先進治療の拠点へ
[ロボット支援下手術] 男性/前立腺がん全摘術 女性/骨盤臓器脱・仙骨膣固定術
千葉県民の4分の1にあたる151万人が居住する東葛エリアにある我孫子東邦病院は、泌尿器科の治療で際立った実績を誇る。前立腺がん、腎臓・尿管結石などで全国有数の症例数を残しているが、2020年9月には女性特有の骨盤臓器脱でもロボット手術を開始するなど、高度な医療を提供している。
理事長
藤尾 圭
ふじお・けい/2005年東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大森病院、岡山大学病院、我孫子東邦病院、岡山大学病院泌尿器科助教などを経て、16年我孫子東邦病院副院長、18年8月から現職。医学博士(岡山大学博甲)。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。日本骨盤臓器脱手術学会所属。日本女性骨盤底医学会所属。
手術支援ロボット「ダビンチ」を導入している病院は少なくないが、我孫子東邦病院ではこの先進機器を使用した前立腺がん全摘出手術を年間120例以上と全国有数の実績を誇る。
「ロボット手術は一般的に100例以上で『多い』とされていますから、当院が特に力を入れていることをご理解いただけると思います」と同院理事長であり、ロボット手術を指導する泌尿器科専門医の藤尾圭医師は話す。
現在、同院泌尿器科には6人の常勤医師がおり(2021年4月より7人体制)、その全員がロボット操作を得意としているほか、チーム医療に携わるコメディカルスタッフも熟練した技術を備える。これまでの経験を活かしながら、女性特有の病気である骨盤臓器脱に対するロボット手術も2020年9月から開始した。
骨盤の中には膀胱や子宮、直腸などがあり、これらを支える筋肉や靱帯が、加齢や出産が原因で緩んでしまい、その臓器が下垂して膣口から外に出てしまうのが骨盤臓器脱だ。50歳以降の女性に起こり、命に関わることがない良性疾患であるため、違和感があっても我慢してしまったり、恥ずかしくて受診できずにいる人が多い。
治療法として、従来は経膣的に医療用メッシュシートを挿入して臓器を持ち上げる手術などが行われていたが、2020年4月に手術支援ロボットを使った「仙骨膣固定術(RSC)」が保険適応になった。
「RSCは、子宮を摘出した後に、膣壁の周りをメッシュで覆い補強し、これを吊り上げて仙骨に固定して、下垂した臓器を修復する手術です。骨盤の最下部で縫合操作が多いため、開腹や腹腔鏡で行うのは難しい手術です。ところがロボットであれば、自在にアームが稼働するため、安全で確実な手術が可能です」(泌尿器科、児島宏典医師)
東京慈恵会医科大学附属柏病院
泌尿器科診療部長・准教授
三木 淳
みき・じゅん/1998年東京慈恵会医科大学卒業。2004年米国メリーランド州CPDR(Center for Prostate Disease Research=前立腺疾患研究センター)にて博士研究員、07年東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科診療員、12年同大学附属柏病院泌尿器科診療員、同院同科講師・准教授をへて、18年4月から診療部長。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。
前述したように、前立腺がんのロボット手術で多数の実績を持つ同院では、2020年4月に専用の手術室を増室。その他の手術と並列で進めることが可能となり、1日2例以上の実施がよりスムーズになった。
「当院の特長の一つに大学病院との密接な連携があります。特に、東京慈恵会医科大学附属柏病院(以下、慈恵医大柏病院)の泌尿器科と協力しており、医師を派遣してもらったり、患者さんの紹介を相互に行なっています」(藤尾医師)
慈恵医科大柏病院泌尿器科准教授の三木淳医師は連携のメリットを次のように話す。
「尿路結石やロボット手術適応症例は我孫子東邦病院へ紹介し、手術高難度症例や化学療法・放射線照射が必要な場合は、慈恵医大柏病院で行うなど、ロボット手術、化学療法、放射線など、患者さんの病状やステージなどに応じて最適な治療法を検討し提案することができます。特色は、泌尿器科領域でも複雑とされる膀胱がん全摘術も専門としており、この手術を年間30例以上(2020年1月~12月)実施しています。ロボット手術とともに両院での臨床経験に基づいた論文を執筆して学会発表しています」(三木医師)
副院長・泌尿器科診療部長
大槻 英男
おおつき・ひでお/2001年防衛医科大学校卒業。自衛隊中央病院、陸上自衛隊衛生隊、イラク復興支援群、防衛医大泌尿器科等を経て14年から現職。医学博士。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。日本透析医学会認定透析専門医。日本排尿機能学会所属。日本女性骨盤底医学会所属。日本骨盤底手術学会所属。
同院は、新しい治療法にも積極的だ。その一つが腎臓・尿管結石の「ECIRS (エシルス)」だ。
これまでは、「経尿道的結石粉砕術(TUL)」や「経皮的腎砕石術(PNL)」を実施してきたが、「ECIRS」はこの2つを合体させた手術だ。同科診療部長で副院長を兼務する大槻英男医師は次のように解説する。
「PNLは石を取り出すことは容易にできるのですが、構造的に機材の操作範囲が狭いというデメリットがありました。その点、 TULは操作範囲が広いのでこれをカバーできる。この2つを同時に行うECIRSなら、サイズの大きな結石や、複数ある場合に対応できる。患者さんにとっても手術の回数や時間が減るので、身体的な負担が軽くなります」
同院は前立腺肥大症の治療法「ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)」も得意としており、こちらも年間130例以上の豊富な実績を誇る。
さらに、慢性腎不全に対する人工透析も行っており、希望があれば自宅までの送迎も行っている。2020年からは腹膜透析(自宅でお腹に血液浄化用の薬液を入れて交換する透析方法)の導入のための手術も開始した。一人ひとりの患者さんにとって最適な治療を提供できる体制が整った。
「出身大学に偏りがないことも、当院泌尿器科の特長です。岡山大学、慈恵医大、東邦大学、防衛医大など多様性があり、学び合えることが刺激になっています。そして、医学的に正しいことであればチャンレンジできる。これが私たち若手医師のモチベーションになっています」(児島医師)
泌尿器科
児島 宏典
こじま・ひろのり/2013年近畿大学医学部卒業。岡山大学大学院泌尿器病態学教室レジデントを経て、2019年7月から我孫子東邦病院に勤務。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。日本骨盤臓器脱手術学会所属。日本女性骨盤底医学会所属。日本骨盤臓器脱手術学会所属。日本女性骨盤底医学会所属。
昨年11月には柏駅前に「我孫子東邦クリニック」を開設。本院で治療した患者さんの経過観察を行うほか、新規患者の外来窓口としても機能する。また、本院では泌尿器科の技術を生かして、性同一性障害に悩む女性に向けて、子宮や卵巣を摘出する「性適合手術(GID)」もスタートさせる。
「泌尿器科に特化することで患者さんが集まり、医師も経験を積んで、さらに先進の治療に取り組んでいける。こうした好循環を止めることがないように今後も身体的負担が少なく、患者さんにやさしい治療法を追求していきます」(藤尾医師)
院長・外科診療部長
大城 充
おおしろ・みつる/1988年東邦大学医学部卒業。同大学医療センター佐倉病院外科などを経て、2017年から現職。
当院は新型コロナウイルス感染症の患者を治療する指定医療機関ではありませんが、人工透析をはじめとして、定期的に通院している患者さんへの対策は様々に講じてきました。コロナ感染が疑われる方はもちろん、手術目的で入院される方全員にPCR検査を行っています。その際は日時を指定して、検査室までの動線も制限、検体を扱う看護師を限定するなど、徹底しました。
医師をはじめ、看護師、コメディカルスタッフ、事務員まで全員が感染防止へ高い意識を持ち、総務課が主体となって感染対策会議を毎週開催。どのような対策を追加すべきかなど自分たちで考えて実施してきたので、緊張感が緩むということはありませんでした。このため、患者さんにも安心して入院・通院していただけましたし、従業員も感染防止を心掛けながら、それぞれの業務に集中できるという環境を生むことに繋がりました。
コロナ禍が収まったわけではありませんが、おかげさまで、当院では前立腺がんのロボット手術を筆頭に、前年並みの手術件数を残すことができました。また、新しい手術室や、柏駅前の分院も順調に稼働しています。これも患者さんのご協力と従業員の努力があったからと考えます。これからも、患者さんが安心してご利用いただけるように万全を期していきたいと思います。
医療法人社団 太公会
我孫子東邦病院
〒270-1166 千葉県我孫子市我孫子1851-1
TEL.04-7182-8166
https://www.abikotoho.org/
医療法人社団 太公会
我孫子東邦クリニック
〒277-0005 千葉県柏市柏1-1-11
ファミリかしわ3階
TEL.04-7157-0333
https://www.abikotoho-beauty.com/