脳卒中治療に実績のある病院

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脳卒中治療は、患者の負担が軽い血管内治療などの治療法、また新薬の開発も進み、将来的には再生医療による治療も視野に入る。ナショナルセンターとして脳卒中医療をリードする国立循環器病研究センター病院の副院長・脳血管部門長、豊田一則医師に脳卒中医療の現状と今後について聞いた。

豊田 一則

日本脳卒中学会 理事
国立循環器病研究センター病院
副院長・脳血管部門長
豊田 一則

1987年九州大学医学部卒業。九州大学病院、国立循環器病研究センター、米国アイオワ大学などを経て、2005年より国循に勤務。2017年より現職。医学博士。日本神経学会、日本脳卒中学会、日本高血圧学会などの理事。専門は脳卒中の診断・治療・研究、神経内科学。

治療方法の進歩、治療開始までの時間短縮で、効果を上げる脳卒中医療

 団塊の世代が脳卒中適齢期を迎える今、罹患者数は今後も増加すると考えられます。脳卒中治療は超高齢社会の日本が克服しなくてはいけない大きな壁といえるでしょう。
 しかし、急性期の各種治療の進歩や診断法の確立などで脳卒中は“治る病気”と認識されるようになっています。
 国立循環器病研究センター病院は1977年に開設以来、血管内の血栓を溶かし血流を回復する「t-PA静注療法」の国内導入を牽引し、国内で初めて「脳卒中ケアユニット(SCU)」での治療を実施するなど、全国の中心施設として国内外の脳卒中診療をリードしてきました。
 2019年に現在地(吹田市岸部新町)に移転しましたが新施設ではヘリポートが設置され、救急搬送時の動線を短くし、院内に搬送されてからの時間が短縮されるなど救急体制が強化されました。
 また、広いリハビリ室、看護師が見守りながら患者さんが食事を摂る嚥下訓練のスペースなど患者さん本位での設計がされています。ナショナルセンターとして、ここでの治療が国の医療行政に反映することを意識し、医療レベルを高めていくよう前進していきたいと考えています。
 脳卒中治療は、脳梗塞では先ほど述べたt-PA静注療法、また詰まった血栓をカテーテルを通して絡め取ったり、吸引して血流を再開通させる血栓回収療法などの血管内治療が進歩しています。治療のための医療機器も進歩し、患者さんの体に負担をかけない治療法が進められています。


新薬開発、再生医療など次世代の治療法開発に期待

 今後、さらに治療は進歩し続けると思われます。国内外の多施設と連携した新規治療法開発の臨床試験や脳卒中患者登録事業(日本脳卒中データバンク)にも、当院は中核施設として貢献しています。
 たとえばt-PA静注療法は、現在は点滴によって投薬されますが、近い将来、ワンショットで投薬する薬剤に更新(またはバージョンアップ)される可能性があり、急性期脳出血への新規止血薬などの開発も進展していくと思われます。
 再生医療も著しく進歩しています。神経細胞は一度死ねば再生はできませんが、移植して神経細胞を甦らせることができるとしたら、現在は一刻も早い治療が求められていますが、たとえば数日たってからの治療開始で、神経細胞を再生できることができるようになるかもしれません。
 夢のようだと思うかもしれませんが、今、普通に行われているt-PA静注療法もかつては夢のような治療法でしたから、あながち夢とも言えないのではないでしょうか。


一次脳卒中センターの整備診療の「均てん化」

 2018年、「脳卒中・循環器病対策基本法」が公布され、2020年には日本脳卒中学会より、24時間365日「t-PA静注療法」を実施できる医療施設約900余りが「一次脳卒中センター(PSC)」として認定されました。今後、さらに設備、医療者を整え、常時「機械的血栓回収療法」が行える地域の中核となる「PSCコア施設」が認定され、地域での脳卒中医療が充実していくと思われます。
 救急体制も進歩し、たとえばCTを搭載した救急車が開発され、車内で検査もしくは治療も開始できる時代が来るかもしれません。
 治療は進展を遂げていますが、それでも脳卒中はならないに越したことはありません。医療者が啓発することが大切だと感じており、当センターでは市民講座を随時開催し、生活習慣に気をつけるよう呼びかけています。
 一般の方に対しては、高血圧に注意するなどの健康管理に努めていただきたいと願っています。そしてもし、言葉が出ない、激しい頭痛、急なめまいやしびれがあるときは、即刻受診していただきたいと思います。脳卒中は急激に症状が悪化することがあるので、タクシーやご自分の車を運転して来院するのではなく、躊躇せず救急車を呼ぶのが最善の選択です。

国立循環器病研究センター病院における脳梗塞の血管内治療の症例数の推移

国立循環器病研究センター病院における脳梗塞の血管内治療の症例数の推移

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