「健康なので行く必要がない」「自分の症状は重大な病気でないと思った」──。このような理由で婦人科を受診しない女性が多くいるとされています※1。我慢してやり過ごしがちな生理による心身の不調。しかし適切に対応できれば、仕事のパフォーマンス向上や、将来的な婦人科疾患のリスク軽減などにつながります。さらに活躍できる環境が整うことは、企業や社会のサステナビリティの観点からも重要です。働く女性4人が、生理に関する素朴な疑問や率直な思いを産婦人科医の平井光三先生と語り合いました。
接客中は自由にトイレに行けないのがつらいです。立ち仕事なので、腰痛も結構こたえるんですよね。温めて痛みを和らげながら、何とかしのいでいるような状況です。
通勤の電車内でおなかの痛みに耐えられず、途中下車して遅刻したことがあります。我慢できない時だけ鎮痛剤をのむようにしています。
大変な思いをされていますね。実は女性の約9割が生理痛を経験しているというデータ※2があります。大多数が経験するから当たり前と思いがちですが、生活に支障が出るような症状は月経困難症※3と診断され、病気が原因の可能性もあります。月経困難症を持つ人は2.6倍も子宮内膜症※4になりやすいという報告※5もあるんですよ。生理の回数が多いほど発症リスクは高まるとされます。現代の女性は少子化などを背景に生理の回数が昔より増えて体の負担になっていますから、症状は放置せず、一度診察を受けていただきたいですね。
どんな治療が待っているかと思うと、怖さが先に立って敬遠してしまいます。
婦人科では、まず問診がありますが、診療時間は限られるので聞きたいことを準備していくとよいですよ。必要があれば、内診による超音波(エコー)検査やおりもの検査、がん検診などを行います。生理痛に対する治療法はいろいろあります。鎮痛剤は一般的ですが、持続的な症状緩和には、卵胞・黄体ホルモン配合剤(低用量ピル)、黄体ホルモン製剤、子宮内黄体ホルモン放出システムなどがあります。排卵や子宮内膜が厚くなるのを抑え、生理に関する様々な症状を改善してくれます。むくみなどには漢方薬や利尿剤、精神的症状には抗不安薬が処方されることも。いずれの治療法も副作用が出る場合がありますので、 婦人科医と相談しながら決めていただければと思います。
低用量ピルなどで治療することに興味がありますが、リスクがないのか不安です。
薬で体のコンディションを整えることはむしろ良いことなのです。生理がないと体に老廃物がたまると考える方もいるそうですが、低用量ピルには生理の回数を減らすものもあり、体の負担軽減や子宮内膜症などの病気の予防につながります。服用開始初期は、頭痛や吐き気などがある方もいますが、治療を続けているうちに落ち着くことが多いので、3か月ほど試したうえで、その後の服用を判断していただいています。
薬で体のコンディションを整えるのは自然の摂理に反することかと思っていましたが、ちゃんと知って考えが改まりました。痛みだけでなく精神的な症状も抑えられるなら、今よりもずっと穏やかに過ごせ、制限なく様々なことに挑戦できそうです。
生理中の一週間は重要な予定を入れないように調整してきましたが、治療することで自由に仕事ができ、周囲に気をつかわせることもなくなると思うと、気持ちよく生活できそうですね。
男性に生理はありません。生理による不調は日常生活や仕事に影響をもたらしてしまうため、この女性だけの負担をいかに和らげられるかを、常に考えて治療に取り組んでいます。SNSなどに様々な情報が氾濫していますが、ぜひ婦人科医に相談いただき、最良の対応法を見つけてください。また、女性が生理の悩みを我慢せず自身の健康に目を向けていくには、パートナーや家族、職場の理解がもっと進むこと、支援の広がりが欠かせません。今日の座談会の内容が多くの人に届き、社会の理解が進むとうれしいですね。
今回の座談会は読売新聞大阪本社が企画し、趣旨に賛同したバイエル薬品株式会社の協賛を得て実施しました。
バイエルは160年の歴史を持ち、ヘルスケアと農業関連の領域を中核事業とするライフサイエンス企業です。「Health for all, Hunger for none (すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」をミッションとして掲げ、世界83か国において製品とサービスを提供し、健康と食糧という人々の最も基本的なニーズにイノベーションで応えています。また、SDGs達成に向けたサステナビリティへの取り組みや、職場や社会におけるDE&I(多様性、公平性、包括性)推進にも積極的に取り組んでいます。
今回の座談会テーマである女性のヘルスケアを含め、病気の予防や早期発見の啓発、ソリューションの提案、健康教育の支援などを通じて、人々の健康に貢献します。