜史

こんどう・りゅうし/1996年秋田大学医学部卒業。日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医。日本神経学会認定神経内科専門医。医学博士(岩手医科大学)。

一次脳卒中センターと埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワーク

 日本脳卒中学会では2020年3月に「一次脳卒中センター」認定を行った。一次脳卒中センターとは、脳梗塞患者を24時間365日受け入れ、その治療であるtPA投与を速やかに行える医療機関だ。このtPAは発症から4.5時間以内に使用することが要件になっており、安全でスピーディーな対応が必要であることから、この認定制度が開始されたのだが、埼玉県ではそれに先だった体制を3年前からスタートさせている。
「2018年に『埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワーク』(SSN:Saitama Stroke Network)を立ち上げました。脳梗塞の患者さんに対して、カテーテルを使った血栓回収療法を速やかに行うためのシステムであり、当院はその基幹病院になっています」(石原医師)
 同院低侵襲脳神経センターは、脳血管内治療科、脳神経外科、リハビリテーション科、神経内科で構成されているが、このうち神経内科を除いた3科が「脳卒中センター」も兼ねる。この脳卒中センター長を務める近藤竜史医師は、SSNの特長を次のように話す。
「SSNでは救急隊と基幹病院がホットラインで結ばれており、救急から入電があれば基幹病院は断ることができません。一刻を争う脳梗塞では非常に重要なポイントです」
 同院では救急外来診療と血管内治療の2つのチームが同時に召集される。病院に患者さんが到着して、治療が終了するまでの所要時間は約60分~90分という。
「血栓回収ができるかどうかをCT画像から判断して、少しでも可能性があればその治療を行います。治療時間が短いほど、回復が良好であるため、将来的には60分以内に終了できるようにしたいですね」(近藤医師)

先進的なハイブリッド手術室。開頭術、血管内手術、内視鏡手術などを組み合わせる治療法も可能。CTやMRIはもちろん、血管造影機器、脳外科顕微鏡、ナビゲーションシステム、神経内視鏡などの設備を備え、手術中、患者さんを移動させることなくすべての作業が完結する。

先進的なハイブリッド手術室。開頭術、血管内手術、内視鏡手術などを組み合わせる治療法も可能。CTやMRIはもちろん、血管造影機器、脳外科顕微鏡、ナビゲーションシステム、神経内視鏡などの設備を備え、手術中、患者さんを移動させることなくすべての作業が完結する。


治療後も継続して確認

 同院低侵襲脳神経センターでは、治療の結果、患者さんが望むような生活に戻れているかどうかを追跡して調査している。
「低侵襲治療の究極の目的は、患者さんが望むような元の生活に戻すことです。医学的にはレントゲンで病変が完全になくなっていることを確認できても、たとえば集中力が続かなくなったなど、ご本人が微妙な変化を感じていることは少なくありません。ですから、患者さんのニーズに低侵襲治療が本当に応えられているかを見極めたい。これをテーマにして、私たちも研鑽していきたいと思います」(石原医師)


患者家族のリクエストから誕生した脳検査

患者家族のリクエストから誕生した脳検査

 脳卒中は予告なく突然発症することが多いが、事前に検査していれば予防は不可能ではない。このため脳ドックをオプションに加える人間ドックもあるが、埼玉石心会病院ではこれを独立させた「脳ドック」を開設した。
 脳専用の高精細の3TMRIを用いて行い、所要時間は短時間。自費診療も低額(2万5000円より)に設定している。
「患者さんの家族から『もっと早く異常が見つかっていたら』というお声を多数いただき、その要望に応えて脳ドックを開始しました。利用者の負担を軽くしたいので、高精細MRI画像で、まずは脳の病気の有無を確認し、病気が見つかれば脳センターが全面的にサポートする体制にしました。
『時間も短く低額なため利用しやすい』と好評をいただいています」(石原医師)

HOSPITAL DATA

社会医療法人財団 石心会 埼玉石心会病院

社会医療法人財団 石心会
埼玉石心会病院
〒350-1305
埼玉県狭山市入間川2丁目37番20号
TEL.04-2953-6611
https://saitama-sekishinkai.jp/


■外来診療時間/月~金 8:30~17:00
        土 8:30~12:30
■休診日/日・祝日
※救急の場合は24時間 365日対応