国立がん研究センター東病院

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国立がん研究センター東病院ゲノム医療のトップランナーとして
世界最高レベルのがん医療を提供

国立がん研究センター東病院は、多様ながん治療において最先端の検査・治療を実践。「NEXT医療機器開発センター」では、新発想の手術“介助”支援ロボットを開発中。最先端のがん治療とその開発のトップを走っている。

大津 敦

院長
大津 敦

おおつ・あつし/1983年、東北大学医学部卒業。86年国立がんセンター入職後、92年東病院開院時からのメンバー。2012年 早期・探索臨床研究センター長等を経て16年より現職。

採血で、最適ながん治療薬が分かる時代が目前に

 1992年の開設以来、「世界最高のがん医療の提供」と「世界レベルの新しいがん医療の創出」をミッションとする同院。外科領域では、患者負担の少ない腹腔鏡・胸腔鏡手術に病院開設時から注力し、現在は2台の「ダビンチ」によるロボット支援手術を含め、日本でも有数の低侵襲手術件数を誇る。放射線領域では、日本初の陽子線治療設備や強度変調放射線治療(IMRT)など、高精度の放射線治療体制を有し、21年度には医学物理士のレジデント制度を開始させる。
2019年に保険適用となった、がんのゲノム診断についても、同院では6年前より実施している。さらに、血液だけで遺伝子を調べ、患者ごとに最適な薬物療法を選択できる「リキッドバイオプシー」という診断法の実用化に向けた研究で成果を出している。この方法には、採血という患者に負担の少ない方法でできること、また、複数回行うことも可能だというメリットがある。今年、同院の研究成果が世界のトップ科学誌に掲載され、大津敦院長は「これにより、採血だけで最適な治療薬にたどり着ける時代に大きく近づいたといえます」と胸を張る。
 産学連携による医療機器開発では、AIによる手術支援システムナビゲーションの開発が進行中。それらのAI技術は、22年に病院敷地内に開業する宿泊施設でも活用されるという。「この施設が完成すれば遠方や海外からの患者さんにも、宿泊しながら先進的な医療を受けていただけます」
 また、20年7月には山形県の鶴岡市立荘内病院と医療連携協定を締結。同院内に、患者が東病院の専門医と直接相談できるセカンドオピニオン外来を開設しており、遠隔での医療連携モデルとして期待される。同年10月には、「オンラインがん相談」を開始。患者は来院することなく専門医の意見を聞くことができるため、ぜひ活用してほしい。

データで見る東病院


緩和ケア

松本 禎久

松本 禎久 緩和医療科長

 緩和医療科外来(週5日)と支持療法チーム、緩和ケア病棟(急性期型)の3つの緩和ケアサービスで、常勤医4名と多職種が協働。治療状況に関わらず、つらい症状など様々な困りごとに対応することにより、患者と家族のQOL向上を支援。欧州臨床腫瘍学会より、日本で初めてがん治療と緩和ケアが統合された施設として認定されている。「地域の医療機関や在宅医とも連携して切れ目ないサポートを提供しています」

レディースセンター

秋元 哲夫

秋元 哲夫 センター長

 同センターでは仕事や子育て、治療後の妊娠希望など、女性がん患者の隠れたニーズに対応。担当医と連携のうえ「女性看護外来」で面談を行い、専門職による支援につなぐ。「生殖外来も含めた妊よう性への対応、遺伝カウンセリング、AYA世代など若年女性がん患者のサポート、脱毛など外見変化に伴う支援、リンパ浮腫を含むリハビリの必要性の評価・対応などに相談段階から関わるのが特徴です」

サポーティブケアセンター(相談支援センター)

後藤 功一 センター長

多職種の専門スタッフが連携

多職種の専門スタッフが連携

 同院では、社会的・精神的問題や看護・薬剤について、各専門スタッフから構成された同センターが初診時から切れ目なく患者を支える。その内容は医療連携、相談支援、がんに関する情報提供など多岐にわたる。「入院準備外来では、入院手続き時に看護師の面談も受けて頂き、内服薬や栄養指導、リハビリの手配なども一気に行い、入院前から患者を支援しています」

食道がん

頸部・腹部も含めた難症例に幅広く対応


藤田 武郎

藤田 武郎 食道外科長

 食道がんの手術では所属リンパ節が存在する頸部・腹部も標準的には治療対象となり、長時間を要するのが特徴です。そのため高齢者は手術自体が困難な場合がありますが、当院では患者負担の少ない胸腔鏡下術を全国に先駆けて開始し、現在は腹腔鏡・胸腔鏡下手術を標準的に実施しています。また近年保険適用となり、より高精細な手術が可能なロボット支援手術も積極的に行っています。
 肺気腫などの持病が高度な患者さんには、頸部と腹部からのアプローチで肺への負担が軽い縦隔鏡手術も実施しています。また、声を失う可能性もある頸部食道がん手術も数多く手がけ、できるだけ声を残せるよう「機能温存」に注力しています。また様々な専門職からなる「多職種医療チーム(ESST)」で、当院で食道がんの手術を受ける患者さんの手術前準備から社会復帰までの支援を行っています。

ロボット手術でさらなる低侵襲化を実現

ロボット手術でさらなる低侵襲化を実現

肺がん

遺伝子解析による、個別化治療の確立に注力


後藤 功一

後藤 功一 呼吸器内科長

 肺がんの治療では、近年がんの原因となる様々な遺伝子が見つかり、それに対応する分子標的薬が目覚しく発達しています。特に進行がんに対して、従来の化学療法は効果が限定的でしたが、それらに比べて遺伝子変化に基づいた分子標的治療では、高い治療効果が期待されます。
 当院は、日本中の肺がん患者さんへ最新のがん遺伝子検査を無償で提供するプロジェクトである「LC-SCRUMAsia(エルシー・スクラム・アジア)」の中心施設として、遺伝子解析の結果に基づいた個別化医療を実践しながら、日常診療を行っています。遺伝子変化に基づいて、将来の治療薬の候補となる未承認薬の治験への登録も推進しています。また、最新の気管支鏡のテクニックを用いて、できるだけ多くの組織を取り、遺伝子解析に提供し、最適な治療につなげるよう努めています。

LC-SCRUM-Asia
 http://www.scrum-japan.ncc.go.jp/lc_scrum/

最新の気管支鏡検査で、良質な検体を採取

最新の気管支鏡検査で、良質な検体を採取

乳がん

患者に寄り添い、その人らしい治療を支援


大西 達也

大西 達也 乳腺外科長

 当院の乳がん治療は、乳腺外科、腫瘍内科、放射線治療科が各専門性を発揮し、診断〜初期治療〜術後経過観察~再発治療を分担かつ連携して行われます。他のがんと比べて患者さんの年齢層が若いこともあり、仕事や子育て、親の介護などの生活背景にも配慮し、その人らしさをふまえて治療を選択、実施することを重視。看護師やソーシャルワーカー、薬剤師、生殖医療の専門家などの多職種で、ひと手間かけるサポートを心がけています。
 術式については病巣の広がりのほか患者さんの希望も尊重して決めていますが、どのような術式を選択されても整容性に優れた手術を心がけています。また、最近保険適用になった、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)診療はこれまで以上に患者さんとの意思共有が重要であり、豊富な知識と経験を兼ね備えたスタッフがサポートいたします。

安全かつ整容性を重視した外科治療を提供

安全かつ整容性を重視した外科治療を提供

婦人科がん

進行卵巣がんの難手術も、他科連携で多数実践


田部 宏

田部 宏 婦人科長

 婦人科がんでは、早期子宮体がんに対するロボット支援手術を開始するなど、低侵襲手術に注力する一方で、一般には手術困難な広範囲に転移がある進行卵巣がんに対しても、積極的に手術を行っています。腸に浸潤がある場合は大腸外科と連携して腸管部分切除を、肝臓や脾臓に転移がある場合は肝胆膵外科と連携して病巣切除を実施。上腹部の腹膜に転移がある場合には全壁側腹膜切除術という先進的な手術も行っています。このような難症例では通常、化学療法で一時的に症状を抑えますが、多くの方が再発するため、当院では手術でしっかりと病巣を取りきることで、少しでも予後の改善につながるよう努めています。
 卵巣がんは、がんの中でも検診では見つけられず、お腹の張りなどの症状で婦人科を受診し診断されることが多いもの。腹部違和感等があれば、早めの受診をお勧めしています。

不安に寄り添い最も適した治療法を提案

不安に寄り添い最も適した治療法を提案

前立腺がん

ロボット支援手術で、根治性とQOLを追求


増田 均

増田 均 泌尿器・後腹膜腫瘍科長

 国内で施行される前立腺がん手術は年間約2万件で、その7割強がロボット支援手術です。その中で、年100例以上の実績がある医療機関であれば、安定した技術とチームとしてのノウハウを蓄積しているといえます。当科では、2020年度は約200例を施行しており、腎がんや膀胱がんも含めると、ロボット支援手術は年間約250例で国内トップクラスの実績です。
 また根治性ばかりでなく、ロボット手術に特有な合併症である尿失禁治療に対して、重症例(1~2%)に対する人工尿道括約筋埋込術や、軽症例に対する陰茎圧迫器具などQOL向上に向けた取り組みも広く行っています。当院では手術、薬剤、放射線を組み合わせた集学的治療で、患者さん一人一人に応じた最適な治療を提案します。さらに臨床研究として、自家脂肪組織による再生医療を検討していますのでぜひご期待ください。

ロボット手術件数は国内トップクラス

ロボット手術件数は国内トップクラス

HOSPITAL DATA

国立がん研究センター東病院

国立がん研究センター東病院
〒277-8577 千葉県柏市柏の葉6-5-1
TEL.04-7133-1111(代)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/


診療科目/頭頸部外科、頭頸部内科、形成外科、乳腺外科、腫瘍内科、呼吸器外科、呼吸器内科、食道外科、胃外科、大腸外科、消化管内科、消化管内視鏡科、肝胆膵外科、肝胆膵内科、泌尿器・後腹膜腫瘍科、婦人科、骨軟部腫瘍・リハビリテーション科、血液腫瘍科、小児腫瘍科、総合内科、歯科、麻酔科(山本弘之)、集中治療科、緩和医療科、精神腫瘍科、放射線診断科、放射線治療科、病理・臨床検査科、先端医療科、脳神経外科、皮膚科、眼科